16 / 147
【第1部 異世界転移】 第2章:性奴隷編
第8話①
しおりを挟む
朝食を食べながら今後のことについて話し合った。
どうやら、これからしばらくは日中、この国の歴史や常識などについて学ぶ「座学」の時間を設けられるらしい。圭はこの世界のことを何も知らない。それでは何かあった時に困るからという理由だった。
その提案に関してはありがたかった。別に勉強は好きでも嫌いでもないが、だからと言って何もやることなく毎日ボーッと過ごすのもツラい。でも、できるような仕事もない。
それに勉強を教えてくれるのはユルゲンらしい。初日に会った女性たちだったら恥ずかしくて顔を合わせづらかったが、ユルゲンならばこの国の中ではまだ知った仲だ。
「そして、これが一番大切な話ですが」
前置きをしてコホリとユルゲンが咳払いを一つする。デザートを食べ終え、食後の茶をすすっていた圭も何だか重要な話になりそうだと居住まいを正した。
「貴方のことは今後、国の最重要機密として扱わせていただきます」
「さ、最重要機密~??」
自分に相応しいとは思えない言葉が飛び出してきて、思わず手にしていたティーカップを落としそうになって慌てる。
「え、俺、そんな大層なもの?」
「これを御覧ください……あ、すいません。読めなかったんですよね。ええっと、ここですね」
テーブルの隅に置いていた一冊の分厚い古書を手に取り、ユルゲンはパラパラとページを捲った。真ん中付近のページを開き見せてくれるものの、やっぱり何が書いてあるかは全く分からない。
ユルゲンは右ページの下の方を指さした。
「異界より来た人間によって、当時、混乱を極めていた世界が統率されたと記されています。読み進めていくと、どうやら争いに塗れてどの国も存亡すら危ぶまれる程の大戦を収めたのがその異界人であったそうです」
「ええええええ!?」
そんな大それたこと自分にできるはずがない。ブンブンと手を振り、無理だとアピールした。
ユルゲンは首を振り、ページを捲る。
「ただ、その者が何かをしたという訳ではないようです。その者が来たことによって争いが収まり、和平が結ばれたと。つまり、この異界人の存在自体が重要だった、ということです」
「えええ……」
呆気に取られ話についていけない。
「えーっと、とりあえず、俺は別に何もしなくても良い、……んだよね?」
コクリと頷かれ、ホッとする。高校生に世界平和的な何かを期待されても困る。そんな方法知っていたらノーベル賞ものだ。
「で、どうして俺のことは内緒になるの?」
「私も書物で読んだことなので、一般人がそうそうこのことを知っているとは到底思えませんが、知る者がいないとも限らない。そうすると、異界人が来たことによって国の内外で不和が生じると勘ぐる者が出てくるかもしれない。そうなった時が厄介です。一度ついてしまった火というのはそう簡単に収まるものではありません。大火になり、帝国の転覆などに繋がるようなことは絶対に避けなければなりません」
ユルゲンは手元の茶をすすった。その姿だけでも映画のワンシーンのように絵になっている。
「国のあちこちに不穏分子がいることは分かっています。それを無理やり押さえつけ、統制しているにすぎません。それは陛下の絶対的な御力があってのこと。この均衡を崩す訳にはいかないのです」
椅子に座っていたユルゲンが立ち上がった。圭の横へと歩み寄ると、その場に膝をつく。相応の地位にあるであろう人にかしずかれ、慌ててしまう。
「え、ちょ、そんな、やめてください!」
「ケイ様」
そっと手を取られた。クールビューティーな見た目に反して意外とゴツゴツしている。あの暴君と同じだった。
「どうか、この国を。良き方向に導いてください」
「待って!? 俺、本当に何もできないってば」
「良いんです。あなたがここにいることが大切なんですから。陛下のお傍に」
ギュッと握り締められた手は意思の強さを物語る。否など言えぬ雰囲気だった。反射的に頷いていた。
どうやら、これからしばらくは日中、この国の歴史や常識などについて学ぶ「座学」の時間を設けられるらしい。圭はこの世界のことを何も知らない。それでは何かあった時に困るからという理由だった。
その提案に関してはありがたかった。別に勉強は好きでも嫌いでもないが、だからと言って何もやることなく毎日ボーッと過ごすのもツラい。でも、できるような仕事もない。
それに勉強を教えてくれるのはユルゲンらしい。初日に会った女性たちだったら恥ずかしくて顔を合わせづらかったが、ユルゲンならばこの国の中ではまだ知った仲だ。
「そして、これが一番大切な話ですが」
前置きをしてコホリとユルゲンが咳払いを一つする。デザートを食べ終え、食後の茶をすすっていた圭も何だか重要な話になりそうだと居住まいを正した。
「貴方のことは今後、国の最重要機密として扱わせていただきます」
「さ、最重要機密~??」
自分に相応しいとは思えない言葉が飛び出してきて、思わず手にしていたティーカップを落としそうになって慌てる。
「え、俺、そんな大層なもの?」
「これを御覧ください……あ、すいません。読めなかったんですよね。ええっと、ここですね」
テーブルの隅に置いていた一冊の分厚い古書を手に取り、ユルゲンはパラパラとページを捲った。真ん中付近のページを開き見せてくれるものの、やっぱり何が書いてあるかは全く分からない。
ユルゲンは右ページの下の方を指さした。
「異界より来た人間によって、当時、混乱を極めていた世界が統率されたと記されています。読み進めていくと、どうやら争いに塗れてどの国も存亡すら危ぶまれる程の大戦を収めたのがその異界人であったそうです」
「ええええええ!?」
そんな大それたこと自分にできるはずがない。ブンブンと手を振り、無理だとアピールした。
ユルゲンは首を振り、ページを捲る。
「ただ、その者が何かをしたという訳ではないようです。その者が来たことによって争いが収まり、和平が結ばれたと。つまり、この異界人の存在自体が重要だった、ということです」
「えええ……」
呆気に取られ話についていけない。
「えーっと、とりあえず、俺は別に何もしなくても良い、……んだよね?」
コクリと頷かれ、ホッとする。高校生に世界平和的な何かを期待されても困る。そんな方法知っていたらノーベル賞ものだ。
「で、どうして俺のことは内緒になるの?」
「私も書物で読んだことなので、一般人がそうそうこのことを知っているとは到底思えませんが、知る者がいないとも限らない。そうすると、異界人が来たことによって国の内外で不和が生じると勘ぐる者が出てくるかもしれない。そうなった時が厄介です。一度ついてしまった火というのはそう簡単に収まるものではありません。大火になり、帝国の転覆などに繋がるようなことは絶対に避けなければなりません」
ユルゲンは手元の茶をすすった。その姿だけでも映画のワンシーンのように絵になっている。
「国のあちこちに不穏分子がいることは分かっています。それを無理やり押さえつけ、統制しているにすぎません。それは陛下の絶対的な御力があってのこと。この均衡を崩す訳にはいかないのです」
椅子に座っていたユルゲンが立ち上がった。圭の横へと歩み寄ると、その場に膝をつく。相応の地位にあるであろう人にかしずかれ、慌ててしまう。
「え、ちょ、そんな、やめてください!」
「ケイ様」
そっと手を取られた。クールビューティーな見た目に反して意外とゴツゴツしている。あの暴君と同じだった。
「どうか、この国を。良き方向に導いてください」
「待って!? 俺、本当に何もできないってば」
「良いんです。あなたがここにいることが大切なんですから。陛下のお傍に」
ギュッと握り締められた手は意思の強さを物語る。否など言えぬ雰囲気だった。反射的に頷いていた。
415
あなたにおすすめの小説
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
藤吉めぐみ
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる