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救いの手③
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「止まれ! タンク! 考え直せ! 一緒に謝ってやるから……ぐはっ!」
「ごめんね。ヒルゼン! 俺、もう決めちゃったから、止まらない!」
「何故人間如きの為に、女王に反逆するっ、タンクルッツ! 草食獣人にも関わらず、俺と対等に渡り合うお前のことを、気高き黒豹のこの俺が、好敵手だと思ってやっていたのに! せっかくのキャリアを無駄にする気……ぶへっ!」
「うっそ、キャレド、俺のことそこまで評価してくれたの? 絶対嫌われてたと思ってたから嬉しいけど、ごめんね! 俺は人間の為に女王陛下に逆らうんじゃなく、人間の友達であるエド様とアンゼの為に逆らうんだ」
「やめろー……やめてくれ、タンク……俺、お前が処刑されるとか、嫌だよぉ……ぐううっ!」
「ごめん、本当にごめん。ノンクス。処刑とか、俺も嫌だよ。でも、友達を見捨てる方が嫌なんだ」
次々と前に立ち塞がっては、タンクを説得しようとする兵士達を、ダンプカーの如くはね飛ばしながら、タンクが謝罪を繰り返す。
「……タンク。お前、すごくみんなから好かれてたんだな」
コミュ力ナンバーワンはポンダーだと思っていたけど、人誑しナンバーワンは実はタンクだったのかもしれない。ただでさえアホなこと以外はハイスペだったのに、ますます評価が高くなる一方で、この現状を知った恋するワニが闇堕ちヤンデレそうで心配にもなってくる。
「うん。俺は草食獣人だから最初は見下されたりとかして一悶着あったけど、一年かけて仲良くなれたんだ。みんなから良くしてもらってたし、俺もみんなのことが大好き」
「……ごめんな。それなのに俺のせいで」
「謝らないで。エド様。みんなのことは大好きだけど、同じくらい俺はエド様とアンゼのことも大好きなんだ。それにね、もしここでエド様のことを見捨てたりしたら、俺はみんなが好きになってくれた俺のままではいられないから」
暴走ダンプのように、邪魔なもの全てを薙ぎ払って城内を駆けて行ったタンクだが、後少しで城の敷地から出られるという所で、いきなり足を止めた。
「……やべ。よりにもよって、ここでサイラス先輩かぁ」
「……だからサイラスじゃねぇ。俺はライラスだって何度言えばわかる、バカカバタンク」
「だってサイだから、そっちの方が覚えやすいでしょう?」
「お前の名前にだって、一切カバの字入ってねーだろうがよおお」
獣化姿で立ち塞がるのは、恐らく以前ニルカグルの離宮をタンクと一緒に警護していた、サイの獣人。
タンクよりさらに一回り大きな巨体で道を塞ぎながら、威嚇するように角を向ける。
「タンク、お前、何してくれちゃってんだよ。これまた何度も言ったが、俺はお前に期待してたんだぜ。お前となら、未だ草食獣人差別が蔓延る王宮兵団の中で、一緒に新しい道を切り拓けるじゃないかってよお。全部台無しじゃねぇか」
「…………」
「アストルディア殿下に、ヴィダルス様。その上こいつまで誑かすったあ、あんたも罪深いな。エドワード様。兵団長は魔力相性が悪かったから辛うじて毒牙から逃れたが、それでも親善試合後暫くは色ボケ状態だったんだぜ。今だって、『証拠もないのに、罪人扱いするのはおかしい』って女王に直談判して、自宅謹慎させられてるしよ。魔性っつーのは、あんたみたいな奴を言うのかね」
「ちょっと、サイラス先輩。勘違いしないでよ。俺とエド様は、ただの友達だって。誑かされてなんかないです」
「ただの友達の為に、お前は命を賭けられるのか」
「友達の為なら、もちろん命だって賭けられるよ。というか、状況が状況だったら、俺はサイラス先輩の為だって命は賭けられるよ。だって俺、先輩のこと大好きだもん」
「……本当、お前はよお」
苛立たしげに蹄で地面を抉りながら、サイラス……いや、ライラスさんが俺に向き直る。
「タンクは、絶対俺には勝てねぇ。何度も模擬戦をしたから、間違いない。それでもこいつは、あんたを守る為なら死ぬまで戦うだろう。俺は、このアホで可愛い後輩を殺したくはねぇんだ。……投降してくれねぇか、エドワード様。ここまで派手にやったからには無罪とはいかねぇが、城内でことを収められれば、恐らくタンクは死刑にまではされねぇと思う。女王陛下は狂ってなお、慈悲深い方だからなぁ。頼むから、タンクを生かす選択をしてくれ」
「ごめんね。ヒルゼン! 俺、もう決めちゃったから、止まらない!」
「何故人間如きの為に、女王に反逆するっ、タンクルッツ! 草食獣人にも関わらず、俺と対等に渡り合うお前のことを、気高き黒豹のこの俺が、好敵手だと思ってやっていたのに! せっかくのキャリアを無駄にする気……ぶへっ!」
「うっそ、キャレド、俺のことそこまで評価してくれたの? 絶対嫌われてたと思ってたから嬉しいけど、ごめんね! 俺は人間の為に女王陛下に逆らうんじゃなく、人間の友達であるエド様とアンゼの為に逆らうんだ」
「やめろー……やめてくれ、タンク……俺、お前が処刑されるとか、嫌だよぉ……ぐううっ!」
「ごめん、本当にごめん。ノンクス。処刑とか、俺も嫌だよ。でも、友達を見捨てる方が嫌なんだ」
次々と前に立ち塞がっては、タンクを説得しようとする兵士達を、ダンプカーの如くはね飛ばしながら、タンクが謝罪を繰り返す。
「……タンク。お前、すごくみんなから好かれてたんだな」
コミュ力ナンバーワンはポンダーだと思っていたけど、人誑しナンバーワンは実はタンクだったのかもしれない。ただでさえアホなこと以外はハイスペだったのに、ますます評価が高くなる一方で、この現状を知った恋するワニが闇堕ちヤンデレそうで心配にもなってくる。
「うん。俺は草食獣人だから最初は見下されたりとかして一悶着あったけど、一年かけて仲良くなれたんだ。みんなから良くしてもらってたし、俺もみんなのことが大好き」
「……ごめんな。それなのに俺のせいで」
「謝らないで。エド様。みんなのことは大好きだけど、同じくらい俺はエド様とアンゼのことも大好きなんだ。それにね、もしここでエド様のことを見捨てたりしたら、俺はみんなが好きになってくれた俺のままではいられないから」
暴走ダンプのように、邪魔なもの全てを薙ぎ払って城内を駆けて行ったタンクだが、後少しで城の敷地から出られるという所で、いきなり足を止めた。
「……やべ。よりにもよって、ここでサイラス先輩かぁ」
「……だからサイラスじゃねぇ。俺はライラスだって何度言えばわかる、バカカバタンク」
「だってサイだから、そっちの方が覚えやすいでしょう?」
「お前の名前にだって、一切カバの字入ってねーだろうがよおお」
獣化姿で立ち塞がるのは、恐らく以前ニルカグルの離宮をタンクと一緒に警護していた、サイの獣人。
タンクよりさらに一回り大きな巨体で道を塞ぎながら、威嚇するように角を向ける。
「タンク、お前、何してくれちゃってんだよ。これまた何度も言ったが、俺はお前に期待してたんだぜ。お前となら、未だ草食獣人差別が蔓延る王宮兵団の中で、一緒に新しい道を切り拓けるじゃないかってよお。全部台無しじゃねぇか」
「…………」
「アストルディア殿下に、ヴィダルス様。その上こいつまで誑かすったあ、あんたも罪深いな。エドワード様。兵団長は魔力相性が悪かったから辛うじて毒牙から逃れたが、それでも親善試合後暫くは色ボケ状態だったんだぜ。今だって、『証拠もないのに、罪人扱いするのはおかしい』って女王に直談判して、自宅謹慎させられてるしよ。魔性っつーのは、あんたみたいな奴を言うのかね」
「ちょっと、サイラス先輩。勘違いしないでよ。俺とエド様は、ただの友達だって。誑かされてなんかないです」
「ただの友達の為に、お前は命を賭けられるのか」
「友達の為なら、もちろん命だって賭けられるよ。というか、状況が状況だったら、俺はサイラス先輩の為だって命は賭けられるよ。だって俺、先輩のこと大好きだもん」
「……本当、お前はよお」
苛立たしげに蹄で地面を抉りながら、サイラス……いや、ライラスさんが俺に向き直る。
「タンクは、絶対俺には勝てねぇ。何度も模擬戦をしたから、間違いない。それでもこいつは、あんたを守る為なら死ぬまで戦うだろう。俺は、このアホで可愛い後輩を殺したくはねぇんだ。……投降してくれねぇか、エドワード様。ここまで派手にやったからには無罪とはいかねぇが、城内でことを収められれば、恐らくタンクは死刑にまではされねぇと思う。女王陛下は狂ってなお、慈悲深い方だからなぁ。頼むから、タンクを生かす選択をしてくれ」
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