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第1章 一夜の過ちの相手と再会!?
4.その話題になるとは思っていたけれど、しないでほしい
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息があがらない程度の早歩きで、話をしながら歩いていく。
少しずつ、三阪屋さんは息が上がって遅れがちになっていった。
「三阪屋さん、頑張りましょう!
きっとゴールに冷たいビールが」
「待ってないけどな」
しれっとトドメを刺してくるミツミさんをじろっと睨む。
しかもちょっと姿が見えないな、と思ったら、ミツミさんとSMOOTHさんの手にはお団子なんか握られちゃっているし。
ぱしぱし携帯でその写真を撮る皆にあわせて私も撮る。
他の人はツイートをはじめたけど、私は近くに自販機を見つけてスポーツドリンクを買いに行った。
「ず、狡いな、ミツミさん。
買い食い、とか。
今日の趣旨に、反してないですか」
戻ってきたら、息も絶え絶えに三阪屋さんが抗議していた。
「三阪屋さん、どうぞ」
「あ、ありがとう」
買ってきてあげた冷たいスポーツドリンクを受け取り、三阪屋さんがごくごくと勢いよく喉に流し込む。
「趣旨に反してないかって、だって俺もSMOOTHサンも、体重ちっとも増えてないし。
ねー、SMOOTHサン?」
「オレ、いくら食っても太らない体質なんですよ」
団子のCMに使えそうなくらい爽やかな笑顔で、SMOOTHサンはぱくりと団子を口に入れた。
「えー、うらやましい。
私なんて500グラムも増えたのに」
「500グラム!?」
サガさん、それって増えたうちに入らないのでは……?
ん?
ちょっと待って。
今日いる五人でダイエットが必要なのって、私と三阪屋さんだけ……?
「ちなみにカイザージムちゃんはどれくらい増えたの?」
「うっ」
四人の視線が集中する。
そりゃ、訊かれるかな、とは思っていたけど。
「あ、女性にそんなことを訊くのは失礼ですよね。
じゃあ、僕が。
僕は……」
「三阪屋には訊いてない。
どうせ五キロ太ったんでしょ」
せっかく三阪屋さんが出してくれた助け船に、サガさんが速攻で攻撃を加えた。
「ど、どうしてわかったんですか……」
しかも、急所に命中、撃沈しているし。
「カイザージムちゃんはどれくらい増えたの?
ちなみにお姉さんはそこの健康馬鹿と違ってカイザージムちゃんくらい、ふっくらしている方が好みよ?」
これは多少思いもよらないような重量でも大丈夫よ、というフォローなんだろうか。
そこまでされて言わないわけにもいかず、渋々口を開く。
「……に、二キロ、……です」
あまりの恥ずかしさに顔は熱を持ち、言葉は尻すぼみになって消えていく。
なのに。
「元の体重が何キロで二キロ増えたんだよ?
見た目からいっていまが54,5ってとこか」
「ぐっ」
ミツミさんにズバリ、当てられた。
この人には三阪屋さんくらいの気遣いはないのか!?
「……ど、どうせデブだって思ってるんですよね」
彼の、私を散々、デブ、デブと罵った声がよみがえってきて、固く唇を噛んだ。
「別に?
その身長の理想体重からしたらちーっと重いんだろうけど、正常の範囲内だし。
三阪屋さんみたいにデブじゃねーよ」
「うっ」
三阪屋さんが胸を押さえてよろよろと地面に倒れ、ちょっと気の毒だ。
「そうよー、カイザージムちゃんはデブなんかじゃないわー。
健康的にふっくらで可愛いもの」
ぷにぷにと私の頬をつつく、サガさんの指がくすぐったい。
「それにきっと、今日の運動で増えた二キロくらい減りますしね!」
SMOOTHさんがさらに元気づけてくれて、ここ何日かささくれ立っていた心が少し、癒やされた。
十キロ、二時間ちょいの道のりはさすがにちょっときつかった。
「皆さん、何歩になりました?」
私の歩数計は一万五千歩を超えていた。
一番少ないミツミさんが一万二千歩ほどで、身長がこれだけ違うとこんなに差が出るんだ。
歩数計の写真や、サガさんのハイヒールの写真を撮らせてもらう。
凄くない!?
結局、十キロをサガさんは平気な顔してハイヒールで歩ききったんだよ!?
「このあと、僕は直帰なんでSMOOTHさんと飲みに行きますけど、皆さんはどうします?」
「あ、私行くー」
「僕もー」
サガさんと三阪屋さんはすぐに手を上げた。
残る私に自然と視線が集まる。
「すみません、私、戻って報告しないといけないので」
悔しい気持ちでいっぱいであたまを下げた。
私だって皆と、飲みに行きたい。
……ミツミさんは置いておいて。
「仕事なら仕方ないな。
じゃ、お疲れ、カイザージムさん」
「カイザージムさん、お疲れ様でした」
「気をつけて帰ってくださいね」
「お疲れ、カイザージムちゃん。
今度個人的に、ふたりで飲みましょ?」
最後に私へ投げキッスをしたサガさんたちを苦笑いで見送り、私も駅へと向かう。
定時を過ぎて戻った会社ではすでに、大石課長は帰ったあとだった。
「今日中に報告の意味ないよねー……」
パソコンを立ち上げ、報告書を作る。
そのあと、クラウド保存していた画像を選び、今日のことをツイートする内容を考えていく。
本当なら皆と一緒でリアルタイムでツイートしたかった。
でも私がツイートするにはどんな一言でも許可がいる。
別に、それがダメだっていうわけじゃない。
そういう会社も存在するし。
けれど明確な運用方針もなく丸投げなのに、なにもできないようにガチガチに縛って文句だけ言うのは間違っている……と、思う。
うん、はっきり私がそう言えたらいいんだけど、いまの私には意見を出す勇気がなくてできない。
少しずつ、三阪屋さんは息が上がって遅れがちになっていった。
「三阪屋さん、頑張りましょう!
きっとゴールに冷たいビールが」
「待ってないけどな」
しれっとトドメを刺してくるミツミさんをじろっと睨む。
しかもちょっと姿が見えないな、と思ったら、ミツミさんとSMOOTHさんの手にはお団子なんか握られちゃっているし。
ぱしぱし携帯でその写真を撮る皆にあわせて私も撮る。
他の人はツイートをはじめたけど、私は近くに自販機を見つけてスポーツドリンクを買いに行った。
「ず、狡いな、ミツミさん。
買い食い、とか。
今日の趣旨に、反してないですか」
戻ってきたら、息も絶え絶えに三阪屋さんが抗議していた。
「三阪屋さん、どうぞ」
「あ、ありがとう」
買ってきてあげた冷たいスポーツドリンクを受け取り、三阪屋さんがごくごくと勢いよく喉に流し込む。
「趣旨に反してないかって、だって俺もSMOOTHサンも、体重ちっとも増えてないし。
ねー、SMOOTHサン?」
「オレ、いくら食っても太らない体質なんですよ」
団子のCMに使えそうなくらい爽やかな笑顔で、SMOOTHサンはぱくりと団子を口に入れた。
「えー、うらやましい。
私なんて500グラムも増えたのに」
「500グラム!?」
サガさん、それって増えたうちに入らないのでは……?
ん?
ちょっと待って。
今日いる五人でダイエットが必要なのって、私と三阪屋さんだけ……?
「ちなみにカイザージムちゃんはどれくらい増えたの?」
「うっ」
四人の視線が集中する。
そりゃ、訊かれるかな、とは思っていたけど。
「あ、女性にそんなことを訊くのは失礼ですよね。
じゃあ、僕が。
僕は……」
「三阪屋には訊いてない。
どうせ五キロ太ったんでしょ」
せっかく三阪屋さんが出してくれた助け船に、サガさんが速攻で攻撃を加えた。
「ど、どうしてわかったんですか……」
しかも、急所に命中、撃沈しているし。
「カイザージムちゃんはどれくらい増えたの?
ちなみにお姉さんはそこの健康馬鹿と違ってカイザージムちゃんくらい、ふっくらしている方が好みよ?」
これは多少思いもよらないような重量でも大丈夫よ、というフォローなんだろうか。
そこまでされて言わないわけにもいかず、渋々口を開く。
「……に、二キロ、……です」
あまりの恥ずかしさに顔は熱を持ち、言葉は尻すぼみになって消えていく。
なのに。
「元の体重が何キロで二キロ増えたんだよ?
見た目からいっていまが54,5ってとこか」
「ぐっ」
ミツミさんにズバリ、当てられた。
この人には三阪屋さんくらいの気遣いはないのか!?
「……ど、どうせデブだって思ってるんですよね」
彼の、私を散々、デブ、デブと罵った声がよみがえってきて、固く唇を噛んだ。
「別に?
その身長の理想体重からしたらちーっと重いんだろうけど、正常の範囲内だし。
三阪屋さんみたいにデブじゃねーよ」
「うっ」
三阪屋さんが胸を押さえてよろよろと地面に倒れ、ちょっと気の毒だ。
「そうよー、カイザージムちゃんはデブなんかじゃないわー。
健康的にふっくらで可愛いもの」
ぷにぷにと私の頬をつつく、サガさんの指がくすぐったい。
「それにきっと、今日の運動で増えた二キロくらい減りますしね!」
SMOOTHさんがさらに元気づけてくれて、ここ何日かささくれ立っていた心が少し、癒やされた。
十キロ、二時間ちょいの道のりはさすがにちょっときつかった。
「皆さん、何歩になりました?」
私の歩数計は一万五千歩を超えていた。
一番少ないミツミさんが一万二千歩ほどで、身長がこれだけ違うとこんなに差が出るんだ。
歩数計の写真や、サガさんのハイヒールの写真を撮らせてもらう。
凄くない!?
結局、十キロをサガさんは平気な顔してハイヒールで歩ききったんだよ!?
「このあと、僕は直帰なんでSMOOTHさんと飲みに行きますけど、皆さんはどうします?」
「あ、私行くー」
「僕もー」
サガさんと三阪屋さんはすぐに手を上げた。
残る私に自然と視線が集まる。
「すみません、私、戻って報告しないといけないので」
悔しい気持ちでいっぱいであたまを下げた。
私だって皆と、飲みに行きたい。
……ミツミさんは置いておいて。
「仕事なら仕方ないな。
じゃ、お疲れ、カイザージムさん」
「カイザージムさん、お疲れ様でした」
「気をつけて帰ってくださいね」
「お疲れ、カイザージムちゃん。
今度個人的に、ふたりで飲みましょ?」
最後に私へ投げキッスをしたサガさんたちを苦笑いで見送り、私も駅へと向かう。
定時を過ぎて戻った会社ではすでに、大石課長は帰ったあとだった。
「今日中に報告の意味ないよねー……」
パソコンを立ち上げ、報告書を作る。
そのあと、クラウド保存していた画像を選び、今日のことをツイートする内容を考えていく。
本当なら皆と一緒でリアルタイムでツイートしたかった。
でも私がツイートするにはどんな一言でも許可がいる。
別に、それがダメだっていうわけじゃない。
そういう会社も存在するし。
けれど明確な運用方針もなく丸投げなのに、なにもできないようにガチガチに縛って文句だけ言うのは間違っている……と、思う。
うん、はっきり私がそう言えたらいいんだけど、いまの私には意見を出す勇気がなくてできない。
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