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収穫祭①
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だけど、やるしかないんだ。
本気で未来を変えたいと、思うのならば。
「エドワード様! 今年は収穫祭に参加されるのですね! 嬉しいです!」
「エドワード様が卒業されて初めての収穫祭なので、今年は皆特に張り切っているんですよ」
「ほんの10年前までは、食うのが精一杯で、収穫祭なんかまともに開催できるような状況じゃなかったのに……全て、エドワード様のおかげです。エドワード様がお父上様から辺境伯の地位を引き継がれる日を、領民一同心からお待ちしています」
屋台が立ち並ぶ通りを練り歩くだけで、次々とかけられる領民達の声にキリキリと胃が痛む。
一年の収穫を女神に感謝する収穫祭は、戦後からずっと開催されていたネルドゥース領の恒例行事だったが、俺が小さい頃は貧困からかなり規模が縮小され、領都周辺の領民が集まって酒を酌み交わすだけの、かなり小規模なものと化していた。
様々な屋台が立ち並び、あちこちで楽団が希望に満ちた音楽を演奏し、招致した有名劇団が女神をモチーフにした劇を上演する。こんな大規模な祭を開催できるようになったのは、ここ数年のこと。噂を聞きつけた他領の人々までやって来るようになり、リシス王国では王都の祭に継いで華やかなものになってきている。
全ては、食料改革の成功があったからこそ。そして公表こそしていなくても、その功績が親父ではなく俺のものではあることを、何故か領民は皆きちんと正しく把握している。……クリスの情報統制、本当ぱねぇ。
立ち並ぶ屋台を見ても、ネルドゥース芋のコロッケやフライドポテト、ポテトチップス。ネルドゥース豆のスープに、豆腐を使ったデザート。ネルドゥースソバのクレープ。ネルの実を使ったサンドイッチやパスタ。ブーリ魚のフライに、串焼き。果実が埋められた色とりどりのゼリーや、クラッシュゼリー入りのジュース。セネーバから輸入した魔石を使った魔道具やアクセサリー……等など、あげていったらキリがないほど、俺が導入したものの数々が、昔からの特産品のように売られている。
……あ、ブーリ魚のフライのとこの店主、ディックだ。他にもいくつか新しく養殖始めさせた魚介類も、いい感じに屋台向けに調理してんな。
ニックの方は最近店舗広げ過ぎて忙しいみたいだから、祭りにはいないか。新しい儲け話はないか、会うたびうるさいから、逆にちょうどいい。
「エドワード様! 良かったらこれ、どうぞ!」
顔を真っ赤に染めた俺より少し年下くらいの可愛い売り子の女の子が差し出して来たのは、竹のような植物の器に入れられた、様々な果物を潰して混ぜたミックスジュース。
これは俺の食料改革関係なく昔からある、辺境伯領名物の一つだ。
「ありがとうございます。ちょうど喉が乾いてたんです。いくらですか」
「そ、そんな。私が勝手にさしあげただけなんで。お金なんかもらえません」
「飲みたかったから、頂いたんですよ。どうか払わせてください。自領の方々に財を還元するのも、私達の役目のうちですので」
下手に無料でもらったりしたら、他の屋台までそういう雰囲気になってしまいそうだしな。
ぺこぺこ頭を下げる女の子に笑顔で代金を支払って、隅の方でジュースを口にする。
魔道具で冷やされたジュースは、秋空の下で飲むのにちょうどいい温度で、器の香りが移った独特の風味が懐かしい。
……そういえば、セネーバの建国祭でスムージーを飲んだ時に、このジュースを思い出したっけ。
目の前に広がる収穫祭の光景が、一年と数ヶ月前に見た建国祭の光景と重なる。
通りを歩く人々には獣の耳もないし、売られている商品だって違う。
それでも祭を楽しむ人々の姿は、人間も獣人も変わりなくて。
改めて、セネーバの獣人とリシス王国の人間は、それほど違いはないのだと実感する。
本気で未来を変えたいと、思うのならば。
「エドワード様! 今年は収穫祭に参加されるのですね! 嬉しいです!」
「エドワード様が卒業されて初めての収穫祭なので、今年は皆特に張り切っているんですよ」
「ほんの10年前までは、食うのが精一杯で、収穫祭なんかまともに開催できるような状況じゃなかったのに……全て、エドワード様のおかげです。エドワード様がお父上様から辺境伯の地位を引き継がれる日を、領民一同心からお待ちしています」
屋台が立ち並ぶ通りを練り歩くだけで、次々とかけられる領民達の声にキリキリと胃が痛む。
一年の収穫を女神に感謝する収穫祭は、戦後からずっと開催されていたネルドゥース領の恒例行事だったが、俺が小さい頃は貧困からかなり規模が縮小され、領都周辺の領民が集まって酒を酌み交わすだけの、かなり小規模なものと化していた。
様々な屋台が立ち並び、あちこちで楽団が希望に満ちた音楽を演奏し、招致した有名劇団が女神をモチーフにした劇を上演する。こんな大規模な祭を開催できるようになったのは、ここ数年のこと。噂を聞きつけた他領の人々までやって来るようになり、リシス王国では王都の祭に継いで華やかなものになってきている。
全ては、食料改革の成功があったからこそ。そして公表こそしていなくても、その功績が親父ではなく俺のものではあることを、何故か領民は皆きちんと正しく把握している。……クリスの情報統制、本当ぱねぇ。
立ち並ぶ屋台を見ても、ネルドゥース芋のコロッケやフライドポテト、ポテトチップス。ネルドゥース豆のスープに、豆腐を使ったデザート。ネルドゥースソバのクレープ。ネルの実を使ったサンドイッチやパスタ。ブーリ魚のフライに、串焼き。果実が埋められた色とりどりのゼリーや、クラッシュゼリー入りのジュース。セネーバから輸入した魔石を使った魔道具やアクセサリー……等など、あげていったらキリがないほど、俺が導入したものの数々が、昔からの特産品のように売られている。
……あ、ブーリ魚のフライのとこの店主、ディックだ。他にもいくつか新しく養殖始めさせた魚介類も、いい感じに屋台向けに調理してんな。
ニックの方は最近店舗広げ過ぎて忙しいみたいだから、祭りにはいないか。新しい儲け話はないか、会うたびうるさいから、逆にちょうどいい。
「エドワード様! 良かったらこれ、どうぞ!」
顔を真っ赤に染めた俺より少し年下くらいの可愛い売り子の女の子が差し出して来たのは、竹のような植物の器に入れられた、様々な果物を潰して混ぜたミックスジュース。
これは俺の食料改革関係なく昔からある、辺境伯領名物の一つだ。
「ありがとうございます。ちょうど喉が乾いてたんです。いくらですか」
「そ、そんな。私が勝手にさしあげただけなんで。お金なんかもらえません」
「飲みたかったから、頂いたんですよ。どうか払わせてください。自領の方々に財を還元するのも、私達の役目のうちですので」
下手に無料でもらったりしたら、他の屋台までそういう雰囲気になってしまいそうだしな。
ぺこぺこ頭を下げる女の子に笑顔で代金を支払って、隅の方でジュースを口にする。
魔道具で冷やされたジュースは、秋空の下で飲むのにちょうどいい温度で、器の香りが移った独特の風味が懐かしい。
……そういえば、セネーバの建国祭でスムージーを飲んだ時に、このジュースを思い出したっけ。
目の前に広がる収穫祭の光景が、一年と数ヶ月前に見た建国祭の光景と重なる。
通りを歩く人々には獣の耳もないし、売られている商品だって違う。
それでも祭を楽しむ人々の姿は、人間も獣人も変わりなくて。
改めて、セネーバの獣人とリシス王国の人間は、それほど違いはないのだと実感する。
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