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下焦がれ拗らせ愛の行方
下焦がれ拗らせ愛の行方
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お昼ご飯をリビングに運んでいたら颯人さんがひょっこり姿を現した。
「未知、手伝うよ」
ニコニコした顔付きで声を掛けられた。一緒にいるところを彼に見られたらまずい……昨夜も散々焼きもちを妬いてふて腐れていたもの。
【大丈夫です】にっこり微笑んで首を横に振った。
「悪阻、酷いんだろ。無理しない方がいい」
颯人さんがトレイを代わりに持ってくれた。
「あっ、そうだ。おめでとうがまだだったな。未知、妊娠おめでとう」
こんなふうに自然に笑う颯人さんのを見るのは初めてかも知れない。
そのとき、ゴホン。わざとらしく咳払いする声が背後から聞こえてきた。
「颯人、いくら元婚約者でも、人妻を口説くとはいい度胸してるな。未知は俺のだ。馴れ馴れしく呼び捨てにするな。根岸に姐さんって呼べって言われなかったか?」
驚いて後ろを振り返ると、顔をしかめる彼の姿が目に飛び込んできた。
当たり前だけどものすごく怒っている。
また彼のことを傷付けてしまったかも知れない。申し訳なくて頭を垂れた。
「颯人、何ボサッと突っ立てるんだ。早く謝れ」
根岸さんが慌てて飛んできて、颯人さんを窘め頭を下げさせた。
「すみませんでした。以後気を付けます」
「もっと大きい声で言え。それでは聞こえない」
声が小さいと指摘され、
「遥琉さんすみませんでした」
トレイを両手で持ちながら、再度頭を下げた。
「分かればいい」
「すみません」
片足を引きずりながらそそくさとキッチンをあとにした。
「颯人が何考えてるか、たまに分からなくなる」
やれやれといった表情を見せる根岸さん。
「根岸、仕事以外で、颯人が未知に近付かないようちゃんと見張ってろよ」
「おぅ」
なにげに彼と目が合った。てっきり睨まれるか怒られると思って覚悟していたけれど……にこっと優しい笑顔を見せてくれた。
「未知、手伝うよ」
ニコニコした顔付きで声を掛けられた。一緒にいるところを彼に見られたらまずい……昨夜も散々焼きもちを妬いてふて腐れていたもの。
【大丈夫です】にっこり微笑んで首を横に振った。
「悪阻、酷いんだろ。無理しない方がいい」
颯人さんがトレイを代わりに持ってくれた。
「あっ、そうだ。おめでとうがまだだったな。未知、妊娠おめでとう」
こんなふうに自然に笑う颯人さんのを見るのは初めてかも知れない。
そのとき、ゴホン。わざとらしく咳払いする声が背後から聞こえてきた。
「颯人、いくら元婚約者でも、人妻を口説くとはいい度胸してるな。未知は俺のだ。馴れ馴れしく呼び捨てにするな。根岸に姐さんって呼べって言われなかったか?」
驚いて後ろを振り返ると、顔をしかめる彼の姿が目に飛び込んできた。
当たり前だけどものすごく怒っている。
また彼のことを傷付けてしまったかも知れない。申し訳なくて頭を垂れた。
「颯人、何ボサッと突っ立てるんだ。早く謝れ」
根岸さんが慌てて飛んできて、颯人さんを窘め頭を下げさせた。
「すみませんでした。以後気を付けます」
「もっと大きい声で言え。それでは聞こえない」
声が小さいと指摘され、
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「分かればいい」
「すみません」
片足を引きずりながらそそくさとキッチンをあとにした。
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やれやれといった表情を見せる根岸さん。
「根岸、仕事以外で、颯人が未知に近付かないようちゃんと見張ってろよ」
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