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幸せのいろ
幸せのいろ
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「あんたとは、頭が冴えている朝一番で話をしたかったんだ。儂も年だからな。アッハッハッ」
早朝事務所を訪ねてきた客にこう言って気をよくさせる度会さん。
頼まれる側であっても威張ることは一切しなかった。
だから同業者からもカタギの旦那衆からも人望があり、早朝から来客が絶えなかった。
ただでさえ忙しい彼に代わって、度会さんや弓削さんら幹部の皆さんが組を守ってくれている。感謝してもしきれない。
「すみません、お待たせして」
「いや、大丈夫です」
「熱いので気を付けてください」
お客さんの前に淹れたてのコーヒーが入ったカップをそっと静かに置いた。
僕に出来ることといったらお茶出しくらいしかないから。少しでも手伝えることを精一杯やろう、そう決めた。
「あれ?見ない顔だね」
何気に男性と目があった。
「新入り?」
「いえ違います」
首を横に振った。
「あっ、ごめん。てっきり男だと……」
ふっくらとしたお腹を見て急に慌てはじめた。
「齋藤、最後まで待たせて悪かった」
度会さんが姿を見せた。
「どうした?」
怪訝そうに顔をしかめた。
「彼女に失礼なことを言ってしまいました。本当にすみません」
平身低頭し謝られた。
「未知は儂の娘だ。そんなことでいちいち目くじらを立てないよ」
男性が良かったと独り言を口にし、安堵のため息をついた。
「紹介が遅れてすみません」
男性が名刺を差し出した。おずおずと受け取って、名刺に目を通すと、東京に本社がある出版社の人だった。
「三日後に発売される週刊誌に、渋谷円山町の料亭を隠れ蓑にした、政府高官と外務省官僚を相手にした性接待の記事が掲載されることになった。黒竜が便宜を図ってもらうため、その見返りに女性を斡旋していた」
男性が帰ったあと、テーブルの上のコーヒーカップを片付けていたら、度会さんにそう言われた。
「彼女もその一人だった。捕まえるためじゃない。黒竜に二度と利用されないよう、一刻も早く見付けてやらないと」
早朝事務所を訪ねてきた客にこう言って気をよくさせる度会さん。
頼まれる側であっても威張ることは一切しなかった。
だから同業者からもカタギの旦那衆からも人望があり、早朝から来客が絶えなかった。
ただでさえ忙しい彼に代わって、度会さんや弓削さんら幹部の皆さんが組を守ってくれている。感謝してもしきれない。
「すみません、お待たせして」
「いや、大丈夫です」
「熱いので気を付けてください」
お客さんの前に淹れたてのコーヒーが入ったカップをそっと静かに置いた。
僕に出来ることといったらお茶出しくらいしかないから。少しでも手伝えることを精一杯やろう、そう決めた。
「あれ?見ない顔だね」
何気に男性と目があった。
「新入り?」
「いえ違います」
首を横に振った。
「あっ、ごめん。てっきり男だと……」
ふっくらとしたお腹を見て急に慌てはじめた。
「齋藤、最後まで待たせて悪かった」
度会さんが姿を見せた。
「どうした?」
怪訝そうに顔をしかめた。
「彼女に失礼なことを言ってしまいました。本当にすみません」
平身低頭し謝られた。
「未知は儂の娘だ。そんなことでいちいち目くじらを立てないよ」
男性が良かったと独り言を口にし、安堵のため息をついた。
「紹介が遅れてすみません」
男性が名刺を差し出した。おずおずと受け取って、名刺に目を通すと、東京に本社がある出版社の人だった。
「三日後に発売される週刊誌に、渋谷円山町の料亭を隠れ蓑にした、政府高官と外務省官僚を相手にした性接待の記事が掲載されることになった。黒竜が便宜を図ってもらうため、その見返りに女性を斡旋していた」
男性が帰ったあと、テーブルの上のコーヒーカップを片付けていたら、度会さんにそう言われた。
「彼女もその一人だった。捕まえるためじゃない。黒竜に二度と利用されないよう、一刻も早く見付けてやらないと」
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