10 / 84
【編入初日は出会いイベントてんこ盛りですね】
お願いがあるんだけど
しおりを挟む
役立たずになったかつらは、鞄の中につっこんでおく。
私とアウレウスは、先導してくれる学園長たちの後ろを並んでついて歩いた。
「もうよろしいんですか? 今朝はあんなにこだわってらしたのに」
顔を近づけて、こそ、と小さな声でアウレウスが聞いてきた。確かに、出る前に「かつらはやめた方がよろしいのでは?」って言ってたっけ。
「うん、もういいんだ……役立たずになっちゃったし」
「ふふ、そうですか」
顔を近づけたままのアウレウスを、押しのけておく。媚びるのを止めたらしいけど、距離感は近いんだよな、この人。見習いとはいえ神官様を押しのけるとか、本当はバチ当たりなんだろうけど、そうでもしないとずっと距離が近いから仕方がない。
「では、少し整えませんとね」
私の髪をアウレウスがするりと指に絡めてとかしてくる。
「えっ変になってた!? 自分でやるよ!」
ボサボサになっていたらしい髪を自分で整えると、アウレウスは私の髪を一筋すくって口づける。
「お綺麗ですよ」
「ひぇ……」
この人、愛妾はやめるとか言ってたけど、本当は諦めていないんじゃないの? 私は自分の髪をひっぱって取り戻し、アウレウスの顔をとりあえず押しのけておいた。
しかし、かつらという秘策をもってしても、バシレイオスとのフラグが回避できなかったのはショックだなあ。今後最大限避けようとしても、他の攻略対象との最初の出会いとかのイベントは発生してしまう可能性があるもん。
逆ハーレムルートがノーマルエンドのゲームに即してるとすれば、バシレイオスが私にアプローチしてきたとしても、多分他の攻略対象もそんなの関係なく私にアプローチをしてくるはず……。我ながら「自分がイケメンに口説かれる前提」っていうのを考えてると、本当に私の妄想なんじゃないか、頭おかしいのではと思ってしまう。
……うっ。自分で突っ込んでいて辛い。でも他の女の子から彼氏を略奪した上に、邪魔な女の子を抹殺するって、絶対後味悪いじゃん、そんな未来はいやだあ。
バシレイオス以外の攻略対象は、あと二人……極力、接触を減らしたいけどどうしたらいいのかな……。あっ、そうだ。
「ねえねえ」
つん、とアウレウスの服の袖を引っ張ると、「いかがなさいました?」と顔を近づけてきた。秘密の話するからいいけど、デフォルトでその距離はやっぱりおかしいでしょ。
「お願いがあるんだけど」
「何なりと」
「できるだけいつでも、私と一緒に居てもらうのってできるかな」
私の言葉を聞いたアウレウスは、きょとんとした顔をする。
「私があなたの側を離れないのは、当たり前のことですが?」
「えっでも、一緒に学園に通うからって、四六時中一緒に居てくれる訳じゃないでしょ?」
私がそう言えば、アウレウスは怪訝そうな顔をした。
「私をなんだと思っているのです。補佐ですよ。もちろん、ご自宅を出られてから学園にいらっしゃる間はもちろん、ご自宅に帰られるまでずっとお側におりますよ」
何を当然のことを、と言わんばかりの顔である。マジか。ちょっとしたストーカーじゃん。いや補佐だけど。いや補佐ってそういうものなの……?
「そ、そうなんだ……。じゃあ、お願いします……?」
「お任せください」
にこりと微笑んで、アウレウスは顔を離した。補佐のため補佐のため、っていうけど、この人が何を考えてるかよくわかんないなあ、腹黒なのは判るんだけど……。
とか考えてたら、不意に後ろからクスクスと笑い声が聞こえて驚く。
「えっ」
「ごめんなさい」
振り返ると、テレンシア嬢が口に手をあてて笑っていた。バシレイオスが前にいるから油断してた、テレンシア嬢後ろに居たわ。つまりさっきまでのやりとりを全部見られてたね……。
私とアウレウスは、先導してくれる学園長たちの後ろを並んでついて歩いた。
「もうよろしいんですか? 今朝はあんなにこだわってらしたのに」
顔を近づけて、こそ、と小さな声でアウレウスが聞いてきた。確かに、出る前に「かつらはやめた方がよろしいのでは?」って言ってたっけ。
「うん、もういいんだ……役立たずになっちゃったし」
「ふふ、そうですか」
顔を近づけたままのアウレウスを、押しのけておく。媚びるのを止めたらしいけど、距離感は近いんだよな、この人。見習いとはいえ神官様を押しのけるとか、本当はバチ当たりなんだろうけど、そうでもしないとずっと距離が近いから仕方がない。
「では、少し整えませんとね」
私の髪をアウレウスがするりと指に絡めてとかしてくる。
「えっ変になってた!? 自分でやるよ!」
ボサボサになっていたらしい髪を自分で整えると、アウレウスは私の髪を一筋すくって口づける。
「お綺麗ですよ」
「ひぇ……」
この人、愛妾はやめるとか言ってたけど、本当は諦めていないんじゃないの? 私は自分の髪をひっぱって取り戻し、アウレウスの顔をとりあえず押しのけておいた。
しかし、かつらという秘策をもってしても、バシレイオスとのフラグが回避できなかったのはショックだなあ。今後最大限避けようとしても、他の攻略対象との最初の出会いとかのイベントは発生してしまう可能性があるもん。
逆ハーレムルートがノーマルエンドのゲームに即してるとすれば、バシレイオスが私にアプローチしてきたとしても、多分他の攻略対象もそんなの関係なく私にアプローチをしてくるはず……。我ながら「自分がイケメンに口説かれる前提」っていうのを考えてると、本当に私の妄想なんじゃないか、頭おかしいのではと思ってしまう。
……うっ。自分で突っ込んでいて辛い。でも他の女の子から彼氏を略奪した上に、邪魔な女の子を抹殺するって、絶対後味悪いじゃん、そんな未来はいやだあ。
バシレイオス以外の攻略対象は、あと二人……極力、接触を減らしたいけどどうしたらいいのかな……。あっ、そうだ。
「ねえねえ」
つん、とアウレウスの服の袖を引っ張ると、「いかがなさいました?」と顔を近づけてきた。秘密の話するからいいけど、デフォルトでその距離はやっぱりおかしいでしょ。
「お願いがあるんだけど」
「何なりと」
「できるだけいつでも、私と一緒に居てもらうのってできるかな」
私の言葉を聞いたアウレウスは、きょとんとした顔をする。
「私があなたの側を離れないのは、当たり前のことですが?」
「えっでも、一緒に学園に通うからって、四六時中一緒に居てくれる訳じゃないでしょ?」
私がそう言えば、アウレウスは怪訝そうな顔をした。
「私をなんだと思っているのです。補佐ですよ。もちろん、ご自宅を出られてから学園にいらっしゃる間はもちろん、ご自宅に帰られるまでずっとお側におりますよ」
何を当然のことを、と言わんばかりの顔である。マジか。ちょっとしたストーカーじゃん。いや補佐だけど。いや補佐ってそういうものなの……?
「そ、そうなんだ……。じゃあ、お願いします……?」
「お任せください」
にこりと微笑んで、アウレウスは顔を離した。補佐のため補佐のため、っていうけど、この人が何を考えてるかよくわかんないなあ、腹黒なのは判るんだけど……。
とか考えてたら、不意に後ろからクスクスと笑い声が聞こえて驚く。
「えっ」
「ごめんなさい」
振り返ると、テレンシア嬢が口に手をあてて笑っていた。バシレイオスが前にいるから油断してた、テレンシア嬢後ろに居たわ。つまりさっきまでのやりとりを全部見られてたね……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる