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第21話 2人の決意と約束と
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数日後に王城で行われる婚約式に向けて、オーレルム家から3台の馬車が出発した。
1台はオズワルドが乗って来た豪華なものであり、レアル王国の紋章が刻まれている。
そして今回は王家の紋章が入った旗を掲げており、王族が居る事を表していた。
しかしその馬車に乗っているのはオズワルドでない。似た背格好の騎士とエストリアに扮した侍女が乗車していた。
では本人達はと言うと、オーレルム家の紋章が入った普通の馬車にエストリアと共に乗っている。
残る1台はオリバーとソフィアが乗る領主専用の馬車である。移動中を襲われる可能性を考慮しての対策であった。
「オズワルド、乗り心地は大丈夫ですか?」
「このぐらい問題はないさ」
「本当はもうちょっと良い馬車もあるのですが、露骨過ぎますし」
この構成ならば、普通は王族用か領主専用の馬車にオズワルドが居ると考える。本来であれば旅先で主人の世話をする為に同行する、侍女達が乗る普通の馬車は優先度が一番低い。
だがもし3台目を豪華な馬車にしてしまうと、構成としては露骨に怪しくなってしまう。偽装をしていますと言っている様なものだ。
対策はそれだけでなく、護衛の人数も通常より多くしている。普通の貴族がただ王都に向かうだけならば、馬車1台につき4人から6人の護衛がつく。
それを今回は3台で合計30人まで増やしている。ちょっとした部隊の域に到達しており、これを襲撃するのは相当な戦力が必要だ。
「さっさとケリをつけたい所だ」
「宰相を捕まえるのですよね!」
「それで済めば良いが……」
オズワルドの懸念はギリアム宰相だけではない。元々命を狙って来たのは2人の兄達の方なのだから。
完全に諦めてくれているのか、それはまだ分からない。オーレルム領に入ってからは、驚くほどに暗殺の手は伸びて来なかった。
しかしこうして宰相までも絡んで来た以上は、楽観的に考えるのは危険である。以前よりも激化していると想定した方が無難と言える。
それにこうして、オズワルドが自らを囮にする様な行動に出る事で凡そは判明する。
誰がどんな思惑で命を狙っているのか、王座を狙う激戦区に立てば見えてくると思われる。
敵が分からない状態が一番厄介であり、受けるストレスも段違いだ。これを機に、敵味方をハッキリとさせる意味もある。
「何があろうと、私が絶対に貴方を守ります!」
「それは頼もしいが、絶対に無理はしないでくれ。貴女に死なれては意味がない」
「私は結構頑丈ですから!」
「それでもだ。貴女を失いたくはない」
真剣な表情で懇願するオズワルドに、エストリアも流石に勢いを失う。彼女はここまで本気で、家族以外の人間に乞われた経験が無かった。
身を案じられた事はあるし、無事を祈られた事もある。だがオズワルド程の、大きな熱量を伴った懇願は知らない。
どこかへ行ってしまわない様に、繋ぎとめるかの様に強くエストリアの手を握るオズワルド。
それは所有欲の様なものとは違う、純粋な思いやる気持ちの表れだった。
傷ついた心を救ってくれたエストリアへの、強い感謝の念がその根底にある。
愛情と感謝が入り混じった本気の想いに、エストリアは真摯に応える事にした。
「約束します。私は必ずオズワルドの下へ帰ります」
「エストリア……」
「2人で領地に戻らねばなりませんから」
エストリアが守りたいもの、それは少し前まで領地と領民だった。でも今は少し変わっている。
エストリアの大切なものは家族と、オズワルドと共に暮らす領地だ。
元々の家族と、家族同然の領民達、そしてこれから正式な家族になるオズワルド。
その全てが欠けてはならないもの。そして大切な物を守る守護者として、自分が倒れてはならない事も理解している。
志半ばでエストリアが倒れてしまえば、その分守れた筈の命が失われてしまう。
そんな事はあってはならない、だからこその誓いである。その決意を受け取ったオズワルドは、優しく微笑んだ。
「そうだ。俺達はこんな所で死ぬ事を許されていない」
「はい、領地で皆が待っていますから」
「俺は何があっても生を諦めない。貴女を信じて投げ出さない。だからエストリア、君も俺を信じてくれ」
オズワルドにはエストリア程の戦闘力はない。しかしこれまで培ってきた努力がある。勝ち取って来た信頼がある。王子として出来る事は沢山あるのだ。
もしオーレルム領に理不尽な権力を振るわれても、オズワルドならば守る事が出来る。3番目とは言え王族に違いは無い。
例え誰が王になろうとて、その権威までは失われない。血を分けた兄達から命を狙われて、弱り果てていたオズワルドはもう居ない。
どう生きるのか、それが定まった事で迷いは無くなった。兄達と真っ向から対立する事があろうとも、これからは引いてやらない。
暗殺者を差し向ける様な無法を行う者達と、正面からぶつかる覚悟は完了している。
「例えどんな者が相手でも、二度とオーレルム領に手出しはさせない」
「2人で一緒に、全部を守りましょう!」
「ああ、全部だ!」
決意を新たにしたエストリアとオズワルドは、王都に向かう馬車に揺られて行く。レアル王国の王都リルカにて、どんな者達が暗躍していようとも全てなぎ倒す。
そんな強い意思を固めた2人が王都に入ったのはこの2日後であった。
1台はオズワルドが乗って来た豪華なものであり、レアル王国の紋章が刻まれている。
そして今回は王家の紋章が入った旗を掲げており、王族が居る事を表していた。
しかしその馬車に乗っているのはオズワルドでない。似た背格好の騎士とエストリアに扮した侍女が乗車していた。
では本人達はと言うと、オーレルム家の紋章が入った普通の馬車にエストリアと共に乗っている。
残る1台はオリバーとソフィアが乗る領主専用の馬車である。移動中を襲われる可能性を考慮しての対策であった。
「オズワルド、乗り心地は大丈夫ですか?」
「このぐらい問題はないさ」
「本当はもうちょっと良い馬車もあるのですが、露骨過ぎますし」
この構成ならば、普通は王族用か領主専用の馬車にオズワルドが居ると考える。本来であれば旅先で主人の世話をする為に同行する、侍女達が乗る普通の馬車は優先度が一番低い。
だがもし3台目を豪華な馬車にしてしまうと、構成としては露骨に怪しくなってしまう。偽装をしていますと言っている様なものだ。
対策はそれだけでなく、護衛の人数も通常より多くしている。普通の貴族がただ王都に向かうだけならば、馬車1台につき4人から6人の護衛がつく。
それを今回は3台で合計30人まで増やしている。ちょっとした部隊の域に到達しており、これを襲撃するのは相当な戦力が必要だ。
「さっさとケリをつけたい所だ」
「宰相を捕まえるのですよね!」
「それで済めば良いが……」
オズワルドの懸念はギリアム宰相だけではない。元々命を狙って来たのは2人の兄達の方なのだから。
完全に諦めてくれているのか、それはまだ分からない。オーレルム領に入ってからは、驚くほどに暗殺の手は伸びて来なかった。
しかしこうして宰相までも絡んで来た以上は、楽観的に考えるのは危険である。以前よりも激化していると想定した方が無難と言える。
それにこうして、オズワルドが自らを囮にする様な行動に出る事で凡そは判明する。
誰がどんな思惑で命を狙っているのか、王座を狙う激戦区に立てば見えてくると思われる。
敵が分からない状態が一番厄介であり、受けるストレスも段違いだ。これを機に、敵味方をハッキリとさせる意味もある。
「何があろうと、私が絶対に貴方を守ります!」
「それは頼もしいが、絶対に無理はしないでくれ。貴女に死なれては意味がない」
「私は結構頑丈ですから!」
「それでもだ。貴女を失いたくはない」
真剣な表情で懇願するオズワルドに、エストリアも流石に勢いを失う。彼女はここまで本気で、家族以外の人間に乞われた経験が無かった。
身を案じられた事はあるし、無事を祈られた事もある。だがオズワルド程の、大きな熱量を伴った懇願は知らない。
どこかへ行ってしまわない様に、繋ぎとめるかの様に強くエストリアの手を握るオズワルド。
それは所有欲の様なものとは違う、純粋な思いやる気持ちの表れだった。
傷ついた心を救ってくれたエストリアへの、強い感謝の念がその根底にある。
愛情と感謝が入り混じった本気の想いに、エストリアは真摯に応える事にした。
「約束します。私は必ずオズワルドの下へ帰ります」
「エストリア……」
「2人で領地に戻らねばなりませんから」
エストリアが守りたいもの、それは少し前まで領地と領民だった。でも今は少し変わっている。
エストリアの大切なものは家族と、オズワルドと共に暮らす領地だ。
元々の家族と、家族同然の領民達、そしてこれから正式な家族になるオズワルド。
その全てが欠けてはならないもの。そして大切な物を守る守護者として、自分が倒れてはならない事も理解している。
志半ばでエストリアが倒れてしまえば、その分守れた筈の命が失われてしまう。
そんな事はあってはならない、だからこその誓いである。その決意を受け取ったオズワルドは、優しく微笑んだ。
「そうだ。俺達はこんな所で死ぬ事を許されていない」
「はい、領地で皆が待っていますから」
「俺は何があっても生を諦めない。貴女を信じて投げ出さない。だからエストリア、君も俺を信じてくれ」
オズワルドにはエストリア程の戦闘力はない。しかしこれまで培ってきた努力がある。勝ち取って来た信頼がある。王子として出来る事は沢山あるのだ。
もしオーレルム領に理不尽な権力を振るわれても、オズワルドならば守る事が出来る。3番目とは言え王族に違いは無い。
例え誰が王になろうとて、その権威までは失われない。血を分けた兄達から命を狙われて、弱り果てていたオズワルドはもう居ない。
どう生きるのか、それが定まった事で迷いは無くなった。兄達と真っ向から対立する事があろうとも、これからは引いてやらない。
暗殺者を差し向ける様な無法を行う者達と、正面からぶつかる覚悟は完了している。
「例えどんな者が相手でも、二度とオーレルム領に手出しはさせない」
「2人で一緒に、全部を守りましょう!」
「ああ、全部だ!」
決意を新たにしたエストリアとオズワルドは、王都に向かう馬車に揺られて行く。レアル王国の王都リルカにて、どんな者達が暗躍していようとも全てなぎ倒す。
そんな強い意思を固めた2人が王都に入ったのはこの2日後であった。
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