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*WEB連載版
第36話 コーヒーを飲みながら
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あー、落ち着くー……。コーヒーの香りって、たまらないわぁ~。
味だって最高。甘くて苦くてちょっと酸っぱくて、それでミルクのコクもあって……。はぁ、何杯だって飲めちゃうわ。
なんてコーヒーをたしなんでいる内にだんだん冷静になってきて、私は改めて疑問を口にした。
「殿下、あの。ところで……婚約って……」
「ああ。まだ兄貴にも報告してないのにこんなパーティー催されるのもどうかと思ったんだけど、ロゼッタたちがどうしても祝いたいってさ」
と嬉しそうに舞台上に視線を向けるルベルド王子。
舞台上では、ロゼッタさんとクライヴくんが素手で戦い合っていた。
といってもロゼッタさんは軽い身のこなしでクライヴさんをいないしているだけから、なんだか二人でダンスしているみたいだけど。
「ありがたいよ、実際。こんないい加減な主人なのに慕ってくれてさ……。あいつらの期待に応えられるように頑張らないとな」
ルベルド殿下はそんなことを呟いている。こういうところはちゃんと王子様してるなぁ、なんて思う。
でも本題はそこじゃないのよ。
「あの……」
「ん?」
「お聞きしたいんですけど、あの、婚約って……」
「だから、アデライザ先生と俺の婚約のことだよ。この前プロポーズしただろ」
殿下に直接言われて、
(…………………………あっ)
私の脳裏におぼろげな記憶が蘇った。
『結婚しような、アデライザ……』
『うん、するぅ。私、ルベルドと結婚するぅ……』
「あ、あの、あれ…………………………」
カアアアアアッ、と顔が熱くなる。
そうだ、確かにそんな会話をしたわ。でもあれってルベルド殿下との行為が終わったときの自失状態の睦言みたいなものじゃなかったっけ!?
「あ、あの、あのですね、殿下……!?」
「あのときは嬉しかったなぁ。まさか先生が受けてくれるとは思ってなくてさ。先生ってずーっと生徒だの第三王子だのにこだわってたからね」
ふふふ、とルベルド殿下はイタズラっぽく笑った。
「ま、でも先生はOKしてくれたからね。その気が変わらないうちにじわじわ詰め寄っていって速攻で囲い込みしようってね」
「え……」
じゃ、じゃあロゼッタさんに婚約のことを教えたのも囲い込みの一環ってこと……?
「囲い込み作戦、その2。俺からの贈り物」
私の隣に座っているルベルド殿下は、笑いながら小箱を取り出した。それをぱかり、と開ける。
中には、ダイヤが輝くシンプルな指輪が入っていた。
「こ、これは……」
「受け取ってくれるかな、アデライザ」
うわぁ。なんか、なんというか。すごい。この人、すっごい。
「お手を……そう、左手を頂戴できますか、お姫様」
キザっぽく紅い瞳をニヤけさて私の手を取ると、殿下は指輪を薬指に嵌めてくれた。サイズ、ピッタリ。
「……ありがとうございます」
嬉しいのか恥ずかしいのか悔しいのかよくわからないまま礼を言うと、ルベルド殿下は微笑んだ。
「よかった。ここにきて断られたらさすがに立ち直れなかったわ」
ははは、と笑う殿下。……どうしよう。私、こういうときどんな顔をすればいいのか分からない。
とりあえず、私はコーヒーを口にして……。
ああ、そういえばあのときもコーヒーを飲んでいたんだった、と思いだした。
元婚約者のダドリー様に婚約破棄を言い渡されたときのことだ。信じていたものがガラガラと音を立てて崩れ落ちていった、あの日。
カフェでダドリー様とコーヒーを飲んでいたら、お前の妹のイリーナを妊娠させた、とかいわれて。
それでイリーナが来て……。
「…………」
なのにいま、私の左手の薬指には愛する人が嵌めてくれた指輪が光っている……。
「アデライザ? どうした?」
「え……?」
「……泣いてる」
「え」
ルベルド殿下に言われて目元に手をやると、確かに私は泣いていた。
どうしてだろう。気づいてしまったら涙が止まらない。
自分でもよくわからないんだけど涙が溢れてきてしまう……。
味だって最高。甘くて苦くてちょっと酸っぱくて、それでミルクのコクもあって……。はぁ、何杯だって飲めちゃうわ。
なんてコーヒーをたしなんでいる内にだんだん冷静になってきて、私は改めて疑問を口にした。
「殿下、あの。ところで……婚約って……」
「ああ。まだ兄貴にも報告してないのにこんなパーティー催されるのもどうかと思ったんだけど、ロゼッタたちがどうしても祝いたいってさ」
と嬉しそうに舞台上に視線を向けるルベルド王子。
舞台上では、ロゼッタさんとクライヴくんが素手で戦い合っていた。
といってもロゼッタさんは軽い身のこなしでクライヴさんをいないしているだけから、なんだか二人でダンスしているみたいだけど。
「ありがたいよ、実際。こんないい加減な主人なのに慕ってくれてさ……。あいつらの期待に応えられるように頑張らないとな」
ルベルド殿下はそんなことを呟いている。こういうところはちゃんと王子様してるなぁ、なんて思う。
でも本題はそこじゃないのよ。
「あの……」
「ん?」
「お聞きしたいんですけど、あの、婚約って……」
「だから、アデライザ先生と俺の婚約のことだよ。この前プロポーズしただろ」
殿下に直接言われて、
(…………………………あっ)
私の脳裏におぼろげな記憶が蘇った。
『結婚しような、アデライザ……』
『うん、するぅ。私、ルベルドと結婚するぅ……』
「あ、あの、あれ…………………………」
カアアアアアッ、と顔が熱くなる。
そうだ、確かにそんな会話をしたわ。でもあれってルベルド殿下との行為が終わったときの自失状態の睦言みたいなものじゃなかったっけ!?
「あ、あの、あのですね、殿下……!?」
「あのときは嬉しかったなぁ。まさか先生が受けてくれるとは思ってなくてさ。先生ってずーっと生徒だの第三王子だのにこだわってたからね」
ふふふ、とルベルド殿下はイタズラっぽく笑った。
「ま、でも先生はOKしてくれたからね。その気が変わらないうちにじわじわ詰め寄っていって速攻で囲い込みしようってね」
「え……」
じゃ、じゃあロゼッタさんに婚約のことを教えたのも囲い込みの一環ってこと……?
「囲い込み作戦、その2。俺からの贈り物」
私の隣に座っているルベルド殿下は、笑いながら小箱を取り出した。それをぱかり、と開ける。
中には、ダイヤが輝くシンプルな指輪が入っていた。
「こ、これは……」
「受け取ってくれるかな、アデライザ」
うわぁ。なんか、なんというか。すごい。この人、すっごい。
「お手を……そう、左手を頂戴できますか、お姫様」
キザっぽく紅い瞳をニヤけさて私の手を取ると、殿下は指輪を薬指に嵌めてくれた。サイズ、ピッタリ。
「……ありがとうございます」
嬉しいのか恥ずかしいのか悔しいのかよくわからないまま礼を言うと、ルベルド殿下は微笑んだ。
「よかった。ここにきて断られたらさすがに立ち直れなかったわ」
ははは、と笑う殿下。……どうしよう。私、こういうときどんな顔をすればいいのか分からない。
とりあえず、私はコーヒーを口にして……。
ああ、そういえばあのときもコーヒーを飲んでいたんだった、と思いだした。
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カフェでダドリー様とコーヒーを飲んでいたら、お前の妹のイリーナを妊娠させた、とかいわれて。
それでイリーナが来て……。
「…………」
なのにいま、私の左手の薬指には愛する人が嵌めてくれた指輪が光っている……。
「アデライザ? どうした?」
「え……?」
「……泣いてる」
「え」
ルベルド殿下に言われて目元に手をやると、確かに私は泣いていた。
どうしてだろう。気づいてしまったら涙が止まらない。
自分でもよくわからないんだけど涙が溢れてきてしまう……。
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