25 / 88
パンプローナ
二ー12 パンプローナ 2/2
しおりを挟む
街の中心にある城へ向かうと、門番に軽い質問をされただけで城内へと案内される。
先触れがすでにリシャールが来たことを伝えていたのだろう。
早速王宮へと挨拶へいった。
王宮では、留守である王の替わりにベランジェールが出迎えてくれた。
スラリとした体を質素な衣服で身を包み、つややかな黒い髪をリボンでまとめ、凛とした佇まいの中に、優しげな目が印象的だ。
彼女はスカートをつまみ上げ礼をとると、よく通る声が広間に広がる。
「ようこそおいでくださいました。リシャール様。あいにく王が不在ゆえ、この様な簡素なご挨拶をお許しください。」
リシャールは儀式的な挨拶を返すと、懐かしげな面持ちでベランジェールを見る。
「簡素でいい。堅苦しい挨拶は苦手だ。」
リシャールはベランジェールの方に歩み寄ると軽くハグをすると、お互いに微笑みあった。
「久方ぶりだな。6年ぶりか。すっかり美しく成長されたものだ。王が不在でむしろ幸運であった。この様な美しい姫直々に、歓迎していただけるのだからな。ところで、サンチョは?」
そう言われてベランジェールは少し怒った様な、不満げな表情をする。
「兄上はちょうど、いつものようにふらりと山の教会に行ってしまわれましたの。使いの者を出してすぐ帰ってくるように申し上げましたが、・・・入れ違いだったようです。」
「なんだ、じゃぁ、俺たちが峠に居た時も、あいつ居たってことか。目立つなりしてるのに、相変わらず覇気ががねぇから、みつかんねぇな。」
「ふふふ。リシャール様の歯に衣着せぬ物言いも相変わらずですわね。兄上も以前リシャール様から教わった剣術を復習しながら、ずっと鍛錬を重ねていますのよ。ああ。そうだわ! リシャール様。また兄上の稽古を手伝っていただけないかしら。以前よりは随分マシになりましたが、まだまだですの。」
「ベランジェールも変わらず厳しいな。今回はアイツの体にあった剣を持参したんだ。腕の達つ剣士も連れてきたから、期待してろよ。」
「はい。リシャール様。頼りにしております。ところでジョーン様のご様子はご存知かしら。」
「いや。あいつ全然連絡よこさねぇし、こっちもしねぇし、ベランジェールは、連絡取ってるのか?」
「はい。シチリアでとても楽しんでいらっしゃる様子でしたよ。この度は初陣なさったとか。」
「へー。ヤルな。アイツ。」
ポールがリシャールに突っ込む。
「いや、ヤルなじゃ、ないでしょ。え? 初陣? 姫が? 」
それを見てふふふとベランジェールが笑う。
「そうですの。おかしいですわよね。まぁ、なんとなくそうなる予感はしていましたが、まさか本当に隊に入れてもらえるとは思いませんわよね。」
「いや。アイツ筋がいいからな。結婚っていってもまだ子ども作れる年齢じゃないし、王宮生活なんて息がつまるだろう。良かったんじゃないか。」
「ええ。王にもかわいがって頂いてる様子ですわ。まぁ、騎士として、ですけれど。」
やれやれといった顔でポールはため息をつく。
「騎士見習いするために嫁に行ったわけじゃ無いんだけどな。ジョーン様らしいが。」
ふむ。とリシャールがつぶやく。
「シチリア王。確か前線にはあまり出てこないイメージだな。王宮で細かな指示を出すタイプだろ? 信頼できる武人が前線に出てくれれば何かと捗るか・・・。あー。ジョーンの騎士叙任式俺がやりたかったのになー。」
「・・・文によれば、シチリア王は随分と美しい御仁のようですわ。時のトルバドールダニエル殿も裸足で逃げ出す程だと、書いてありました。」
リシャールの最後の言葉は黙殺され、ベランジェールが新たな情報をぶち込んできた。
それを聞いて後ろに控えていたダニエルがここぞとばかりに前へ進み出る。
「ほほう。それはそれは。ああ見えてジョーン様はオレを多少なりとも評価してくださっていたということだな。」
ダニエルはベランジェールの前に跪き騎士の礼を取る。
「お初にお目にかかります。私が噂のトルバドール、ダニエルでございます。」
「リシャール様の随従は皆様勇敢で面構えが良いと門兵たちが申しておりましたが、ダニエル様もご一緒でしたのね。ジョーン様から噂は伺っております。なんでも、ジョーン様に20戦20敗だとか?」
先制パンチを食らったダニエルは少し苦笑いすると、ベランジェールの手の甲にキスをした。
「幼い姫に花をもたせたまでの事でございます。貴方様にも花を持ってまいりました。どうぞお受け取りください。」
そう言うとダニエルはいつの間に用意したのか、一輪の美しい花を差し出す。
ダニエルのその仕草は美しく、広間に控えていたナバラの国の者たちからため息が漏れた。
ーーーーーあとがきーーーー
お辞儀
女性がスカートをつまみ上げてするのが
カテーシ- curtsey
男性が立ってするお辞儀が
ボウアンドスクレイプ bow and scrape
↑
男性バージョンは小説該当時代にあったのかどうかはわかりません。
皆貴族は騎士だし。
ダンスも皆で輪になって踊るタイプで、手を取り合って二人でステップというは数百年後の文化ではないかしらと思ってます。(未調査デス)
先触れがすでにリシャールが来たことを伝えていたのだろう。
早速王宮へと挨拶へいった。
王宮では、留守である王の替わりにベランジェールが出迎えてくれた。
スラリとした体を質素な衣服で身を包み、つややかな黒い髪をリボンでまとめ、凛とした佇まいの中に、優しげな目が印象的だ。
彼女はスカートをつまみ上げ礼をとると、よく通る声が広間に広がる。
「ようこそおいでくださいました。リシャール様。あいにく王が不在ゆえ、この様な簡素なご挨拶をお許しください。」
リシャールは儀式的な挨拶を返すと、懐かしげな面持ちでベランジェールを見る。
「簡素でいい。堅苦しい挨拶は苦手だ。」
リシャールはベランジェールの方に歩み寄ると軽くハグをすると、お互いに微笑みあった。
「久方ぶりだな。6年ぶりか。すっかり美しく成長されたものだ。王が不在でむしろ幸運であった。この様な美しい姫直々に、歓迎していただけるのだからな。ところで、サンチョは?」
そう言われてベランジェールは少し怒った様な、不満げな表情をする。
「兄上はちょうど、いつものようにふらりと山の教会に行ってしまわれましたの。使いの者を出してすぐ帰ってくるように申し上げましたが、・・・入れ違いだったようです。」
「なんだ、じゃぁ、俺たちが峠に居た時も、あいつ居たってことか。目立つなりしてるのに、相変わらず覇気ががねぇから、みつかんねぇな。」
「ふふふ。リシャール様の歯に衣着せぬ物言いも相変わらずですわね。兄上も以前リシャール様から教わった剣術を復習しながら、ずっと鍛錬を重ねていますのよ。ああ。そうだわ! リシャール様。また兄上の稽古を手伝っていただけないかしら。以前よりは随分マシになりましたが、まだまだですの。」
「ベランジェールも変わらず厳しいな。今回はアイツの体にあった剣を持参したんだ。腕の達つ剣士も連れてきたから、期待してろよ。」
「はい。リシャール様。頼りにしております。ところでジョーン様のご様子はご存知かしら。」
「いや。あいつ全然連絡よこさねぇし、こっちもしねぇし、ベランジェールは、連絡取ってるのか?」
「はい。シチリアでとても楽しんでいらっしゃる様子でしたよ。この度は初陣なさったとか。」
「へー。ヤルな。アイツ。」
ポールがリシャールに突っ込む。
「いや、ヤルなじゃ、ないでしょ。え? 初陣? 姫が? 」
それを見てふふふとベランジェールが笑う。
「そうですの。おかしいですわよね。まぁ、なんとなくそうなる予感はしていましたが、まさか本当に隊に入れてもらえるとは思いませんわよね。」
「いや。アイツ筋がいいからな。結婚っていってもまだ子ども作れる年齢じゃないし、王宮生活なんて息がつまるだろう。良かったんじゃないか。」
「ええ。王にもかわいがって頂いてる様子ですわ。まぁ、騎士として、ですけれど。」
やれやれといった顔でポールはため息をつく。
「騎士見習いするために嫁に行ったわけじゃ無いんだけどな。ジョーン様らしいが。」
ふむ。とリシャールがつぶやく。
「シチリア王。確か前線にはあまり出てこないイメージだな。王宮で細かな指示を出すタイプだろ? 信頼できる武人が前線に出てくれれば何かと捗るか・・・。あー。ジョーンの騎士叙任式俺がやりたかったのになー。」
「・・・文によれば、シチリア王は随分と美しい御仁のようですわ。時のトルバドールダニエル殿も裸足で逃げ出す程だと、書いてありました。」
リシャールの最後の言葉は黙殺され、ベランジェールが新たな情報をぶち込んできた。
それを聞いて後ろに控えていたダニエルがここぞとばかりに前へ進み出る。
「ほほう。それはそれは。ああ見えてジョーン様はオレを多少なりとも評価してくださっていたということだな。」
ダニエルはベランジェールの前に跪き騎士の礼を取る。
「お初にお目にかかります。私が噂のトルバドール、ダニエルでございます。」
「リシャール様の随従は皆様勇敢で面構えが良いと門兵たちが申しておりましたが、ダニエル様もご一緒でしたのね。ジョーン様から噂は伺っております。なんでも、ジョーン様に20戦20敗だとか?」
先制パンチを食らったダニエルは少し苦笑いすると、ベランジェールの手の甲にキスをした。
「幼い姫に花をもたせたまでの事でございます。貴方様にも花を持ってまいりました。どうぞお受け取りください。」
そう言うとダニエルはいつの間に用意したのか、一輪の美しい花を差し出す。
ダニエルのその仕草は美しく、広間に控えていたナバラの国の者たちからため息が漏れた。
ーーーーーあとがきーーーー
お辞儀
女性がスカートをつまみ上げてするのが
カテーシ- curtsey
男性が立ってするお辞儀が
ボウアンドスクレイプ bow and scrape
↑
男性バージョンは小説該当時代にあったのかどうかはわかりません。
皆貴族は騎士だし。
ダンスも皆で輪になって踊るタイプで、手を取り合って二人でステップというは数百年後の文化ではないかしらと思ってます。(未調査デス)
0
あなたにおすすめの小説
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?
雪 いつき
BL
仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。
「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」
通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。
異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。
どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?
更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!
異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる―――
※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新するかもです。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる