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⑥ 遭難
しおりを挟む『ハァー ツカレタ…』
心の奥底から 大きく 息を吐きだす。
『今日は、厄日かもしれん…』
同時に 泣き言が こぼれ落ちた。
過保護気味なのかもしれないが…
無性にトウイのことが 心配で ついて来ることにした。
そこまでは良かったのだが…その方法に無理があった。
というか、完全に忘れていた。
ジブンが、車に弱いことを である。
運転手や教師など 大人の目をかいくぐり、
バスの【荷物置き場】に忍びこんだ までは うまくいった と思う。
ところが、そこからが 予想以上に キビシかった‼
座席と異なり クッションの効いていない荷物置き場 いわゆるトランクは、大きな振り幅で たえ間なく揺さぶられ続け、ジブンは、あっけなく ノックダウンした。
理性では わかっていたのだ。
吐いてしまったら,その後のジブンがつらくなるだけだ!と。
しかし、ガマンできなかったのだ‼
やはり、楽にだったのは 一瞬だけで…その後は、地獄を味わうハメになった。
吐瀉物によって 引き起こされた攻撃は、
ことのほか、精神的にも肉体的にも 有効的だったみたいで。
到着後、扉が開かれたれた時には、一瞬、天国を感じた。
永遠にも思えた苦痛から、やっと 解放され…
ジブンでは いち早くおどりでたつもりでいたが…
実際は ちっとも体が言うことをきいておらず、運転手の手によって ズリズリと引きずり下ろしされた。
その後、トウイに 体の汚れを落としてもらい、テントのそばで 体を休めていたら、
なにやら調理場の方が タバタと騒がしい。
体は まだズシンッと重たかったが、
再度 ひょっこりっと顔を出したトウイに対する気がかりが、ジブンを休ませてはくれなかった。
ゆっくりと体を起こし、調理場へと足を向ける。
そこで目にしたものは…猫とネズミのおいかっけっこ だった。
とりあえず トウイの無事を確認したジブンは、ひとまず 安心すると、そのまま ボーッと2匹を ながめていた。
ネズミと猫の2匹は 数回 調理台の周りを走り回った後、突然、外へと飛び出した。
それを止めようとしたのか? トウイも、猫を追いかけ初める。
一も二もなく、ジブンもそれに続き、同様に森に 足を踏み入れる。。
その時 何気なく 背後を振り返ると、2人の男子が ジブンたちに近づこうと走ってきていた。
++++++++++++++++
というわけで、時は過ぎ去りーーーかんぺきに迷った………
追いかけていたはずのネズミは,気づくと姿を消していて。ただ…アテもなく 森をさまよっていた。
キャンプ場に戻ることも出来ず、足を進めていると、
誰かの別荘なのか? 木立に隠れるようにして 一軒の家が現れた。
「やった!家だぜ、家‼」 弾かれたように それに飛びつく上杉くんと。
「それはダメだよ!」
警察官の息子という 生育環境がそうさせるのか?、
とっさに それを 制止するトウイ。
ところが、無情にも 天候が荒れはじめる。
雨が振り出し、やがて カミナリまで鳴りはじめ…
やむなく その家に避難することになった。
先陣を切り 上杉くんがドアノブに手をかけると
カチャリ…。
すんなり、ドアは開いた。
++++++++
屋敷の中に足を踏み入れると、まず目についたのは 西洋の甲冑姿で立っている銅像だった。
まるで侵入者の良し悪しを 吟味し,制裁を加える騎士のように 手には槍を持っている。
こわごわ、その横を通り過ぎると…広い部屋が現れた。
まず 目についたのは、庭に面した大きな開口。
長方形の大きな部屋。
その長い一片、直接 庭に出られる吐き出しを中心に 左右に作られた2つの出窓。
しかし、そのどちらも しっかりと施錠され、転落防止のためか? 鉄格子まではめられている。
これだけなら まだ 納得のしようもあっただろうが、
吐き出しになっている開口にまで、
同じように 腰あたりまで 鉄格子がはめられているのである。
これには さすがに、首をひねった。
その仕様に 驚いて、みんな そちらに気を取られていたら、
部屋の中に 誰かがいることに気づいた。
「ワンッ (ダレだ)」
危機感を抱き、それに後押しされて とっさに 声をかけてしまった。
それに応じるように、そいつは ゆっくりと近づいてきた。
やがて,シルエットが見えはじめ…
『犬?』 … 見知った顔が現れたが…
『なんで ヤツが、ココに?』ジブンがためらっている間に
「バロン‼」
トウイが、近寄ってしまっていた。
「なんで ここにいるの?」 「今までどこにいたの?」 など…とたんに、トウイの質問ぜめにあい 戸惑っているバロンを哀れに思い、助け船を出すためにトウイに近づく。
「ワン(オイ、他の人たち、みんな固まってるぞ!」
1鳴きして 注意をうながすと
「あっ!ゴメン、ゴメン…」
やっとトウイも気づいたのか 皆に謝る。
「この犬は、バロン。近所に住む犬なんだ。
って言っても、ボクも この間 知り合ったばかりなんだけどね!」
トウイが、みんなに向けて説明をしている その時
「ガッシャーン‼」
大きな音をたてて 部屋の扉が閉まった。
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