討って出る! -2-

hanahui2021.6.1

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② 出発 −トウイside−

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朝…元気に家を出る。

ウキウキ…ワクワク…楽しみで しかたがない。

正直いうと、昨夜 気分が高揚コウヨウしすぎて あまり良く眠れていなかった。

そんなボクの心情を 代弁するように、

空まで青く キレイに すみ渡っていた。

学校に到着すると、すでに2台のバスが 停車していた。

目を こらすと、もう何人か バスに乗り込んでいるようだった

それに続こうと、足を必死に動かし ボクも校内へと急いだ。



++++++++++



無事にバスに乗り込み、座席を探す。

すると、後ろのほう…中央より2.3列後ろぐらいの所に 席はあった。

『ラッキーな場所だ』 と思った。

前で言ってることは 聞こえるし、かといって 気安く先生が訪れる場所でもない。

早速 席に座ろうとして、すでに同じ班の人が来ていることに 気がついた。

今回の林間学校は、学校の方針とかで 他のクラスとも合同で班分けされていた。
【様々な人たちと交流をもとう】 というコンセプトらしい。

「おはよう。ボクは 柏葉柊生カシワバトウイっていうんだ。

よろしくね!」 顔をそちらに向けながら、その人物に声をかける。

顔は、数ど 見かけたことがあるけど、言葉を交わしたことは まだ無かった。

2人そろって、こちらに振り返り、それぞれに 【杉田謙信】 【上杉リク】 とにこやかに 名乗った。 
まず、上杉リクという方に 自然と目が吸いよせられる。だってこの人は、縦にも横にも 大きい。 
たぶん? 教師陣よりも大きいのではないだろうか。

一方、杉田謙信という人は、見た目は普通の小学生だった。しかし こちらは、それを 軽く圧倒してしまうほどに 名前がすごい!
二人合わせたら…【上杉謙信】 最強な武将の出来上がりじゃないか!
なーんて、ソーシャルゲームにハマっているボクは、ひそかに 興奮していた。

その後 時間が過ぎていくたびに、どんどんと 他の生徒たちも 集まりはじめ、ほどなく バスは学校を出発した。


驚いたのは、出発して30分ぐらいした頃のこと。
おやつを食べようと 杉田くんが、持ってきていたリュックサックを開いてみると…

中から勢いよく 猫が飛び出してきた。
その時ちょうど、後ろを向いていたボクは、たまたま その瞬間を目撃してしまった。
アングリと口を開けたまま、3人そろって 固まっていると
「なにをオマエら ホオけておるのじゃ」
その猫は 当前のように、上から目線で話しかけてきた。
『猫が… 猫が…!!!!』
ボクは、驚きのあまり 大きく口を開いたまま、固まっていると。
「バスを降りたら ちゃんと説明するから…
とりあえず 今は、黙っててくれるかな⁉」 
耳元で 杉田くんがささやいた。
コクリ。
ボクは、即座にうなずき、きびすを返して 大人しく前を向き 座り直す。

それを見守り終えた杉田くんは、
「ハァー」 と一度 深く ため息を吐き 
「な.ん.で.い.る.の?」 猫に問いかける。
しかし、わざわざ一音づつ区切られた それが、杉田くんの怒りの度合いを 表しているようだった。
「ワシも体験してみたかったのじゃ。
なんせ、ワシらの時代には、こんな行事 まだ無かったからのぅ」
ところが猫は、それを一切 意に返さず、あっけらかんと 言ってのけた。
「でもなこと わかるよね?もう 子供じゃないんだし…」
杉田くんの怒声を押し殺した 低い声が続く。 
「…だって…おもしろそうだったから、参加してみたくて…」
なおも ゴニョゴニョ…と続く いいわけに
「ハァー」 怒りを含んだ 熱いため息がこぼれ落ち
「コレじゃ、どっちが 子供だか わかりゃしない‼」
突き放した言葉が 投げかけられると
「じゃ、お前は、ここから帰れっと言うのか⁉」悲鳴のような一言。
「オヨヨ…謙信は、冷たいのー 
いったい誰に似たんじゃろ…」 プラス泣き落とし。
『杉田くんも大変だなー』 って 呑気に考えていると
「なぁ、リク!助けておくれ。
お前さんは、謙信みたいに冷たいことは言わんじゃろぅ?」 
顔見知りなのか、今度は 上杉くんに 声をかけている。


その時  『うわっ‼』
ボクは 思わず、仰け反りそうになった。

++++++++

目の前に 先生が立っていた。

『いつから、そこに居たのだろう?』
いいわけになってしまうけど…
後ろにばかり 気を取られていたから、全然 先生の接近に 気づけなかった。
タラリ…  意図せず 背中を 汗がつたい落ちた。

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