【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ

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ep10.5 仄かな熱01【※】

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※主に性描写です。ご注意ください。



 あっさり押し倒されたヴァンに、俺は勢いのまま唇を重ねた。

 強引に触れただけの唇を離してヴァンを見下ろすと、ヴァンは瞬きもせずじっと俺を見上げていた。
 焚き火の炎が映り込んだ琥珀の瞳は、とろりと熱のこもった赤みを溶け込ませ揺らめいている。

 すごく綺麗だ。

 その瞳に吸い込まれそうになりながら、啄むようにキスを落とす。ヴァンも同じように啄むキスを俺に返す。
 角度を変えてもう一度すると、同じように角度を変えて。

 欲しがる顔も、真似する仕草も、全部かわいい。

 たまらない気持ちになり、抱き寄せて今度はより深く口づけた。
 濡れた唇を舌でなぞると、口が小さく開く。舌を割り入れ、上顎をくすぐる。
 ヴァンは俺の舌を優しく吸い、戯れるように舌を絡めてきた。

 静謐な針葉樹の森の中、たまに揺れる梢の音と爆ぜる焚き火の音だけが聞こえてくる。
 冷えた晩秋の空気と焚き火の熱さの狭間で触れる人肌は、温かく心地よい。

 甘やかなキスを何度も重ねるうちに、密着した互いの下腹部に硬く熱を帯びたものを感じた。

「……君を抱いても?」
 俺はヴァンの耳元に唇を寄せて囁いた。

「私も君に抱かれたい……が、君はそれで構わないのか?」
 ヴァンは躊躇い気味にそう返してきた。

「どういう意味だ?」

「……なんとなく、だが。君は本来抱かれる側じゃないのかと」
 こんなところでもヴァンは鋭い。

「あー……うん、まぁ。そっちが多いけど。俺は両方好きだからこだわりはない。単純に俺を抱きたいって相手が多いだけなんだ。
 あ、でも年下の男は抱くことが多いな。かわいいから抱きたくなる」
 俺がニッコリ笑ってそう言うと、ヴァンは眉を顰めた。

「……年下?私のことを言っているのか?」

「そうだけど」

「年下は君だろう」

「いや、さすがに。それはないだろ」

「グレイ、君の年齢は?」

「22歳だ」

「ほら、やはり私の方が年長だ。私は24歳だよ」
 ヴァンの少し勝ち誇ったような顔に、俺は固まる。

「……どうしたんだ、グレイ?」

 俺は少し身体を離すと、自分の胸の前でヴァンの両手を強く握った。
「ヴァン、君は最高だよ」

「本当にどうしたんだ、グレイ」

「君は奇跡の男だ。こんなにも華奢で可憐な年上に俺は出会ったことがない!」

「…………褒められてるんだろうか?」

「もちろん褒めてる!ヴァンが年下だと思って黙っていたが、俺は年上好きなんだ。こんなにもかわいい魅力に溢れた君が年上だと知った今、感動を禁じ得ないでいる!」

「なる、ほど……?」

「まさかヴァンが年上で、しかも抱かせてもらえるなんて。……あぁ、やばいな。年上の男を抱くなんてはじめてだ。興奮しすぎで緊張してきた……!」 

 感動のあまり身悶える俺を、ヴァンはポカンとした顔で見上げている。

「……そうか、うん。とりあえず君が喜んでいるのはよくわかった。では存分に、年上の私を抱いてくれ」
 ヴァンは苦笑いすると、悶える俺の頬にキスをしてくれた。



 互いの外套と携帯毛布を敷き、その上に靴を脱いで座った。
 俺が「おいで」と両手を広げると、ヴァンは一瞬躊躇った表情を浮かべたが、少し恥ずかしげに近づいてきた。

 そこで照れるのか。いちいちかわいいな……

 俺たちはキスを再開する。
 キスをしながら俺はヴァンの身体に触れた。
 首筋をなぞり、鎖骨を撫で、胸に手を這わせながら衣服を緩める。
 服を脱がせていくと、ヴァンはキスを止めることなく俺の動きに合わせ、自らも服を脱いでいく。
 と同時に。いつの間にか俺の上着のボタンもベルトも全て外していた。

 ヴァンの華麗な手捌きに、内心俺は驚く。

 俺の心の声を察したのか、ヴァンは動きを止めずにクスクスと笑う。
「……もう少し不慣れで純情そうな方が君の好みだったか?」

 ヴァンは脱ぐのも脱がすのも、かなり手慣れていた。
 さっきは妙なところで照れていたが、経験豊富なのが何となくわかった。

「いや、そんなことない。個人的には燃える。君を抱いたことのあるどの男よりも君を気持ちよくしてやりたいと、競争心を煽られる」
 俺の挑戦的な言葉にヴァンは笑う。

「はは、面白い感想だ。君も思っていたよりずっと手慣れてる……悪い男だな。だが、キスも触れ方もすごく気持ちがいい」
 そう言うと、ヴァンは俺の服を脱がせて胸をするりと撫でた。
 ヴァンの指先は暖かくて心地よい。



 互いに一糸纏わぬ姿となり、旅の途中ということもあったので洗浄魔法で身体を綺麗にした。

 それから俺は指先に魔力を集中させ、生成魔法で指先にとろりとした潤滑液を纏わせる。


 皆様、ご覧あれ。
 この世界の叡智を!


 生成魔法は詠唱者が任意の成分構成で少量の液体をその場に生成することができる。
 こういった場で紳士淑女の誰もが嗜む簡易魔法だ。

 生成が得意な者は、構成成分に高品質な油分を練ったり、香りを加味したり、微量の催淫成分を混ぜ込んだりする。
 言ってしまえば、情事が上手い奴は生成魔法も上手い。

 この生成魔法、そして先程の洗浄魔法のおかげで。
 俺はいついかなる時に良い男と出会おうと、そこから先の展開に躊躇なく足を……いや一物を踏み入れることができるのだ。

 ありがとう魔法!ありがとう異世界!
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