【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

すめらぎかなめ

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第2章

第6話

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 移動している最中、彼は私の隣に並んでくださった。背丈も高いので、彼の歩幅はかなりのものだと思う。でも、彼は私に合わせて歩いてくださる。……好感度が、高い。

「あ、その。お店の予約、お任せしてしまって申し訳ございませんでした……」

 あぁ、そうだ。こういうものは秘書がするものなのだ。

 そう思って、慌てて謝罪をすれば丞さんはゆるゆると首を横に振られる。

「知り合いの店なので、俺が電話したほうが早いんで。気にしないでください」
「……はい」

 しかし、そう言われたら黙るしかない。

 私はアスファルトに視線を向けて、歩く。どういう風に彼を見たらいいかがわからなくて、俯き続けた。

「差支えがなかったら、聞きたいことがあるんですが」

 目の前の歩行者用の信号が赤になって、立ち止まったとき。ふと、丞さんがそう声をかけてこられた。

 私は彼の横顔を見上げて、こくんと首を縦に振る。

「杏珠さんって、恋人とか、好きな人とか。そういう人、いますか?」

 ……が、彼の問いかけが予想の斜め上だった所為で。私はぽかんとする。

 助けを求めるように歩行者用の信号を見るけれど、まだ赤のままだ。

「いや、本当、答えたくなかったら、答えなくて構わないです」

 私の態度を見て、丞さんが慌ててそう付け足される。……慌てたような声、表情はあんまり動いていないようだけれど。

「……いません。恋人とか、好きな人とか」

 なんだか隠すのも変な話なので、私はそう返す。

「そもそも、今まで恋人がいたためしもありません」

 ぽつりとそう零したとき、信号が青になる。私が前に向けた視線を、彼に戻す。

 ……凝視されていた。

「杏珠、さんって」

 彼がなにかを言おうとして。それでも、歩くほうを優先されたらしい。

 私に「行きましょう」と言って足を前に進められる。私は、頷いて彼の後を追った。

(というか、先ほどの問いかけってなに? もしかして、脈ありとか、そういうこと……?)

 けど、よくよく考えて。身体の関係を持った相手の恋人の有無を気にするのは、当然ではないのだろうか?

 ……本当、今更だけれど。

(それとも、なんかそれっぽいこと聞かれたっけ……?)

 ……記憶にない。悲しいことに。

 頭の中がぐるぐると回る中、丞さんが連れてきてくださったのは、隠れ家的なお店だった。

 彼が扉を開けると、中から「いらっしゃいませ」という若い女性の声が聞こえてくる。

「あっ、真田さんだ!」

 女性が、親し気に丞さんのことを呼んでいる。……どうしてか、ちょっともやっとした。

 だけど、さすがに扉の前に立ち尽くしているわけにはいかず、私も店内に入る。店内は、とてもおしゃれだった。

 そして、視線を動かせば、先ほどから丞さんと親し気に話している一人の女性。

 明るい茶色の髪をした、年齢からして二十代前半といった感じ。大学生にも見えてしまう。

「真田さんが女性連れ、珍しいですね。……というか、初めてじゃないですか?」

 女性がニコニコと笑って、丞さんに声をかけている。……丞さんは、肩をすくめられていた。

(この女性は、どういう関係なのかしら……?)

 お二人の様子を見た私は、どうしてかそう思ってしまっていた。
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