高嶺の娼婦は嫌われ騎士に囲われて

かべうち右近

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30.明日に紡いでいく ※

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ちゅ、と小さくリップ音をたてて離れた唇は、すぐにもう一度重なって焦らすように下唇をはむ。

「ん……」

 握られていた手が引き寄せられて、アルヤの腰に腕が回された。跪いたままの姿勢だったエーギルに覆いかぶさる形だったのに、彼が口づけをくりかえしながら立ち上がったせいですぐに体勢が逆転する。腰を抱き寄せられながら唇を重ねられれば、もう舌を差しこんで深く求め始める。

「は……エーギル様」

 互いの口を貪りあって、ようやく一息つく頃には、王宮から出る直前に直したばかりの口紅はぐずぐずになっている。腕を彼の肩に回しながら、アルヤは甘えるように囁く。

「抱いて、ください……」

「ああ」

 言下に、再び噛みつくように口づけられる。腰をまさぐられて、尻をやんわりとつかまれただけで、アルヤの身体の奥がきゅうっと啼いた。エーギルと肌を重ねるのは、実に一週間以上ぶりだ。王都に向かうまでの道程は、リクハルドたちと同じ宿だったこともあり、婚前だということで別室で寝ていたのだ。昨晩は同じ部屋で寝たものの、王都到着のためにタッサ王から遅くまで晩餐でもてなされていたし、今朝は準備が早くからあるということでお預けだった。口づけくらいは交わしていたが、毎晩熱を分け合っていた二人にとっては、ずいぶんと久々の情事だ。

 ちゅくちゅくと舌をからめあっているうちに、エーギルの手はドレスの裾をたくしあげて、太ももを撫ではじめる。アルヤが期待で足をわずかに開けば、手がすぐさまに秘部へと伸びてきた。だが、くちゅ、と音が鳴ったところでエーギルの手が不意に止まる。

「いつもと下着が違うのか?」

「あ……そう、です。初夜の、ために……」

「見せてくれ」

 指先の感触でいつのもドロワーズとは違うと気づいたのだろう。エーギルはそっと身体を離すとその場に再び跪いて、アルヤが何かを言う間もなくドレスをめくりあげる。そこに現れたのは、レースの下着だった。秘部と下生えを覆う形に三角に編み込まれたレースの生地は薄く、素肌を隠しきれていない。その小さすぎる生地の端についたリボンを、横で結んで留めているだけだ。ソックスガーターのベルトが下着のリボンの下を通っているのも妙にいやらしい。しかもそれだけでなく、レースの下着は、一番隠すべき秘部のところに穴が開いていた。先ほどエーギルが指を這わせたときに、アルヤの肌が直接触れてエーギルは驚いたに違いない。

「これを……一日履いていたのか?」

「だって、披露宴のあとに初夜の準備は難しいと……聞きましたから……」

 もじもじと答えれば、エーギルは短く「そうか」と呟いてなおも下着をまじまじと観察している。

「あまり見られると……恥ずかしいですわ」

「アルヤは下着を見られるのは恥ずかしいんだな」

 くつくつと喉の奥を鳴らしたエーギルは、そう言いながら視線を外さない。腰を両手でしっかり掴んでドレスをたくしあげた状態にすると、そのままぐわっと口火を開いて秘部に噛みついてくる。大きな舌でレースの下着の筋をなぞれば、もうその下にすぐ割れ目から覗いた肉芽が当たった。

「あ……っそん、な……このままなんて……んっ」

 思わずエーギルの肩に手を添えてかろうじて立つ。その体勢になったのをいいことに、アルヤをたたせたままエーギルは舌でしつこく秘部を責めてくる。久々に交わした情欲を煽る深い口づけのせいで、すでにアルヤの蜜壺は蜜を零している。それをさらに増やすように、尖らせた舌が肉芽をぐにぐにと潰してきてアルヤの口からは自然と甘い声が漏れた。

「もう滴ってるな」

「ふぁ……っだ、って……ぁん……嬉しくて……あぁ……っ」

 ぢゅうっと音をたてて、強く肉芽が吸われて高い声が出た。腰をつかんでいた手が太ももをつかんできて、その足をエーギルの肩にひっかけた。アルヤの深いところをエーギルに差し出すような格好にさせられたおかげで、片足で転びそうな彼女はますますエーギルの肩にすがりつくしかない体勢になる。ぐちゅっと音をたてて太い指が蜜壺を割った。久々に異物を受け入れるそこは充分に熟れて、指一本だけじゃ足りないときゅうきゅうとうねっては、奥へ奥へとエーギルの指を呑み込んでいく。

「ああ、熱い。すぐにでも挿れたくなってしまうな」

「ん……は、やく……きて、くださ……んんぅ」

「だめだ」

 ぐちゅぐちゅとなかをかき回して、アルヤの悦いところを何度も押し、舌では肉芽をこねて虐めてくる。それだけで久々の快楽に脅され、アルヤは頂点に達してしまいそうになる。

「久しぶりだから、しっかり解そう」

「でも……ひぁん……っ」

 指が二本に増やされて、奥のほうをトン、と叩く。アルヤの指ではとうてい届かないだろう場所も、エーギルの指なら届くのだ。もっともアルヤは自慰などしたことがないから、自分の指で蜜壺のどこにまで自分の指がはいるのかさえ知らないのだが。

「ほら、俺の指で奥が触れる。狭くなっているから、もっと解さないといけないだろう?」

 普段ならエーギルの太く長い竿で押し広げられた蜜壺は、指では最奥までは叩けないはずだ。そう言いたいのだろうが、太いものを求めて蜜壺はきゅうきゅうと揺れて、絶頂の近づいた胎は快楽を求めて降りてきている。だから余計に狭いのだろう。太い指に奥を揺らされてもう限界だ。

「だ、め……はっあああっえーぎる、さ……んぁあああ……っ」

 ぎゅうっとエーギルの肩にしがみついて、アルヤは身体を震わせる。ぎちぎちとエーギルの指を締めあげて、久々の絶頂を迎えた。

「あ……は……ぁ、あ……」

 荒い呼吸を吐きながら、アルヤは快楽の波が去るのを耐える。もう足ががくがくと震えて立つのが難しかった。激情にかられて流していた涙は、もはや違う理由で溢れている。

「えーぎる、様……ベッドに……連れていってください」

「そうだな」

 ぐっと腰を持ち上げられて、そのまま大股で歩き、すぐにベッドに降ろされた。白いシーツの上に赤い花びらの散ったベッドに、婚礼衣装のアルヤが横たわる。彼女が履いている靴を、エーギルは恭しい手つきで脱がせてくれ、自身も靴を脱いだところでアルヤを振り返った。ドレスに施された銀糸の刺繍は、鈍くランプの光を反射してオレンジ色に浮かびあがっている。まるでベッドだけでなく、ドレスにも花が散っているかのようだ。ぎっと膝をベッドに乗り上げてアルヤを見下ろしたエーギルは、小さくため息を吐いた。

「綺麗だ」

 そっとアルヤの頬に手を伸ばして、涙で潤んだ目尻をエーギルが指で拭ってくれる。

「……もう、お化粧が崩れていますのに」

「そんなの関係ない」

 頬の手がするっと滑って、顎からドレスの生地へと触れられる。首元までしっかりと覆われた清楚なドレスは、アルヤが刺した刺繍で埋め尽くされている。

「貴女の想いが詰まったこのドレスを脱がすのは、少し勿体ないな」

「あら……」

 刺繍の凹凸を確かめるように指がなぞって、胸のところまで動いていく。その仕草がくすぐったい。刺繍はアルヤの好きに刺したが、ドレス自体はタッサの伝統デザインを採用した。タッサの伝統的婚礼衣装は腰のくびれを強調しない形状なので、コルセットを着ないのが慣例だ。肌着を重ねたうえにドレスを着ているだけだから、エーギルの指先がなぞるたびに柔らかに刺激される。

「では、このまましばらく、わたくしの想いごと可愛がってくださいませ」

 するすると自分でドレスをたくしあげて見せて、先ほど愛撫されていた濡れそぼった秘部をエーギルに晒す。股を開いて見せれば、エーギルはふっと口元を緩ませた。

「そうだな」

 覆いかぶさってきたエーギルが、口づけを落とす。その彼の胸板に手を添えて滑らせ、アルヤは腰のベルトに手をかけた。

「待ってくれ。今脱がされたら、我慢できない」

「ん……わたくしだって、我慢、できませんわ。はやく……中にください」

 ベルトを解こうとした手を抑えられたが、アルヤは熱っぽく訴える。先ほどたくさん解すと言われたばかりだが、アルヤの身体はもう欲しくてたまらなくなっている。ねだる視線に動揺したように緩んだエーギルの制止の手をすり抜けて、アルヤはベルトを引き抜いた。ズボンのボタンを外してしまえば、いよいよ下履きを高く押し上げたモノの熱気が漏れる。

「ゆっくりしてくだされば大丈夫ですから……エーギル様」

 きゅっと熱源を握りながら訴えれば、エーギルはこらえきれないように息を吐いた。

「まったく……アルヤには逆らえない」

 エーギルは下履きごとズボンをずりおろすと、すぐさまにアルヤの太ももをつかんで開かせ、腰を密着させた。猛々しくそそり立った竿を、割れ目の上に乗せてゆっくりと前後させる。まだ、下着すら脱がされていない。けれど雄を受け入れるためだけにあつらえられた下着は、アルヤの入り口をしっかりと晒している。先ほど溢れさせた愛液が肉棒にまとわりついて、ちゅぐちゅぐと音を立てた。

「あ、んん……焦らさ、ないで……」

 上半身を起こしたままの姿勢で、エーギルはアルヤのドレスや顔を観察するように見ている。

「すまない、可愛くて、ついな」

「は、ぅ……」

 腰を引いたエーギルが、にゅぐ、と穂先を入り口に押しつけた。だがいつもと違って、すぐには入っていかない。一週間程度とはいえ、太いものを受け入れていなかったそこは多少狭くなっているらしい。だが、その抵抗は一瞬だけで、先端が入りこんだあとはぬぶぶ、と竿の中ほどまで一気に入る。

「エーギル様、動いて……ください」

「っああ……」

 奥歯を噛みしめたエーギルが、低い声で頷いてゆっくりと腰を揺らし始める。

「加減しないと……すぐに、達してしまいそうだ」

 は、は、と息を荒く吐いているのは、数日ぶりに得る快楽をどうに逃そうとしているからだろう。うねる蜜壺は雄に悦び締めつけている。とん、と奥をゆすぶられるたびにきゅうっと中を狭くして、激しくもないピストンでアルヤもまた達してしまいそうだ。ゆっくりと前後するだけで少しずつ肉棒が奥へ奥へと入りこんでいくが、まだ根元までは遠い。

「あ……ん……んん。エーギルさま……、すぐに、出しても……ふぁっいい、ですわ」

「だが……く……っ」

 アルヤは意図してぎゅうっと竿を強く咥え込む。その締め付けにエーギルが身体を止めた。イきそうになったのだろう。

「そんなに締め付けるな。本当に……イってしまうだろう」

「いいんです。夜は長いんですもの。何度でも、いたしましょう?」

「だが……」

 そんなに早く一度目を出してしまうのはなんだか情けない。そうとでも言たげなエーギルに、アルヤは微笑みながら自分の下腹にそっと触れる。

「ここに、エーギル様の子種を、たくさん注いでください」

「アルヤ」

「夫婦は、子づくりをするものでしょう……?」

 それはいつもの情事とどう違うのか、一瞬エーギルはわからなかったらしい。だが、一拍あとに、アルヤの意図に気づいたらしい。

「……もう、避妊していないのか?」

「ええ」

 それは、娼館にいた頃からエーギルに身請けされてからもずっと続けていた習慣だ。結婚することが決まった以後、式のときに腹が膨れていてはよくないと言って、結局今まで飲み続けていたのだが。

「王都出発前に、飲むのをやめましたの。ですから……今なら、エーギル様の子を、ここに……」

「……っアルヤ!」

「ひぁんっ」

 ぐんっと腰を押しつけられて、奥をぐりぐりと揺らされる。まだ根本まで呑みこんでいなかった蜜壺が、その動きでずっぽりと全てを受け入れた。

「そんなことを、言われたら……」

 短く息を吐いたエーギルが、ぬるぅ、と腰を引いて肉棒を抜いていく。けれども穂先のぎりぎりが抜けないところまでで止まる。

「こらえられないだろう!」

 ばちゅんっと勢いよく打ちつけられて、たちまちに激しいピストンが始まった。

「ふぁっああっあんっあ、えー、ぎ……んぁっあああ……っ」

 ずんずんと強く打ちつけられて、アルヤは言葉をうまく発することができないほどに啼かされる。太ももをしっかりつかんだまま、エーギルは上体を起こした姿勢でアルヤを攻め立てた。お互いに秘部だけを露出させて繋がっている。酷く性急でいやらしいその交わりは、まるで身請けを申し出てくれたあの夜のようだ。

「アルヤ……アルヤ……」

「んっあ、エーギ、るさ、ま……あぁっ」

 口づけを求めて腕を伸ばせば、エーギルはピストンを続けながらも身体を寄せてそれに応えてくれる。彼の首に腕を回し、ぬるりと唇を貪りながら奥を穿つ快楽に溺れていれば、アルヤの中にまたも大きな波が訪れる。

「んっ……ふ……ぅうう……っ」

 口を吸い合っていてなお、漏れる嬌声。その刹那にぎちっと肉棒を咥えこんで、がくがくと胎が震えはじめる。その動きに合わせて、奥深くに挿入してエーギルの腰が止まる。途端にびゅくびゅくと熱い白濁が注ぎこまれた。迸った白濁全てを呑みこむように蜜壺はうねって竿をしごく。そうして子種が残らず吐き出されたが、肉棒はわずかに硬度を緩めただけで太いままだ。

「大丈夫か……?」

 唇を離したエーギルが、身体を繋げたまま尋ねてくる。

「は、い……」

 荒く息を吐きながらアルヤは答えて、また唇を軽く重ねる。

「エーギル様は、大丈夫ですか……?」

「ああ。だが、まだ治まりがつかない」

「何度でも、してくださいませ」

「あいかわらず、アルヤは俺に甘い。……今夜だけで、貴女を孕ませてしまいそうだ」

 そう言いながらも、彼は挿入したままの肉棒を再びぐぐっと硬くする。そうして上着を脱ぎ捨てると、繋がったままアルヤの身体を起こして、膝に乗せたまま突き上げ始めた。

「あ、ああ……っえーぎる、さま……あいして、ます……んぁっあっ」

「俺もだ、アルヤ。愛している」

 ばちゅん、と突き上げながらエーギルはアルヤを抱き締めて愛を囁く。ぎしぎしとベッドが揺れて情事は続いていく。

「うれしい……あ……っ」

 口から漏れた悦びの声と同時に、目の端からは再び涙が零れた。

 エーギルに抱かれるようになって、一年経っただろうか。彼に再会するまで、いや、彼にプロポーズされるまで、ずっとアルヤは子が欲しいだなんて思ったことはなかった。今だって子を身ごもることは想像できない。けれども、避妊していることを嘆いた彼が望んでくれるならば、エーギルの子ならば、胸に抱いて愛おしいと笑える未来が想像できる。子ができることを怯えるアルヤはもういない。

 快楽の波に呑まれながら、彼女の胸は喜びに満たされていく。明日も、明後日もそしてその先も、これからずっと、アルヤはエーギルと一緒に愛を紡いでいくのだろう。
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