前世の婚約者ってなんですか?~溺愛御曹司と甘い現世生活~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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エピローグ また会えたね、僕の可愛いお姫様

2.また会えたね、僕のお姫様

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翌日は私たちを祝福するかのように青空が広がった。
今日の参列者は私の方も清人の方も家族だけ。
身内だけでって希望を叶えてくれた。

「すずちゃん、綺麗ね」

私のウェディングドレス姿を喜ぶ母は、黒留袖姿。
帯の中央にはもちろん、昨日、清人からプレゼントされたレースの帯締めが結んである。

「ほんと、馬子にも衣装とか言うもんな。
……いてっ」

「うっさい、温人」

つい、私が温人のあたまを叩けば周囲から笑いが起きた。
今日の私はレースのボートネックの上半身に、スカートは一見シンプルだけど後ろ部分が大きく開いており、そこからロングトレーンのレースが覗くようになっている。
ドレスショップで清人と同時に選んだのがこれだった。

「ほんと、涼鳴姉さん綺麗ですよ」

早朝に着いたというわりに元気な流人さんは、相変わらずのレインボーマッシュルームあたまだったけど、さすがにタキシードだった。
それでも着こなしてしまう辺り、凄いなって思う。

「いつも大変お世話になっております」

「いえいえ、こちらこそ」

トネールデザインの社長に就任したものの、光志さんほどのつてのない私はなかなか新しい仕事を得ることができなかった。
話を聞いた流人さんが自分の会社の仕事を回してくれて、おかげでまた、少しずつ受注も増えてきてなんとかやれるようになってきている。
本当に流人様々なのだ。

「本当に綺麗よ、涼鳴さん」

「ありがとうございます、お義母さん」

和装での式希望のお義母さんは、式はヨーロッパの古城で、なんて言ったら拗ねちゃって大変だった。
でも、和装で式を挙げた風の写真を撮ろうって提案したら納得してくれた。

「ねえ、あなた。
私ももう一度、ウェディングドレスを着たいわ」

「そうだな」

近いうちに本当にそれを実行しそうなお義父さんは、清人が跡を継がないことについて微塵も気にしていない。
子供の未来は子供のもの、という考え方は凄く素敵だ。
将来、私たちの子供にもそういう未来を選ばせてあげたい。

会社の後継者は同族にはこだわらず、実力のあるものに譲るとお義父さんは最近、宣言を出した。
それでもまだ、柴山専務は虎視眈々とその座を狙っているらしいけど。

その一環なのか愛子さんは、大物政治家の息子との結婚を決めた。
……たださー、その政治家、いつもワイドショーを賑わす最低な奴なんだよね。
しかもその息子も父親にそっくりっていう噂で。
類は友を呼ぶって言うのかな。
でも愛子さんとしては、清人よりもずっと上流階級の人間と結婚できるって大満足らしからいいか。

城内の広間にひかれた、赤い絨毯の上を、父に腕を取られて進んでいく。
私にとって同じ人と同じ場所で挙げる、二度目の式。
あの日の私が見たらびっくりするのかな。

祭壇の前には、タキシードの清人が待っている。
オーソドックスな黒タキシードだけれど、清人のサイズにあわせてぴったりフィットしているからスタイルを引き立てる。
さらにこの日のために作った細めの銀縁眼鏡でオールバックスタイルだよ?
格好良くない方がおかしい。

清人に私を託し、父は力強く頷いた。
清人もそれに頷き返す。
ふたりで祭壇の前に並べば、厳かに式がはじまった。

「では、誓いのキスを」

清人とかわす誓いの口付け。
あのときは唇が触れる寸前に、敵襲来の知らせが舞い込んできたんだっけ。

唇が離れ、見つめあう。
身体の中に収まりきれない幸せが涙になって一粒、落ちていった。

みんなから祝福され、清人と腕を組んで退場する。

「……今回は邪魔されなくてよかったね」

「え?」

思わず、清人の顔を見てしまう。

「やっと会えたね、僕の可愛いお姫様」

小さく、口もとだけで清人が笑う。
ねえ、それって――。


【終】
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感想 2

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みんなの感想(2件)

景綱
2020.01.09 景綱

凄く強引な父親ですね。
けど、完全に論破されちゃいましたね。
面白い展開ですよね。

2020.01.10 霧内杳/眼鏡のさきっぽ

ありがとうございます。
結局、お父さんには勝てないのです(笑)

解除
景綱
2020.01.07 景綱

最初の夢が気になりますね。
今後の展開に関係ありそうですよね。

いろいろと想像してしまいました。

2020.01.08 霧内杳/眼鏡のさきっぽ

ふふ。
今後、夢がどう絡んでくるのか乞うご期待です。

解除

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