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① 変な夢
しおりを挟む気づいたら、スーパーの中だった。
お菓子売り場で、つっ立っていた。
空調の効いた店内は、温度設定が丁度良く 割と心地よいものだったが、耳になだれ込む音楽が にぎやかすぎて、先ほどから 少し ボクをイラだたせていた。
「何にしようかなー」
誰に投げてるわけじゃない定番のフレーズを 口内で繰り返しながら商品の並んだ棚と 睨めっこをしていると、いきなり体を 引っ張られた。
『あっ!あぶなッ‼』
不意打ちの攻撃に 体はバランスをくずし、危うく転びそうになる。
ついでに 先ほどからのイライラも手伝って、すがめた瞳で そちらを睨みつけるが、
あろうことか、幼稚園生ぐらいの小さな女の子が、ボクの洋服(Tシャツ)の裾を つかみあげていた。
瞬時に 怒鳴ろうとしていた気持ちは、なりをひそめる。ボクは 相手の高さに合わせるため、体をががめ
「どうしたの」 問いかけてみる。
すると 女の子は、俯いた姿勢のまま いつまで経っても口を開こうとしない。
「あのねー…
用があるから ボクを呼んだんじゃないの?」
痺れを切らし 再度 声をかけててみる。その声は、苛立ちが再燃し 少しキツメなものだったと思う。
すると彼女は、意を決したように 顔を上げ しっかりとボクを見すえる。
「おはな…オハナを助けて!」 と、言い放つ。
瞳にたくさん 涙をためて、必死な形相で頼み込んでくる。
『な、なに…?』
なにか 得体の知れない恐怖が這い上がってくる。
『これ以上、彼女を刺激してはいけない』
無意識に本能が警笛を鳴らしてくる。
ところが、悲しいかな 彼女の声は小さ過ぎて…もう少し 近づかないと聞き取りづらく…
もっと詳しく 話を聞かなければと、わずかに体を寄せた時だった。
「帰るよ‼」
突如、母親らしき女性が登場し、彼女の手を強く引いて あっという間に 彼女を連れ去ってしまった。
「あっ!ちょっと…」
慌てて声を掛けるが、その行動は意外とすばやく 更に有無を言わせない強引さも兼ね備えており とても抗いきれそうにない。
あきらめモードで そのまま彼女を見送り、
フゥーと一息ついて ボクは 体を伸ばす。
一人になり、あらためて 彼女の言葉を 頭で繰り返す。
しかし…
『駐車場に タンポポでも生えてる のかなー?』 ぐらいしか思いつかない。
あの短いやり取りから想像できたのは、これくらいのものなのだが…
『それにしても、あんなに必死になるほどのことかなー?』 喉の奥に張りついた小骨のように 何かが、頭にこびりついていて 離れてくれない。
『それとも何か、間違っているのかなー?
そんな簡単に思いつくようなことじゃなくて…』
『もっと、こう…』
何かを掴めそうな気はするのだが、いま一歩ぼのところで辿りつけない。つくづく 残念な脳である。
あーでもない、こーでもない 長ながと 彼女の一言にこだわっていると
「謙信、おきろー! け・ん・し・ん‼」
階下から、怒鳴る母親の声で 夢の世界から引きずり出された。
++++++++++
『それにしても変な夢だったなー』
ボクは、父親の運転する車の後部座席で ゆられながら、さっきの夢を思い返していた。
結局、何のことか判明しないまま、怒号と共に 2階に上がって来た母親にせかされ、車に飛び乗った。
『まあ、起きられなかったのは 悪いと思うけどさー。
別に ボクは、一緒に行かなくても良いと思うんだよね』
そんなボクの愚痴を乗せたまま、車は高速道路へと 進路を変更した。
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