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第1章
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しおりを挟む昨日思いついた従業員を雇う件について思い立ったが吉日ということで、早速本屋さんのおじいさんのところへ向かう。
「おじいさん、聞きたいことがあるんですが……。」
「おや、なんじゃ。」
「従業員ってどこで探しましたか?」
「そもそもユーリは従業員の種類について知っておるのか?」
「種類……?」
「知らんようだな。
まずは臨時従業員や個人契約の従業員じゃな。
個人的に契約して雇うか、商業ギルドを通して全ギルドで募集をかけるんじゃ。
わしは基本ひとりで商売できるが、本の運搬などは重いからこの形で雇っとる。
メリットは紹介手数料が少なく、安価で雇える。
デメリットは当たり外れがあるし個人で雇うなら伝手がないと難しいことじゃな。
雇ったらきちんと商業ギルドに届けないとならんぞ。
そして一般的な従業員。
自分のスキルを活かして雇ってもらう。
これは雇い主が属しているギルドを通して募集する。
雑貨屋などはこの形で雇っておったな。
メリットはスキルがあるものをきちんと確保することができるし関係性や距離感を調整しやすい。
デメリットはもうスキルが使える者を雇うから給料は少し高めになるし、ギルドに払う紹介手数料が高い。
最後は親子従業員。
孤児院や恵まれない子どもを雇って面倒を見つつ働いてもらう。
工房などはこの形を取ることが多いな。
メリットは紹介手数料がないことと、安く雇えて世間的な信用も高くなる。
デメリットはスキルから育てなければならないから使いものになるには時間がかかるし、成人を迎えたときに違う道に進みたいと言われてしまえば、雇用主は拒否できないから今まで育てた苦労が水の泡になってしまうことじゃな。」
「私なら、2番目か3番目で選ぶしかないですね。」
教えてもらったことへのお礼といつも利用してくれている感謝の気持ちを込めて余ったお菓子の詰め合わせを渡した。
瓶のお礼も兼ねて雑貨屋さんにもお菓子の詰め合わせを渡して商業ギルドへ向かう。
受付から料理のスキルを持っていて仕事を探している人の一覧を借りたが、なんだかピンと来るものがなかった。
そもそも料理のスキルを活かして仕事にって思う人は少ないようだ。
料理は生活に基づくスキルだからそれよりも貴重なスキルを持っていればそれを活かして仕事を探すのだろう。
「すみません……。」
商業ギルドで教えてもらった孤児院の門を叩く。
孤児院は大きな教会に併設されていて基本教会が管理しているからここらへんにはひとつしかなかった。
「はいはい、どうされました?」
ふくよかな女性が俺を迎えてくれた。
なんだか幼稚園や保育園の先生を思い出すなぁ。
この包み込んでくれる感じが。
「あの……私カフェを営んでおりまして……もし料理に興味がある子がいれば雇い入れたいのですが……。」
「……ここの子を雇い入れるということはどういうことかお分かりですか?」
「従業員になってもらうと同時に育て上げると話を聞いております。」
「ここに来る子は戦争孤児、天涯孤独となってしまいここへ来た子、親に捨てられてしまった子……みんな事情を抱えてここに来ます。
大小様々ですが、辛い思いをしてきた子たちです。
これから先の人生は少しでも幸せだと本人が思ってほしいと私たちは思っております。
従業員という立場ですから家賃や食事代をお給料から天引きされるのはいいでしょう。
でも従業員という立場だけではなく、親のように、兄のように導いてあげて欲しいのです。
彼らが飢えている愛情を注いであげて欲しいのです。
そういう覚悟がある方にしか親子契約はさせておりません。」
女性が話すその瞳はどこまでも真摯でここで従業員を探すことにした。
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