捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

ワトル村で屋台販売 3

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「あの、このカワスナックを一つ貰えるかしら?起きたらこの子たちにも食べさせてあげたいの」

姉妹のたぶん妹の方を膝に乗せている女性から声が掛かった。

「ありがとうございます。今、お持ちしますね」

「お母さん。僕ももっと食べたいな」

「そうね。うちも一袋買うわ」

娘さんを起こさないように、静かに馬車を降りてリッキー君の屋台まで戻ろうとしたら、もう一組の家族連れのお母さんからも声を掛けられた。

良かった~。乗客の反応は良さそうだ。
シンプルな塩味だから大丈夫だろうとは思っていたけど、膨らんでいるのに噛んでみたら中身は無いからどうかなぁ?と思っていたんだよね。

チョコレートがあったら中にチョコを入れて作れた気がするけど、それってコ○ラの○ーチになっちゃう?

 それからカワスナックの形はクッキーを作る為にイケアのダント親方に作って貰った中で星の形をしたものを使ったんだけど、クリスたちには何の形なのか分からなかったみたいなんだよね。

 どうやら星の形を表現するのに、この国では(もしかしたら世界中で?)クッキー型の定番のあの星型で表現しないみたい。

『じゃあ、星の形はどう表現するの?』と聞いてみたら、クリスは『星は星だろう』なんて答えになっていないようなことを言われた。
アシュトンさんに至っては、『そもそもクッキーの形は丸か四角ではないのですか?』と、やっぱり星の形をどう表現するかの解答ではなかった。

 確かにクッキーを作るなら、丸か四角なら形を整えて切っていけば良いから楽だよね。クッキー型を使うとくり抜いた後に残ったクッキー生地をもう一度丸めて伸ばしてを繰り返すから手間といえば手間なんだよ。

ダント親方にも『こんなの、何に使うんだ?』って不思議がられてたから、色々な形のクッキー型は普通に流通はしていないみたいだった。

 出来れば動物の型とかジンジャーマン型も作って欲しかったんだけど、流石にサイズ的に難しそうだったのでその時は諦めたんだよね。


 今回はクッキー型で一番小さかったのが、星型で3cmはないぐらいの大きさの物を使ったんだけど、出来ればもう少し小さい物が欲しい。

 今の星型のサイズでも、これはこれで見た目も可愛いし作りやすいといえばそうなんだけれど、餃子の皮の大きさのまま作ろうとすると、ギリギリ三つぐらいしかくり抜けないの。

 カワスナックを作る事を前提に、春巻きの皮サイズにしたりクッキーを作る感じで平たく伸ばした生地で作れば、とも考えたんだけど、それはそれで少し面倒だった。

 気持ちの問題かもしれないけど、ひたすら餃子の皮を作って、その中からカワスナック用に取り分けた方が余計な作業がなくてやりやすかった。
餃子の皮からくり抜く数はどれも同じになるから、餃子の皮の枚数から幾つ作れるかの数量の把握も出来るしね。

とはいえ、カワスナック用の型は必要なので、型の製作については領都辺りで作ってくれそうな工房をアシュトンさんに頼んで探してもらう事になっている。

アシュトンさんには頼みごとばかりになってしまうけれど、エトリナ商会が依頼された『花街道(仮)活性化計画』の同行者なのだから仕方ない。

 それにアシュトンさんも私たちに同行している都合上、ハドソン伯爵家と連絡を取り合っているだけで、その場で解決出来ないこと、調査が必要なものなどは別の人に仕事が割り振られているらしい。だからアシュトンさんだけに仕事が増え続けている訳じゃないはず。

 まぁ、ウィルキン村であったアシュトンさんの同僚のピーターさんみたいに、アシュトンさんに恨み言を言う人がこれからも増えていきそうだから、それはちょっと申し訳ないかな。



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