捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

前評判不評?な玩具

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「・・・そうやって遊ぶものなんですね」

「確かに子どもの遊び・・・?」

「え?のどこが面白いの?」


反応薄っ!!


「いや、だから最初に言ったじゃないですか!これは遊び方の説明の為に作ったものであって、実際はもっと違いますから!本当は遊び方も色々あるんですからっ」

「はぁ」


やっぱり反応薄っ!


 最初にコリンさんたちに土産品を含めた木で作る玩具の提案をする時に、アイデアは幾つかある、という話をしていた。

一頻りジェンガで楽しんだビンスさんたちが、私たちの話に加わってきたのは奢りのエール代が結構嵩んだビンスさんが支払いから逃げる為の一声からだった。

「ティアナさん。他にも色々と案があるって言っていただろ?他にどんなものがあるんだい?」

そうやってテーブル同士をくっつけて、ジェンガの余韻でテンションが高いままの皆に見せたのは一枚の絵。完成図と各パーツを私なり思い出して書いたけん玉の絵だった。


絵を見て、遊び方を聞いただけでは分かり難いと思って木の棒を作ってけん玉もどきを作っておいたの。割り箸で作る要領でね。


そうして実演して見せたらこの反応。コリンさんたちはなんとも言えない表情になっているし、リッキー君にいたってはストレートに面白くないと言っているよね!?


「だからこれは遊び方を見せる為のものだから平面っぽい作りになっちゃってるけど、本物のけん玉は立体的なの!全然違うんだってば!」

 半信半疑どころか、全く信じてくれていないのでもう一度言ってみる。確かに面白いと思うかどうかは人それぞれ好みというものがある。だけどここまで反応が無いのもひどくない?
ジェンガの後で期待値が爆上がりだったのが、期待外れでテンションだだ下がり、みたいな?

「と、とりあえず試作品を作ってみようか?ティアナさんの絵と図があるからな」

 テンションが下がってリッキー君まで無口になった状態に居た堪れなくなったのか?コリンさんのフォローが入ったんだけど、けん玉はそんなにテンションが下がるものだったのか。
良かれと思って作った木の棒のけん玉がここまで不評だったとは・・・。

いや、でも・・・たぶん実物で実演すれば評価も変わるはず。

 気を取り直して、他の案も絵を見せながら説明していく。中には私も仕組みがよく分かっていなくて、ふわっとした作り方になってコリンさんたちに頑張ってもらうしかないものもある。

 説明していく内に皆が興味を示したもの。作り手であるコリンさんたちの好みで、個別に興味を持ったもの。直ぐに出来るものから試作を重ねないと出来ないものまで色々あった。

提案したものが全て形になるのかどうか分からない。それでも五人で話し合って担当を決めて作る事にしたら、けん玉で下がってたテンションがまた上がってきたらしい。

 アシュトンさんから明日の夜には必要な道具が届くと聞いたのも大きい。アシュトンさん、コリンさんたちに言うタイミングを見計らっていたんじゃない?
めちゃめちゃ良いタイミングだったもん。


 頼んでいた食器も微調整はあったものの、私がイメージした通りのものだったので契約する事に。価格交渉はコリンさんたちでは難しいと言われたので、今回はアシュトンさんが代理で行う事に。

 ハドソン伯爵家の林業部門に入る事が正式に決まれば、確かに伯爵家の人が価格交渉をするのはおかしい事ではないんだよね。いきなりコリンさんたちにやれ、という方が無理があったね。
 それに仕事を受けるのだって、ハドソン伯爵家の林業部門を通した方が信用もあるだろうし、安く買い叩かれるなどの問題もコリンさんたちが煩わされる事もないだろう。作り手さんたちを真る為にも受注や価格交渉は別の人が専門にやった方が良いんだろうね。


 食器や玩具の製作については、五人全員がいきなり明日から現場の仕事を離れる訳にはいかない。それは当然のこと。

 現場に出ていた八人の中で、食器の注文と土産品の試作に参加するのはコリンさんを含めて四人。代打で現場に手伝いに行っている四人の中ではドッジさん一人。

 ドッジさん以外の代打メンバー三人は五十代から六十代の人たちで、ケンネルさんの現場をプチリタイヤした人だとか。
週に一、二度、コリンさんたちの代打で現場に出る以外は野菜を育てているらしい。育てた野菜はチャックさんとロッキーさんのお店に卸したり自給自足の生活をしている。
 
 代打メンバーの中でドッジさんだけが半年前から現場に出て、これから本格的に現場に入る予定だったらしい。
 そこで今更だけど、ケンネルさんとの現場の雇用契約がどうなっているのかが気になった。ドッジさんは代打メンバーからそのまま外れて木工職人になっても問題はないのかな、と。

 若いドッジさんが本格的に現場に入る事を期待されていたのだとしたら、ケンネルさん側からしたらよく思われないかもしれない。
それにコリンさんたちの都合で代打の人と交代してばかりでも大丈夫なのか。


 コリンさんにその辺りを聞いてみたら全然大丈夫そうだった。ケンネルさん側からしたら、助っ人の人数が八人揃っていればいい。ワトル村の人の方で助っ人に入る人を調整するのは全く問題はない。
素人がいきなり現場に入るのは困るので、新しく助っ人の仕事をしたい人がいる場合は、ワトル側の方で仕事を教える者をつけて何日か現場に入って仕事を覚えていくらしい。

良い、と言い切るにはちょっと微妙だけど緩い雇用契約で良かった。

 代打メンバーの三人に現場に入る日を増やせるかどうかを打診して大丈夫なら、当分の間は食器の生産はドッジさんとコリンさんたち四人の中から一名が入る事になった。

 土産品の試作については、私がいる間に完成するものもあれば完成しないものもあると思う。それについては納期がある訳でもないし焦っても仕方がない。遊び方や使用用途、それに完成品の形がはっきりと分かっていれば大丈夫じゃないかな。

 そしてあんなに不評だったけん玉は、その後、試作品を作ってきたレオさんによって名誉を挽回したのだ。私のけん玉テクニックとともにね。


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ここまでお読みいただきありがとうございます。

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