single tear drop

修羅の妄執

修羅の妄執

「暑苦しいので離れて頂けませんか！？」

「そう固いこと言うなって。俺とお前の仲だろ？それより今妹たちって聞こえたんだか……」

「あくまでプライベートな事なので伏せていましたが、私と千里は実の兄弟です。御両親が側にいない未知さんの兄代わりをしています」

「なるほどな。しかし、遥琉一途だったお前が結婚したって聞いたときはびっくりしたんだぞ。で、相手は？」

さっきとはまるっきり別人の鳥飼さんに、彼や斉木さん以外全員呆気に取られていた。

「鳥飼は過去に何度か傷害事件を起こし橘にその度助けてもらっている」

へ～ぇそうなんだ。目をパチパチさせて二人を眺めていたら、

「俺の妻からさっさと離れろ！｣

遥香の手を繋ぎ、怒り心頭の様子で柚原さんが姿を現した。

｢……妻！？｣

すぐには理解出来ずにいた鳥飼さんだったけれど、柚原さんに睨まれ、はっと気が付いたみたいだった。

「……嘘だろ！？」

思わず本音が零れ落ちた。

「相手が俺で悪かったな」

「いや、悪いとは言ってない。驚いただけだ」

鳥飼さんが橘さんの体をすっと離した。

「あの鼻垂れ小僧のチンピラだったお前が本部長とはな。出世したもんだ」

「煩いな。そういうお前こそ九鬼総業の若頭まで登り詰めるとはな」

橘さんを間に挟み牽制し合う二人に、度会さんや弓削さんは苦虫を潰したような表情を浮かべていた。
「橘、モテモテだな」
「羨ましいよ」

回りからの冷やかしに橘さんは一切動じることはなかった。