single tear drop

彩矢

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真の黒幕

真の黒幕

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「千里が龍成を鷲崎の許に向かわせたのはサツの目を欺くためだ。蜂谷の周囲の人間を徹底的に調べせるためにわざと一芝居打ったんだ」
小声で話す彼。初めて聞く事ばかりで頭が追い付いていかない。
「未知がここにいる事は一部の人間しか知らない。一番安全なはずなのに、なんで命を狙われないといけないのか、橘と蜂谷と惣一郎さん、和江さんと何度も話し合った。サツに内通者がいるんじゃないか、ソイツが真珠を裏で操って未知を襲わせたんじゃないか、その結論に達した」
射抜くような鋭い眼差しで寝室の中をぐるりと見渡す彼。
「未知の声フェチは橘と柚原だけで十分だ。人の女房の声を盗み聞きしやがって、不逞野郎だ。絶対に許さねぇ」
ねぇ遥琉さん、もうちょっと声押さえないと聞こえちゃうよ。
袖をツンツンと引っ張った。
「聞こえるようにわざと言ってんだよ」
駄々を捏ねる子供のようにムキになっていた。

鳥飼さんを無事に保護したと柚原さんから連絡があったのはそれから数時間後のことだった。
茂原さんのあとを追いかけてきた上司の伊澤さんという刑事さんが病院に駆け付けてくれたみたいで、詳しい事までは話してはくれなかった。
彼に聞いても「大丈夫だ」としか答えてくれなくて。肝心なことは何も教えてはくれなかった。

こうなったら千里さんに直接聞くしかない。
多分、答えてはくれないと思うけれど、何もしないで、もやもやしているよりはましだもの。メールを送信したらすぐに電話の着信音が鳴った。
『千里に連絡してくると思ってました』
声の主は橘さんだった。
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