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3. 絶望
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「危なかったです……」
飛んできた矢を掴んでそう口にするアイリス。それを見た護衛さん二人が一瞬驚いた表情をしていたけど、すぐに立ち直ってこう口にした。
「あの岩場の影に一度隠れましょう」
「ええ。【風の防壁よ】」
矢を避けるための防御魔法を起動して、急いで岩場に向かう私達。
そして岩場の影に辿り着くと、矢を受けてしまった護衛さんが肩を押さえて苦しそうな表情を浮かべた。
「すぐに治すわね」
聖女の肩書を失っても、聖女になる条件の治癒魔法の力が失われることは無い。
だから、私はすぐに治癒魔法の準備をした。
「すみません、ありがとうございます」
そう言って自分で矢を引き抜く護衛さん。すぐに手に治癒魔法の魔力を集めて、護衛さんの肩へと流した。
すると溢れてきていた血の流れが止まり、痛みも無くなったみたいで護衛さんは安堵の表情を浮かべた。
「お嬢様、遮光の魔法をお願いします。夜の闇に紛れて逃げましょう」
「分かったわ。【闇の膜よ】」
女性の貴族達が日除けによく使う生活魔法、遮光魔法を私の後ろから包み込むように起動した私。
こんなもので見えなくなるのか疑問だけど、アイリスを信じて岩場から出る私達。
すると、すぐ近くまで武装した集団――王都の衛兵達が来ているのが見えた。
「どうやら気付かれてないようですね」
「ええ。念のため防音魔法も起動しておいたから、音で気付かれることもなかったみたいね」
「では、我々はこのまま行きましょう」
そうして、私達は窮地を脱することが出来た。
でも、王都の衛兵に襲われた理由はいくら考えても浮かんでこなかった。
襲ってきたのが、王子によって元聖女候補にされてしまった私を狙っていた暗殺集団なのかもしれない。
護衛さんがそんなことを言っていたから、周囲を警戒しつつ常に遮光魔法を使って移動を続けた私達。
そのお陰か、盗賊などに襲われることもなく、月が登り切る前にはお父様が治めるノスタルダム子爵領に入ることが出来た。
ここまで来れば王都の近くで襲ってきた集団は来れないはずだから、魔法を解いて道を進む私達。
1時間ほど道を進むと、この時間にしては珍しく明かりの灯っている子爵邸が見えてきた。
「何かあったようですね。急ぎましょう」
「ええ、私もなんだか嫌な予感がするわ」
とはいえ、この長時間の移動で馬は疲れているから、走らせることなんて出来ない。
出来るだけ早歩きをさせて急いだ。
それなのに……
「止まれ、この時間に何の用だ?」
……門の前で足止めされてしまった。
この時間の来客なんて怪しすぎるから、止めてなかったら大問題だけど……こういう時には無い方が助かるわね。
門を開けてもらうために、私は顔を見せようと馬から降りて、光の魔法で照らしながらこう口にした。
「私よ、フィリアと言えば分かるかしら?」
「フィリアお嬢様⁉︎ 暗くてお顔が見えなかったので気付きませんでした……」
申し訳なさそうにする門番に、私はこんな指示を出した。
「分かればいいのよ。門を開けてもらえるかしら?」
「それは出来ません。旦那様からお嬢様を入れてはいけないと指示されているので」
門番から告げられた衝撃的な言葉。護衛さん2人は空いた口が塞がらないようだった。
「もちろん理由はあるのよね?」
「ええ、お嬢様に聖女の威厳を損ねた罪と王族を侮辱した罪がかけられているからです。さっき早馬で知らせが来ました。
そういうわけで、いくら旦那様でもここにお嬢様を匿うことは出来ないそうです」
「そんな……」
私を大切にしてくれていたお父様が私を見捨てた。
その事実にショックを受けた私は、身体中から力が抜けたかのように地面に座り込んでしまった。
「お嬢様……! しっかりしてください! お嬢様……っ!」
普段ならとっくに眠っている時間の移動で体力が限界だったのもあって、私の頭の中は絶望に染まっていた。
飛んできた矢を掴んでそう口にするアイリス。それを見た護衛さん二人が一瞬驚いた表情をしていたけど、すぐに立ち直ってこう口にした。
「あの岩場の影に一度隠れましょう」
「ええ。【風の防壁よ】」
矢を避けるための防御魔法を起動して、急いで岩場に向かう私達。
そして岩場の影に辿り着くと、矢を受けてしまった護衛さんが肩を押さえて苦しそうな表情を浮かべた。
「すぐに治すわね」
聖女の肩書を失っても、聖女になる条件の治癒魔法の力が失われることは無い。
だから、私はすぐに治癒魔法の準備をした。
「すみません、ありがとうございます」
そう言って自分で矢を引き抜く護衛さん。すぐに手に治癒魔法の魔力を集めて、護衛さんの肩へと流した。
すると溢れてきていた血の流れが止まり、痛みも無くなったみたいで護衛さんは安堵の表情を浮かべた。
「お嬢様、遮光の魔法をお願いします。夜の闇に紛れて逃げましょう」
「分かったわ。【闇の膜よ】」
女性の貴族達が日除けによく使う生活魔法、遮光魔法を私の後ろから包み込むように起動した私。
こんなもので見えなくなるのか疑問だけど、アイリスを信じて岩場から出る私達。
すると、すぐ近くまで武装した集団――王都の衛兵達が来ているのが見えた。
「どうやら気付かれてないようですね」
「ええ。念のため防音魔法も起動しておいたから、音で気付かれることもなかったみたいね」
「では、我々はこのまま行きましょう」
そうして、私達は窮地を脱することが出来た。
でも、王都の衛兵に襲われた理由はいくら考えても浮かんでこなかった。
襲ってきたのが、王子によって元聖女候補にされてしまった私を狙っていた暗殺集団なのかもしれない。
護衛さんがそんなことを言っていたから、周囲を警戒しつつ常に遮光魔法を使って移動を続けた私達。
そのお陰か、盗賊などに襲われることもなく、月が登り切る前にはお父様が治めるノスタルダム子爵領に入ることが出来た。
ここまで来れば王都の近くで襲ってきた集団は来れないはずだから、魔法を解いて道を進む私達。
1時間ほど道を進むと、この時間にしては珍しく明かりの灯っている子爵邸が見えてきた。
「何かあったようですね。急ぎましょう」
「ええ、私もなんだか嫌な予感がするわ」
とはいえ、この長時間の移動で馬は疲れているから、走らせることなんて出来ない。
出来るだけ早歩きをさせて急いだ。
それなのに……
「止まれ、この時間に何の用だ?」
……門の前で足止めされてしまった。
この時間の来客なんて怪しすぎるから、止めてなかったら大問題だけど……こういう時には無い方が助かるわね。
門を開けてもらうために、私は顔を見せようと馬から降りて、光の魔法で照らしながらこう口にした。
「私よ、フィリアと言えば分かるかしら?」
「フィリアお嬢様⁉︎ 暗くてお顔が見えなかったので気付きませんでした……」
申し訳なさそうにする門番に、私はこんな指示を出した。
「分かればいいのよ。門を開けてもらえるかしら?」
「それは出来ません。旦那様からお嬢様を入れてはいけないと指示されているので」
門番から告げられた衝撃的な言葉。護衛さん2人は空いた口が塞がらないようだった。
「もちろん理由はあるのよね?」
「ええ、お嬢様に聖女の威厳を損ねた罪と王族を侮辱した罪がかけられているからです。さっき早馬で知らせが来ました。
そういうわけで、いくら旦那様でもここにお嬢様を匿うことは出来ないそうです」
「そんな……」
私を大切にしてくれていたお父様が私を見捨てた。
その事実にショックを受けた私は、身体中から力が抜けたかのように地面に座り込んでしまった。
「お嬢様……! しっかりしてください! お嬢様……っ!」
普段ならとっくに眠っている時間の移動で体力が限界だったのもあって、私の頭の中は絶望に染まっていた。
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