喜びには感謝を!【32話完結済み】

無職無能の自由人

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美しい感謝の世界

強いって楽しい

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 再びの誕生。やっぱり同じ所に産まれるのか。今度は最初から言葉が理解できるのが嬉しいな。
 意識はしっかりしているものの、体は動かないし目はぼやけているし音は水の中かから聞いているかの様だ。乳母の乳を飲むしか無いしすぐ眠ってしまう。
「うびゃぁぁぁおんみゃぁぁぁ(こちらルカ、うんこの処理を頼む)」
「はいはいぼっちゃん。ぼっちゃんは汚れた時しか泣かないから助かりますよ。ありがとうございます」

 お分かりいただけただろうか?うんこして泣くだけで感謝して貰えたのだ。ハードル低すぎて草。
 しかし俺が生まれた時に喜んでいた母上は寄り付きもしない。誕生の時には大きな感謝と喜びを感じた。あれが愛と言うやつかと思ったが違ったようだ。



 そんなある日、朝から物々しい雰囲気がしていると思ったら突然父上がやってきた。今生初対面である。


 冷たい目で俺を見下ろす父。20代真ん中くらいかな、そこそこ顔は整っているが意地の悪さを感じさせる面だ。ちょっとくらい笑ってみせろよ。
「ふん、泣きもせずこちらを睨みつけるとはな。お前に生まれた意味など無い、せめて捨て駒になれるように鍛えておけ」
「かなえよう」
「ん?おい、今何か喋らなかったか?」
 ビビってやがる、だがその願いは聞き届けた。俺は母と乳母から受けた感謝の力を自分の力とした。
 なんて都合のいい願いをしやがる。素晴らしいぜ。

(ポイント交換発動、成長)
 学習速度増加 5段階  50P
 殺害による経験値入手 100P
 技能習得 各種    100P
 訓練補佐          100P

 他にも人物を強化する項目は大量にある。だが俺は現在0歳であり、感謝ポイントも僅かなので、長期的に効果のありそうな学習速度増加を取得しておく。





 それから5年が経った。
 学習速度増加の効果は凄まじい。俺は5歳にして領内最強の力を手にした。学力?まぁ、うん、結構いいんじゃないかな。

「流し切り!」
『ギュウゥゥゥ!』
 流し切りが完全に入って魔物が断末魔を上げる。
「ルカ様!ありがとうございます!これで村の者も安心出来ます!」
「そうか、では今晩は宴としよう。俺は宴の肉を狩って来る。楽しみにしておけ」

 十分な力を手に入れた俺は領内を廻って魔物や盗賊退治をしていた。宴を行うことで村人の多くから直接感謝を受けることも忘れない。

 これはいい。以前ほどシステマチックに稼ぐことは出来ないが、元手がかからないのだ。剣を振るう事がこんなに気持ちいいとは知らなかった。
 魔物たちを屠り、盗賊を締め上げ、沢山の感謝を受けて屋敷へ戻った。





「み、見習いメイドのアリアです!よよよ、よろしくおねがいします!」
「アリア、アリアか。ふむ……」
 新米見習いメイドとして挨拶をしてきたのは前世で縁のあったアリアだった。
 そういえばこいつ、前世の途中ではどうしてたんだ?欲望に飲まれていたのか?記憶にない、忘れてしまったんだろうか。

「あの?」
「アリアは今日から僕の専属だ。よろしく頼むよ」
「へ?」
「よろしく頼むよ」
「へあ?あ、ありがとうございます!」
 とりあえず分かっているのは、こいつは適当に甘やかしておけば適当に受け入れて感謝してくれるという事だ。ボーナスキャラゲットだぜ。


「あ、あの、ルカ様。なぜあたしが専属なんでしょうか」
 見習いメイドのアリアちゃん(10)、メンタルが雑魚でちょっと面倒くさかった。
 母親が働いているので見習いとして館に上がっただけらしいんだが、伯爵であるグランパとは別の屋敷とは言え、バリバリ平民の少女が次期伯爵家で奉公するもんなの?悪役貴族だから嫌われてて使用人集まらないとか?

「あ、あのぅ」
「アリア、望みを言ってほしい。僕の専属なんだから特別な報酬が必要だろう?何でも言ってみて」
「あ、じゃ、じゃあ。その。お母さんが病気なので、お薬があったら治るかなって」
「薬?病気を治して欲しいって事でいいんだな?」
「あ、でも、そんな」
「いいんだな!?」
「ひゃ!ひゃい!」
 めんどくせぇぇ、早く15歳になってください。いや、母親の事があって強くなったとかあるのか?まぁとりあえずさっさと治して信頼と感謝をいただくか。


 そのままアリアの家に向かった。俺はまだ5歳だが既に領内最強、出入りは自由だ。
 アリアの家は領都の中でも端の方、ぶっちゃけると貧乏人エリアにあった。それでもスラムとは違い、下町の雰囲気がある一角。その中のボロ屋が目的地だ。
「おかあさーん!病気を治してくれるって!」
「何を言っているの?この子は?」
「俺はルカ・ヴァルデス。ヴァルデス家の末席だ。今日は俺の専属になったアリアの願いで来た。いいからそのまま目を瞑っていろ。治療×2」
 母親を黙らさせてさっさと治療を済ませる。治療の重ねがけで回復したように見える。
 重病だったんだろうか?前世で母親の話は聞いた事がないが生きていたら世話くらいしただろうし、放っておいたら死につながったんだろうか?判断つかんな。

「え…、急に楽になりました」
「それが俺の力だ。今回は特別だぞ」
「ありがとうございます!この様な貴重な力を私なんかに」
「うむ。アリアよ、回復した母親に何をしてやりたい?」
「んー、美味しいご飯を食べてもらいたいです」
「その願い叶えよう」
 美味しくて栄養価の高い食事と、安く大量に出せる食材をたっぷり出した。
 食材の方は大半を近所に配らせる。こういう行為が嫉妬を生むのは重々理解しているからな。逆に煽るには使えるんだが、今回は必要ないし、多少でも感謝が戻ることを期待しての事だ。


「ルカ様!本当にありがとうございました!あたし、精一杯お仕えします!」
「ルカ様、私にもなんなりとお命じください」
「うむ。母親の方は特に無い、養生してしっかり癒えてからまた元気に働け。アリアには特別な仕事があるからな。勤務時間はずっと俺の部屋に居ろ、そして不便な事があればすぐに言え。特にベッドが硬いとか部屋風呂が欲しいとか感じたら言え、絶対に言えよ、すぐに言え」
「え、そ、それって……」
「アリア、しっかりお仕えするのよ」



 こうしてアリアを取り込み、存分に甘やかすことにした。
 最初は遠慮していたものの直ぐに生来の甘えが顔を出し、トイレ・風呂・ベッド等が俺の能力産の品物に置き換わっていく。
 遠慮も無くなり、能力の驚きも収まった頃にはとても快適な環境が整っていた。
 ポイントも消費したので領内の魔物や賊の退治にも精を出し、名声と感謝を集める。勿論アリアも連れ回して環境の改善に勤しんだ。

 アリアは意外と細かい配慮の出来る少女であり、村人のケアに気づくことが多かった。ほんの少しの手助け、僅かな食料や壊れた道具の修繕等で思わぬ大きな感謝を齎してくれた。
 俺の環境を整える為だけの存在だったのに、今では俺の右腕だ。こんなに優秀だとは知らなかったぜ。



 そんな日々が続き、俺が10歳になった日。
 父上に呼び出され、教会へ礼拝をしに行くと告げられた。
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