single tear drop

彩矢

文字の大きさ
915 / 931
一太の夢は

一太の夢は

しおりを挟む
「いいかお前ら、こっちがウー先生で、そっちにいるのがフー先生だ。時間が来るまで遊んでもらえ」
始めこそ怖がって近付こうともしなかった子どもたち。でも、1人また1人と……
怖いもの知らずの男の子たちが集まってきた。
「ねぇ遥琉さん、そんな時間ないよ」
「分かってるよ。びびりまくって、ギャン泣きされるよりはましだろう?」
「それはそうだけど………」
「二人とも顔に似合わず子どもが好きだから、まぁ大丈夫だろう」
彼の言う通り、さっきまで無表情だった二人は、自然な笑顔で子どもたちに接していた。
言葉が通じなくても、笑顔は万国共通。
一太も二人に交互に高い高いをしてもらい歓声をあげていた。
厳粛な雰囲気の中、卒園式は式次第にそって粛々と執り行われた。
緊張しながらも無駄話を一切せず、まっすぐに前を見据える一太。
その凛々しい横顔は彼にそっくりで。
立派に成長した息子の晴れ姿に感動して思わず涙が零れた。
「たく、泣き虫なんだから」彼がハンカチで涙を拭ってくれた。
「そういう遥琉さんだって、目が真っ赤だよ」
「しゃあないだろう」
小声でそんなことを話していたら、卒園証書授与がはじまった。
担任の先生がピアノの隣に立ち、一人ずつ名前を呼びはじめた。
呼ばれた園児は着物姿の園長先生が待っているステージへと向かい、その間、先生が将来の夢を読み上げてくれた。
男の子はユーチュバーやスポーツ選手・警察官・TVアニメのキャラクター、女の子はケーキ屋さんやパティシエ・アイスクリーム屋さん・看護師さんや幼稚園の先生が多い中、一太の夢は全く違っていた。

ーー卯月一太くんの夢は弁護士になることです。弱い人を助け、パパみたく誰からも慕われる格好いい大人になりたいですーー
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

始まりの、バレンタイン

茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて…… 他サイトにも公開しています

冬は寒いから

青埜澄
BL
誰かの一番になれなくても、そばにいたいと思ってしまう。 片想いのまま時間だけが過ぎていく冬。 そんな僕の前に現れたのは、誰よりも強引で、優しい人だった。 「二番目でもいいから、好きになって」 忘れたふりをしていた気持ちが、少しずつ溶けていく。 冬のラブストーリー。 『主な登場人物』 橋平司 九条冬馬 浜本浩二 ※すみません、最初アップしていたものをもう一度加筆修正しアップしなおしました。大まかなストーリー、登場人物は変更ありません。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

僕と貴方と君と

五嶋樒榴
BL
カッコいい&可愛い年下ふたりに翻弄されてます。 柊木美峰は28歳。 不動産屋に勤務する宅地建物取引士。 顔見知りの24歳の融資担当の銀行員、葉山優星から食事に誘われ、そのまま自宅に招待される。 優星のマンションに着くと、そこには優星の年の離れた異母弟、小学2年生の明星が居て………。 恋愛に臆病な主人公が、ふたりの年下男子に振り回されるハートフルML。

染まらない花

煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。 その中で、四歳年上のあなたに恋をした。 戸籍上では兄だったとしても、 俺の中では赤の他人で、 好きになった人。 かわいくて、綺麗で、優しくて、 その辺にいる女より魅力的に映る。 どんなにライバルがいても、 あなたが他の色に染まることはない。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

処理中です...