異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚

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アリスティア、目覚める

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「姫様、今の知識はどこから…?」

ビビは訝し気な表情でこちらを見ている。
彼女からすると、記憶喪失のはずのお姫様が突然謎の物体のつくり方を指示している状態なのだから違和感しかないだろう。
今後も協力してもらうため、彼女には事実の一端を話すことにした。

「実は、記憶は失ってしまったのだけど、死の淵で全身真っ白な女性…そう、恐らくロミア様だったのでしょうね…プレゼントをいただいたの。他の人からは見えない書物の形をしているので、あなたの前で出すこともあるかもしれないわ。」

これで違和感ないはずだ。
ビビは目を輝かせてこちらを見ている。

「姫様も使徒になられたのですね!」

「え?使徒?」

「はい、女神様より魔法とは異なる知識や技能を授かった人間のことを、皆使徒と呼んでおります。私の記憶もロミア様よりこの国を支えよとのお言葉とともに、4歳の時に賜った能力です。」

おお、なんか役職が付いた。

「ちなみに、使徒というものに義務や仕事はあるのかしら?」

でも義務で縛られてしまったら本末転倒だ。もし面倒な手続きとかがあるなら内緒にしておかねば。

「そうですね。ロミア様にお会いしてから可及的速やかに近隣の神殿に申し出て、認定を受ける必要があります。
ロミア様から特殊な使命を受けたものはその通りに、特に使命なく神託や能力を授かったものは、庶民であればそのまま各地の神殿にて神官となるべく教育をうけます。
ご身分がある方はロメリアにある貴族学院の神学部で学ばれることが推奨されていますが、神官の資格があるものから教育を受ける場合、家庭教師でも構わない、とされています。私は神官資格を持っていますので、姫様の場合は私からの指導をこのまま受け続けるか、貴族学院に行かれるかお選びいただけますよ。」

なんと。じゃあ学園編が始まる…?

「ただ、貴族学院は13歳から15歳で行かれる方が多いので、それを考えると姫様には5年、判断の猶予がございますよ。」

あら、まだ先なのね。

「その年以外の人もいるの?」

「はい。貴族学院自体は、入学試験さえ受かれば、10歳からの入学が認められています。
13歳から15歳で爵位を持たれている方、または継ぐ予定がある方、王族に試験はありません。
科によっては平民も入学可能ですが狭き門です。
爵位を継ぐ予定のない貴族出身の方は平民よりは優遇されますが試験があります。
神学科は特殊なので、15歳以上の方でも、貴族やその子弟の使徒の場合は入学を認められています。」

なるほど。とりあえず、飛び級入学するにしても2年ほどの猶予があるわけだ。

「それでは、神殿に行きましょうか。諸々手配しますので、いったん席を外しますね。」

「え、すぐに行くの?」

「ええ。ここから最寄りの神殿は馬車で3時間ほどですので。ちなみに姫様、使命についてはロミア様はおっしゃられてましたか?」

そうだ、その話もあったのだ。でも、ここを偽ってもなあと思い、正直に話す。

「この身体で生きることを命じられただけで、何かを成せとは聞かなかったわ。」

「それは重畳。ではしばらくお待ちくださいませ。」




あ、そういえば豆腐どうなったんだろう…片道3時間なら、今晩は食べれないだろうか。
マーサにつくり方を指示しておこう。
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