【完結済】VRMMORPGのNPCに転生したオレとプレイヤーのあいつの道は交わらない

豆の助

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過去2

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真っ白な部屋で大の字で寝転がりながら、大きな瞳から涙をこぼす柊の顔を思い出す。

  (守れたけど、泣かせちゃったな~)

「なぁなぁ、柊ってあのあと怪我とかしてないかな~?」

『気になるなら自分の目で確かめたらいい』

「そっか~ そうだよな~ うんありがとじいちゃん、自分で確かめるよ」


◇ ◇ ◇


身体が1ミリも動かない

目のまわりに全集中してなんとか薄目をあける

「朔!!朔!」

母さんの声が聞こえて、ゆっくり口を動かすけど、声がうまく出せないや。

「しゅ…だじょ…ぶ?」

「柊くんは大丈夫よ、あっ、先生、先生呼ばなきゃ」

ワタワタと動く母さんの気配を感じながら、オレは目を閉じた。

  (柊無事だったんだよかった)

その後、また意識を手放したオレが目を覚ましたのは、桜が散って、柊の入学式が終わったあとだった。

色んな人がお見舞いに来てくれて、泣かれたりした。

目覚めて一番、オレが「柊は?」って聞いたから、すぐに連絡してくれて、泣きながら面会に来てくれた。

入り口で「ごべんなさーぃ」って謝る柊の顔がよく視えなくて、近くに寄ってもらってその手をギュッと握ると、

「柊が無事でよかった」

って笑顔で伝えて。

ちょっと痩せた柊に

また一緒にバスケしたいからいっぱい食べていっぱい練習しろよー
とか色々言った気がする。
周りの大人たちがすすり泣く声が聞こえたけど、その表情はわからなかった。

◇ ◇ ◇

結果的に、オレは事故で、視力がものすごーく悪くなって、脚もあまり動かなくなっていた。

前みたいにバスケ、出来ないんだってさ。

でも、オレ、柊を助けて事故ったこと後悔してない。

なんか、オレ、約5ヶ月間眠ってる間も、「しゅう、しゅう」ってうわ言が煩かったらしい。はっずかし~。まぁオレの柊への溺愛はみんな知ってることだけど。

目覚めてから

「もうあんなむちゃしないで」
って母さんに泣かれたけど、
「同じことがあっても、何度でも柊を助ける」
って言っちゃって、まぁさらに母さんにさらに泣かれたり。

オレがそんなんだから、オレの怪我の原因になった(って言っても悪いのはトラックだけど)柊ともそれからも会うことに誰も何も言わなかったし。「申し訳ない」って謝罪続ける佐藤家と我が家の繋がりも切れなかったし。去年の夏に付き合いはじめた兄ちゃんと柊の姉ちゃんも破局しなかった。

ただ、柊だけはいつまでもオレを見るたび泣くし、車いす押しながら泣くし、で、こりゃ、オレが歩けるようになればいいんじゃねって、小学校3年生ながら考えて、リハビリめちゃ頑張った。

途中で、リハビリで有名な隣の県の病院に転院して、事故から1年経つ頃には杖を使えば歩けるようにまで回復したんだ。

その間に、その病院のある市内に、脚が悪いオレでも過ごしやすい新しい家を建ててくれてて、その市ってのが福祉が充実してて、ユニバーサルデザインの学校なんかも多くて、多分、父さんも母さんもそれ見越してこの病院に転院させてくれたのかな?

んで退院と同時にオレは柊のお隣さんじゃなくなった。

柊もいつの間にかオレの前で泣かなくって、
「さくちゃんの夢だった、バスケットボールでオリンピックを僕がかなえる」
とか、かっこいいこと言うようになってさ。

お隣さんじゃなくなって、昔より会う時間も減ったけど、お互いが大事なのは変わらなくて。オレのリハビリに柊が付き合ってくれたり、柊の試合を俺が観に行ったり。

2人乗せ自転車を両家が買ったみたいに、両家が車を車いす乗せられるようにオレ仕様にしてくれたんで、長い休みは一緒に遊びにいったりもした。

今は杖が必要だけど、これ杖なく歩けるようになったら、もっと周りハッピーじゃね?なんて単純に考えてさらに頑張って。
周りはオレに無理して欲しくなくてハラハラしてたのにも気づかず。

小学校6年生になったとき、自分の部屋で杖無しで少し歩けるようになったオレは、今度試合観に行った時に柊を驚かしてやろう!ってシシシってベッドの上で一人、驚く柊の顔を思い浮かべて、笑うのであったりもした。ちょうど柊の誕生日だし、すごい誕生日プレゼントできるじゃんって、大興奮。

柊は思った通り、すっごくびっくりして、大きな目をさらに大きくして、(大成功!)なんて心の中で拍手したんだけど、その場でよろけたオレを助けようとして無理な体勢になった柊が足首ひねって、試合に出られなくて、エース不在でチームが負けて。

柊が病院行ってる間に、柊のチームメイトにめちゃ責められた。

オレが悪いのはわかってるから、それを静かに聞いてたんだけど、
今までも、オレが観に来て立ち上がったりするたびに、柊の気が散って迷惑かけてたとか、知らなかったこと色々言われて。

そこで、自分が頑張ればみんな喜ぶわけじゃないんだ、って、無理することがいいことじゃないって思って。

無理に歩こうとするより、杖を使ってきちんと歩く練習をしたり、疲れた日は車いす使ったり。
オレが住む市内のバスケ強豪校に進学しようかなって柊が言うから、オレも2年先にその学校行こうと思ってたけど、親がすすめる支援が手厚い学校に進学することに決めた。

柊の試合も、バリアフリーじゃない会場の時には無理に観に行かず、オレが観に行ったらチームメイトがイライラしてるの気づいてからは、なんやかや理由をつけてほとんど観に行かなくなった。

そのことを柊が、どう思ってたかわからないけど、オレの中学校入学祝いに、今まで貯めてたお年玉使って、好きなバスケチームの模様が入った杖をプレゼントしてくれてた。
その後もオレの成長とともに杖をプレゼントしてくれて、それらは使えなくなっても宝物としてクローゼットに入っているんだ。

そう、あの時落とした杖も凄く大事で、あれ、どうなったんだろうな。
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