麗しの暴君サマに愛され過ぎて困っています。

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番外編アツメターノ

イルミネーションを作ろう2~圭と夜光花と時々アレえもん~①

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「ケイは夜光花を知っているか?」
「え、何それ。知らない」

 夕食後、アレクと共にソファに座って食後の茶を楽しんでいた圭はフルフルと首を横に振る。

「そうか、夜光花はケイの世界にもないか」

 満足そうにむアレクを見て、圭は首を傾げた。何かの隠語だろうかとも考えたが、全く想像がつかない。

「ねえ、何? その夜光花って」
「その内、連れて行ってやろう。……だが、問題は勝手に出かけられなくなったことだな」

 アレクが指摘しているのは先日の魔法の絨毯騒動のせいだ。誰にも許可を取らずに出かけたことで、戻ってきた時、ユルゲンから大目玉を喰らったのだ。圭だけが。正確に言えば、目が覚めてからだが。

 アレクの傍若無人ぶりは健在だったと久々に実感した後、目覚めた圭は寝室のベッドにいた。ジェットコースターのようなセックスをした際、無様に気絶したらしい。
 そして目覚めた後、ネチネチとユルゲンから長時間に渡る説教地獄が待っていた。

 元々はアレクが勝手に行ったことだと釈明したが、絨毯に魔法をかけて空を飛びたいと言ったのは確かに圭だった。それを指摘されるとグゥの音も出ない。

 そもそもアレクは圭に甘いのだから、もっとその辺りを考慮して発言しろと責められた。納得がいかない。ユルゲンたち自身がアレクに物申せないから、ほとんど八つ当たりのようなものだ。
 しかし、自分がユルゲンたちの立場だったらと思うと、長時間に及ぶ説教も仕方がない。一国の皇帝陛下の身に何かあれば大事おおごとだ。そうならないようにするのが臣下の務めでもある。

 分からなくはないが、やはりモヤモヤはする。

 そして、当の本人であるアレクが全くと言って良いほど響いていない。少々の小言は言われただろうが、結局アレクに対しては皆強く意見できないのだ。そして、そのはけ口に圭がなっている。

「さすがにこないだ怒られたじゃん。そんな勝手に出かけたらまずいんじゃねーの?」
「なんだ、随分と守りに入ったな」

 アレクは知らないからそんな事を言えるのだ。ユルゲンの小言のねちっこさを。その不満を口にすれば、今度はユルゲンが罰せられてしまう可能性があるため言わないが。

「ケイは俺と2人きりでデートしたくないのか?」
「え、デート??」

 少し不満を露わにしていた圭であったが、キラリと目が輝いた。結婚はしたものの、デートと言えるデートはほとんどしていない。お忍びで祭りを見に行った城下町と、先日の湖だけだ。一緒にいられるだけでも嬉しいが、やはりどこか出かけたいとは思っていた。

「え~、そんなのしたいに決まってんじゃん!」
「だろう? そうなると、やはり問題は抜け出し方だな」

 アレクが腕を組んで思案顔を作る。

 勝手に城を抜け出すのは悪いことだ。それに、もうあんな説教はこりごりだ。
 しかし、2人でデートは楽しみたい。これも譲れない。

 そもそも、2人での思い出というのが圧倒的に少なすぎるのだ。これは良くないと思う。
 それに、アレクはこの世界で最も強いのだ。誰が来てもやっつけられるだろうし、よく考えたら何も問題などない気がしてきた。

「アレク、完全犯罪目指そうぜ」

 ほぼ食後の団らんタイムでの定位置になっているアレクの膝の上で握り拳を作って闘志を見せる。
 そうだ、何事もチャレンジだ。やりもしない内から諦めるなんてナンセンス過ぎる。
 バレなければ正義。叱責が怖くては何も挑戦できないではないか。

 しかし、よく聞いていけばその夜光花というものが咲いている場所は城から相当遠いらしい。簡単に行ける場所ではなさそうだ。短時間で行き来するには転移しかない。転移を使えば魔法の残滓ざんしでバレてしまう。

「うわ~、マジ詰んでんじゃん! くっそ~、こういう時、どこでもドアがあればな~」
「どこでもドア? 何だそれは」
「俺の国にある……いや、あるって言ったらさすがにダメか。伝説の魔道具みたいなやつ。そのドアを使えば、どこでも目的の場所に行けるんだよ」
「なるほど、どこでもドア……その手があるか」
「ん?」

 アレクが得心とくしんしたように呟いた。そして、圭を膝から下ろすと書斎へと向かってしまった。圭には先に寝るようにだけ告げて。

「え……アレク、何する気だ……?」

 書斎を覗けば、アレクが真剣な表情で何冊もの分厚い本を手に取っている。一冊一冊が辞書のようだ。それを5冊ほど抱えると、書斎のデスクへと向かってしまった。こうなるとさすがに声を掛けづらい。団らんの時間が減るのは残念だったが、仕方なくその日は先に眠るのだった。
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