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③ 行き詰まり
しおりを挟むそんなわけで戻ってきた一行は、ばあちゃんからも話を聞こうと 彼女のの部屋を訪れた。
そこで 部屋をぐるりと見渡し、トウイが声を上げた。
「あれ? あんまり…散らかってないね?
もう、片づけ 終わったの?」
その言葉をうけて、一同 辺りを見渡す。
そうなのだ。
一瞬で メチャクチャと表現できる居間に対し、
この部屋はきれいすぎる。
タンスから 引っ張り出されてるものは、ばあちゃんの着物や帯などの和装品や 押入れの布団類だけで
隣りにあるクローゼットには、一切 手をつけた形跡はみられなかった。
何気に 目を向けると、ばあちゃんは、首をブンブンと 横に振っていた
「不思議じゃのぅー
魔女は、どうせ この部屋には置いていないだろうと 考えたのだろうか?…
どうやら この部屋は、ざっとしか見ていかなかったようじゃ」
少ない顎ひげをジョリジョリといわせながら、玄白は黙り込む。
その時
「ばあちゃんは、石の在処、わかるの?」 期待するように 瞳を輝かせて杉田が、身を乗り出す。
「悪いが…一切、覚えとらん!」
悪いと言っときながら、微塵も罪悪感を感じていない口調である。
「正直言って あの時は、
突然 じいさんが倒れて、それどころじゃなかった」
「想像してみんしゃい!
だっだ広い海の上で、突然 一人ぼっちにされたんじゃぞ!
救急車を呼びたくても 呼べん(ない)。
頼れる人も 誰もおらん(居ない)。
それどころか、自分でさえ 無事に戻れるかわからない。
そんな状況だぞ…
怖くて、怖くて………心細くて…
立っているのが やっと じゃった」
「初めて漁についてきたこと 後悔したわい」
大したことない と言うように、
ばあちゃんは、カラリと笑って締めくくったが、
その場に居た一同は、息を飲み 絶句した。
特に、【ばあさん至上主義】らしい玄白は
「う,梅さん…に。そんな思いさせてしまったとは…」
際限なく 己を責めたてそうな勢い。
「ゴメン。…イヤ、申し訳ない!」
畳に頭がめりこみそうなくらいに 額を床に押しつけている。
「やだなぁじいさん。顔を 上げてくださいな」
「クスッ…
もう、済んだことですよ」
困ったように顔をしかめ ばあちゃんは、床についた玄白の手を 優しく取り上げた。
「うめさん…」 クシャクシャに 顔を歪めた玄白が体を起こす。
「あら、あら…」 おだやかに微笑みながら そのグチャグチャな顔を サラッと袂でぬぐい
「しっかりしてくださいな、玄白さん!」
耳元でコソッとささやいた。
途端、玄白は、面白いぐらいに復活する。
++++++++++
復活した玄白の先導で、
ことの発端を振り返ってみるが、結果は、かんばしくなかった。
二人とも 目の前で起こる奇想天外な出来事に
ただ ただ翻弄されているだけで、手一杯。
ペンダントの存在自体、記憶にない そうだ。
幸運?なことに、船は処分してしまったが…
道具一式は、このばあちゃんの部屋に 運んであるという。
しかも その時のまま、一切 手を触れてない そうだ。
満場一致で それを一番に見てみようということになり。
みんなで、それが保管してあるという クローゼットを捜索したところ
実にアッサリと…ペンダントを見つけ出してしまった。
バッ!
と それを掴み飛び出そうとした上杉を、杉田が止めた。
「ドコ、行くの? 」
おだやかに問いかけているが、その腕は 逃がさないと言うように ガッツリと 上杉の手首をつかんでいた。
「所有者のじいちゃんに 無断で持ち出そうとしたことは 悪いと認めるけど、
コッチだって 人命がかかってるんだよ!」
「コレを魔女の家に持っていけば
あかねは、解放してもらえるかもしれないだろ‼」
そんな 必死な形相の上杉を制したのは、玄白だった。
ユルユルと 静かに首を横に振り。
「ソレで オマエさんの妹が 無事に戻ってくるなら、
ワシもそうしておる」
顎先でペンダントを示しながら、静かに語った。
「じゃが、残念なことに
現在、魔女は 行方不明なのじゃ」
「警察が魔女の家を 捜査したところ、
手足を縛られ 無惨な姿になった動物たち 多数と
何の液体かわからない瓶詰め数十本を押収したそうだが、
魔女の姿は、ドコにも無かったそうじゃ」
それを聞いた上杉は
「そんな……」 ヘナヘナと その場に座り込み 動かなくなってしまった。
それを眺めていた玄白が ゆっくりと切りだした。
「どうかのぅ…もう夜も遅い。
これはワシの提案なんじゃが、
今夜はこのままウチに泊まり、
明日の朝、改めて考えてみるというのはどうじゃろう?」
「ちょうど 動けん者もおるようじゃし…
今日は、色々ありすぎて、皆の頭の中もバタバタじゃろう。
この辺りで 一旦 休ませてやるのも良いと思うのじゃ」
「意外と リフレッシュしたら、良い案が浮かぶ かもしれんぞー」
「どうじゃろう?」
言い出した玄白の好意に甘え、その晩は 一同 泊まることにした。
といっても、玄白と謙信は 元々この家の者であるので、上杉リクと我々二人の計3名だけだが。
家に連絡を入れたことで 少し落ち着きを取り戻したのか?
「すまなかった…」 上杉がみんなに 頭を下げた。
「大丈夫」だの 「気にするな」だの 思い思いの言葉が飛び交う。
そんな中 そそくさと 切り出したのは杉田だった。
「どう? あかねちゃん、見つかった?」
ブンブンと、力なく 首を横に振る上杉。
「おふくろは 相変わらず布団から起き上がれないみたいだし、
兄貴の方は酒を飲むのは 止めたみたいだけど、
今度は、ただの置物みたいになってるらしい。
口も効かない。
起きてるのか、寝てるのかも、わからない状態だってさ」
「家族の安否がわからない状況だから 仕方ない気もするけど
ずいぶんと 大げさに感じるのは、ボクだけかな?」
誰に問うわけでもなく 投げ出された杉田の呟きは
「あかねは ウチのアイドルなんだ」
上杉の一言で 打ち落とされた。
「どういうこと?」 瞳を またたかせ 疑問を口にした杉田。
それに答えるように ポツリポツリ…上杉が語りだした。
「ウチは元々 男ばっかりの3人兄弟だった。
空、海,陸 の3兄弟。自衛隊の親父が付けた名前だ。
ちなみにそん時 この地方に越してきた。
それから数年して 親父が再婚した。
この時現れたのが あかねだ。
当時2歳だったあかねは、めちゃ可愛くてさ。
母さんが出来たことよりも、あかねをウチに招き入れられたことを みんなで喜んだ」
「今回あかねが 攫われたことで、その存在の大きさを
改めて認識させられた。
そんなこと出来るはずないのに 空の兄貴は
『なぜ仕事をしていた?』
『なぜ、いつもあかねに貼り付いていなかったんだ』 と、自分を責めてるし、
海の兄貴は あかねを探しに出たっきり帰ってこない。
気丈にしてるのは,親父だけさ」
上杉の話を聞き終わり、みんなは 黙るしかなかった。。
シーンと 重苦しい空気の中
だれかが呟いた 「もう寝るか」 の一言に、みんなすがりついた。
++++++++++
翌朝 目を覚ますと、そこにバロンがいた。
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