討って出る! -3−

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⑥ 話合い–トウイside–

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そのまま 待たされること数分。
 
許可がおりたことを ボクたちに知らせると
キョロキョロと首をめぐらせ、辺りを見渡す。
「場所 変えるか」 ボクに尋ねた。というより ただ呟いた?感じで吐かれた台詞セリフに。
「でも,どこ行くの?………
人 居ない所の方が…良いんだよね」 たずね返すと、
「なら、ウチの2階はどうだ?
母さんには 2階に来ないでくれって言っておけばいい」
と提案された。しかも、続けざまに
「それに ジュース飲みながら,話 できるぞ!」 ウインクしてくる。
いつもと同じ雰囲気で 気楽に話しかけてくれる父さんに心の中で感謝しながら 
コクン ボクは 首を縦に振った。

++++++++++
パトカーに乗せられて、あっという間に家に到着した。
うながされて、車から降りたつと
「トウイ‼」
顔を 青くした母さんが すがりついてくる。
申し訳なさと 困惑が 入り混じり、うまく反応できない。 
そのまま うつむいて立ち尽くしていると
「大丈夫…トウイは無事だ」 
状況を察したらしい父さんが、素早く動 いて
母さんの肩を抱きながら、駐在所の方にみちびく。
去り際に ボクに 「2階に行ってなさい」 と言い残して。

++++++++++

そして今、目の前に 父さんが座っていた。

数分前、母さんを落ち着かせ、2階に上がってきた父さんは、
ボクに ジュースを注いで テーブルに置いてくれた。
そしていつもと変わらぬ声色で
 「飲みながら…話そう」 と誘ってきた。
ところが、一向に座ろうとしないのである。
立ったまま ジーッと見つめられる。
やがて ぐるりとテーブルを回り込み 隣りまで来ると
そのまま ギュっと ボクを抱きしめた。
「上杉くんには悪いけど、
オマエまで 巻き込まれなくて良かった…」 しみじみ呟き
「よくがんばったな」 頭に顔をうずめたまま ささやく。
ボクは、回されたその腕が、かすかに ふるえていることに気づき 『ごめんなさい』 心で謝った
でも実際には、照れくさくて そんなこと出来るはずなく
ボクの中に 天邪鬼アマノジャク降臨コウリン
「話…始めなくていいの?」 突き放すように言ってしまっていた。
「そうだな」 と同意して、父さんの温もりが 離れてゆく。
未練がましく 目で追いそうになる自分に苦笑いしながら
「驚かないでね!」 声を張り上げた。
「プックク…
そんなに大声出したら、母さんに聞こえちゃうぞ!」
とたん、父さんに吹き出され、
自分が意外と大きい声を出していたことに気づき
ハッと 顔に熱が集まる。 
「ほら、初めてるよ!」
そんなボクを、生温かい目で見つめたまま、
父さんはボクの対面の椅子に 腰を下ろした。

それを見届け、ボクは勢いよく 秘密をぶちまける。
まず、ボクとレオは 意思の疎通ソツウができることに始まり、
レオをかえせば、バロンとも会話できること。
そして、最大のネックである 玄白のこと。
今は猫の姿だが、元は人間なので 
人と同じ言語が話せること と ペンダントとの因縁インネン
そして、そのペンダントを狙い、
魔女が この誘拐事件を起こしたこと。

一気に話し終え、ボクはスッキリしたが
対照的に父さんは、顔に困惑を貼りつけたまま 渋い顔をさらしていた。

途中 可哀想な子を見る目で、ボクを見ていたが…
己の事情をうちあけられたとたん、
それを証明するように ネコじいちゃんが動き出して、
父さんは、頭を抱えた。

そして今ーーー
「父上殿。ワシも 喉が渇いたのじゃ。
すまんが お茶をもらえるかのぅ」
ネコじいちゃんにリクエストされ、冷蔵庫と対面している。

「で…これからどうすればいいのかな⁉」
リクエストの緑茶を トン!と テーブルに置きながら
半ば 投げやり(?)気味に言った。
その物言いに 一瞬 顔をしかめたネコじいちゃんだったが、
そのまま そのことには触れず、しずかに話し始めた。
「バロンの話じゃと
ペンダントが手に入ったら連絡するように言われておるらしいのじゃ。
じゃから、ペンダントが手に入ったことにして 
自分が魔女をおびき出す。
この時に くれぐれも 間
違えて自分を射殺しないで欲しいと申しておる」
「ちょっと疑問なんだけど…
バロン君って、魔女の仲間じゃなかった?」
父さんが、もっともな疑問を口にする。
「ボクたちも 途中まで そう思ってたんだけど…
よくよく聞いてみると ちょっと違うみたいなんだよね。
ややこしいっていうか…
複雑すぎて、ちょっと 一口じゃ言い表せない感じ?かな」
「魔女の方は、バロンのことを気にいってて、仲間みたいに思ってるみたいなんだけど…
バロンの方からしたら、
最初の出会いは、動物実験で誘拐されて…みたいだし、
その後も 食事を抜かれるのは日常茶飯事。
その上、奇妙な液体を 無理やり飲まされたり、
支持通りに動かないと 暴力受けたり…と散々なんだよね」
「あっ、そうだ! 父さん覚えてる?
一月か二月ぐらい…ともかく寒い時期に犬がいなくなったって交番に駆け込んできた人いたでしょ。
あの時の女の人が魔女で、逃げ出した犬がバロン。
当時、やっと逃げたのに…すぐに捕まっちゃったって バロン 悔しがってた」
「あっ、あれ…父さん 覚えてない⁉
バロン探してたら 誰かから攻撃されて、
ボクをかばったレオが、動かなくなちゃったことあったでしょ。あの事件」
「でも、皮肉なことに ボクたちが話せるようになったのも あの時なんだよね!」
ボクは顔を しかめた。

「うーん…民間人をオトリに使うのは、ちょっとダメというか…」 困ったように 眉を寄せる 父さん。
「でも…バロン、犬だよ」 ボクのツッコミに
「だからもある。
もし、彼が何か言ってたとしても、我々にはわからない…」
いまいち 歯切れの悪い 父さん。
そんな時ーーー
「一つ提案なんじゃが…」 
おずおずと ネコじいちゃんが、口を開いた。
「元々 【バロンを潜入させておった】 というのはどうじゃ⁉
バロンは、人でなく犬だし、
都合の良いことに、皆とは 会話できない。
保険として、レオを連れたトウイ君に 同行してもらうことになっては しまうが…」
ネコじいちゃんの提案に さらに 父さんの眉間のシワが深くなってゆく。
「キミ じゃダメなのかな?」
ネコじいちゃんがを指差し、疑問をぶつける父さんに
「いいや、やっぱり。
ワシより トウイ君の方が、適任じゃと思う」 
少し思案し、ネコじいちゃんは 言い切った。
「もしワシが、その場に行くことになったら と仮定する。
この時、ワシは ぬいぐるみのフリをしなければならん。その上、便宜上 さまざまな事情を知ってる父上に預けられると思う。
ところが、父上は地元民じゃから、
最前線ではなく、細々とした雑事におわれることになるじゃろう。
結果的に バロンが何か発したとしても 
ダレも その言葉を理解できない という状況に おおちいってしまう。
その点、トウイ君なら、本当の飼い主ということにしておけば その懸念ケネンは無くなる」
「【飼い主の指示に シタガう】ということにしておけば、
もし、彼と 何か言葉を交わしていたとしても 怪まれることは無い。
おそらく 皆、【ただ支持しているだけでだろう】 って見逃してくれるじゃろう」

それから しばらく、4人で 頭を悩ませていたが…
それ以上 良い案は思い浮かばず。
結局、その案を 採用することになった。



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