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9月4日 木曜日
第26話 不足はない
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「──つまり、例年通りの合唱祭を今から実施するのはやっぱり無理で、だったら今年独自の合唱祭をやっちゃえばいいじゃん!……ってこと?」
塚本くんから大まかな事情を聴いた私は、驚くやら呆れるやらで思わず額を押さえた。なんということ。いったい何がどう転べば、あの場でそんな結論が出るというのだろう。
「まあ、概ねそういう感じです」
塚本くんが律儀に答えてくれたところに、新垣くんがやってきた。
「口で言う分には簡単だけど、実際はそう単純じゃないよ。あちこちから許可だの承認だのを得ないといけないし、何より、参考にできるような前例がない」
新垣くんはそう言って眉間にしわを寄せる。たしかに、実質的には一から新しく行事を作ろうとするのと変わらないのだから、彼がそう言うのも無理はないかもしれない。
が、そこにまた別の声が割り込んできた。
「──いや、問題はない」
桐山会長だった。相変わらず隙のない表情を浮かべて腕を組んでいる。
「執行部が全面協力するんだ。不足などあるわけがないだろう」
「……」
恐ろしいくらいの自信に思わず閉口してしまった。
いや、それよりもなぜ桐山会長がここにいるのか──説明を求めるように塚本くんを見る。
「今年の合唱祭は、生徒会執行部と合唱祭実行委員会の共同主催ってことにするらしいです」
塚本くんが囁く。本当に、あの後いったい何がどうなってこうなったのだろう。
「全面協力って……桐山会長の、ではなく執行部のってことで大丈夫なの?」
若干の不安を覚えながらも尋ねると、桐山会長は鷹揚にうなずいた。
「副会長の二人にも話は通してあるし、学校側との話し合いだって──あ」
桐山会長は言いかけた途中でスマホを確認する。何だろう、と思っていると、彼はどこか不敵な笑みを浮かべた。
「理事会がこちらについているも同然なんだ。ついでに言うと、僕と新垣くんに加えて中村くんまでいる。不可能なんてないよ」
塚本くんから大まかな事情を聴いた私は、驚くやら呆れるやらで思わず額を押さえた。なんということ。いったい何がどう転べば、あの場でそんな結論が出るというのだろう。
「まあ、概ねそういう感じです」
塚本くんが律儀に答えてくれたところに、新垣くんがやってきた。
「口で言う分には簡単だけど、実際はそう単純じゃないよ。あちこちから許可だの承認だのを得ないといけないし、何より、参考にできるような前例がない」
新垣くんはそう言って眉間にしわを寄せる。たしかに、実質的には一から新しく行事を作ろうとするのと変わらないのだから、彼がそう言うのも無理はないかもしれない。
が、そこにまた別の声が割り込んできた。
「──いや、問題はない」
桐山会長だった。相変わらず隙のない表情を浮かべて腕を組んでいる。
「執行部が全面協力するんだ。不足などあるわけがないだろう」
「……」
恐ろしいくらいの自信に思わず閉口してしまった。
いや、それよりもなぜ桐山会長がここにいるのか──説明を求めるように塚本くんを見る。
「今年の合唱祭は、生徒会執行部と合唱祭実行委員会の共同主催ってことにするらしいです」
塚本くんが囁く。本当に、あの後いったい何がどうなってこうなったのだろう。
「全面協力って……桐山会長の、ではなく執行部のってことで大丈夫なの?」
若干の不安を覚えながらも尋ねると、桐山会長は鷹揚にうなずいた。
「副会長の二人にも話は通してあるし、学校側との話し合いだって──あ」
桐山会長は言いかけた途中でスマホを確認する。何だろう、と思っていると、彼はどこか不敵な笑みを浮かべた。
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