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暗澹
暗澹
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「何で・・・・・?」
ごく普通に部屋に入ってきたのは地竜さんだった。
眠気が一気に覚めて、慌てて飛び起きた。
「愛おしい妻と子供達に会いに来るのにいちいち理由が必要か?体調はどうだ?」
じりじりと近付いてくる地竜さんを睨み付けた。彼がいないこの状況で子供達を守れるのは僕しかいないもの。
「何でいつも警戒するかな。哀しくなるだろう」
やれやれとため息をつく地竜さん。
ベットの側まで来ると静かに腰を下ろした。
「白竜と緑竜の似顔絵が公開された。俺も随分と格好良く描いてもらって、マーナオに礼を言わないとな」
薄ら笑いを浮かべる地竜さん。
何気に目が合うと、
「顔に嘘つきって書いてあるぞ」
くくくと苦笑された。
「白竜も緑竜もマーナオを抹殺しろと鼻息を荒くしていたが、考えてみたら身から出た錆びだ。たまにはお灸を据えた方が二人の為になる」
「那和さんは、真沙哉さんと一日でも早く一緒に暮らすために捜査に協力した。だから・・・・」
「マーナオは悪くない、だろ?」
音もなく手を捧げ持たれ、引っ込める間もなく指先にそっと口付けられた。
嫌悪感からかぞくぞくと鳥肌が立った。
「でも助けてもらった恩を忘れ、組織を裏切ったのは事実だ。マーナオには死んでもらうしかない。それに琥珀もだ。余計なことを喋る前に口を封じなければならない」
「そんなの酷いよ。同じ人間がすることじゃない」
自分達の私利私欲のため、那和さんと紗智さんを殺すなんて。
「地竜さん、待っ・・・・・」
その時だった。
目を開けていられなくなるくらい眩い光に包まれたのは。
地竜さんが太惺と心望を抱き起こすと、僕達を守るように抱き締めた。
やや遅れて、ガシャーンと窓ガラスが割れる音が轟き、暗闇を焦がすかのような真っ赤な炎が上がった。
ごく普通に部屋に入ってきたのは地竜さんだった。
眠気が一気に覚めて、慌てて飛び起きた。
「愛おしい妻と子供達に会いに来るのにいちいち理由が必要か?体調はどうだ?」
じりじりと近付いてくる地竜さんを睨み付けた。彼がいないこの状況で子供達を守れるのは僕しかいないもの。
「何でいつも警戒するかな。哀しくなるだろう」
やれやれとため息をつく地竜さん。
ベットの側まで来ると静かに腰を下ろした。
「白竜と緑竜の似顔絵が公開された。俺も随分と格好良く描いてもらって、マーナオに礼を言わないとな」
薄ら笑いを浮かべる地竜さん。
何気に目が合うと、
「顔に嘘つきって書いてあるぞ」
くくくと苦笑された。
「白竜も緑竜もマーナオを抹殺しろと鼻息を荒くしていたが、考えてみたら身から出た錆びだ。たまにはお灸を据えた方が二人の為になる」
「那和さんは、真沙哉さんと一日でも早く一緒に暮らすために捜査に協力した。だから・・・・」
「マーナオは悪くない、だろ?」
音もなく手を捧げ持たれ、引っ込める間もなく指先にそっと口付けられた。
嫌悪感からかぞくぞくと鳥肌が立った。
「でも助けてもらった恩を忘れ、組織を裏切ったのは事実だ。マーナオには死んでもらうしかない。それに琥珀もだ。余計なことを喋る前に口を封じなければならない」
「そんなの酷いよ。同じ人間がすることじゃない」
自分達の私利私欲のため、那和さんと紗智さんを殺すなんて。
「地竜さん、待っ・・・・・」
その時だった。
目を開けていられなくなるくらい眩い光に包まれたのは。
地竜さんが太惺と心望を抱き起こすと、僕達を守るように抱き締めた。
やや遅れて、ガシャーンと窓ガラスが割れる音が轟き、暗闇を焦がすかのような真っ赤な炎が上がった。
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