転生機族の英雄譚 ~俺は病弱な妹を救うためだけにゲーム知識を駆使して超難関のハーレムENDを目指すことにした~

シンギョウ ガク

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第三十九話 整備科

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 霊機の格納庫を併設している整備棟に着くと、今日の自主訓練で霊機の使用許可申請をするため、いつもの担当者がいる窓口に顔を出す。


「ルシェ・ドワイドです。本日も自主訓練のため霊機の使用許可をもらいに来ました」

「エル・オージェンタムも同様の使用許可を求めます」

「いつも精が出るな。お前らくらいだろ。毎日霊機に乗って訓練してるやつらは。普通のやつらは搭乗ごとに精霊力を消費して毎日なんて乗らない……いや、乗れないんだぞ」

「「体調に問題ありません」」


 俺とエルは、精霊王位の精霊と契約を交わせるほどの膨大な精霊力の持ち主だ。なので、ザガルバンドくらいの低出力容量の霊機に乗っても、精霊力の消費量より回復量の方が勝る。


 専用機で高出力特化の重火力機体を作ると、精霊力の消費量がバカ高くなり、連戦がきついこともある。そういった場合は回復魔法の使い手に癒してもらうか、高価な精霊力回復のポーションをがぶ飲みするしかない。


 ちなみに俺がハーレムENDのラスボス討伐用に作った専用機体は、連戦はほぼ無理な超高出力特化の超重火力仕様機だった。


 アレに乗るとなると、どれだけの加速Gがかかるんだろうか……。人間やめないといけないレベルとかじゃないといいが。


 俺が『神霊機大戦』で最後に乗っていた機体について思いを巡らせていると、窓口担当者が情報端末を差し出してきた。その画面を覗き込む。


「これは?」

「お前が以前から申請してた射撃訓練の許可証だ。正式に校長から受理されたぞ。エルは最終学年だから許可されるのは分かるが、入学間もないルシェに許可されるのは異例中の異例だ。ここに書いてある通り、訓練中は上級生のエルの指示に従うことが許可条件だぞ」


 ついに射撃訓練の解禁がされたのか。近接戦闘は損傷の可能性もあるし、妖霊機ファントムとの戦闘は基本射撃戦だ。


 実家では操練場に併設された射撃場でバンバン撃ててたが、王都に来てからは制限されていた。なので、腕が鈍ってる気がしてて、撃ちたくてしょうがなかった。


「私が指導役ということですね。訓練事故が起きないよう指導は徹底します」

「ルシェの面倒を見るは大変だと思うが、よろしく頼むな」

「承知しました」


 真面目で規律を重んじ成績も優秀なエルは、整備科の講師たちからも信頼が厚い。エルが俺と一緒にやるから、毎日の自主訓練も許されていた。


 とても頼りになる先輩候補生。それが周囲が見ているエル・オージェンタムという人物だ。俺も初プレイの時はエルに対してそう思っていた。だが、俺は知っている。彼女がとんでもなく子供っぽい性格をしていることを。


 俺に決闘で負けた日は、きっと悔しくて駄々っ子のように地団駄を踏んでいたはずだ。彼女がその姿を俺に見せるには好感度がもっと上がって来なければならない。少なくとも機士学校時代では、そこまでの関係には踏み込めないのは分かっている。


 彼女との関係に変化が起きるのは、本編開始後であるからだ。なので、今は鍛錬を通じ自身の好感度をあげつつ、エルとシアの良好な関係構築に腐心する時期。


「エル先輩、指導よろしく頼む」

「ルシェ君のことだから、射撃の腕も私の指導は必要してないでしょう。シア様の力も加わるのですから。だから、事故が起きないように注意だけしておきます」

「だってさー。エルにはもうルシェの実力は見抜かれてるねー」

「一緒に鍛錬をしてれば、ある程度腕は分かりますよ。霊機の操縦や戦闘に関しては、私の指導を必要としない実力です。生身の方はまだ私に分があると思ってますが」

「たしかに生身の方は、エルからまだ一本も取れないからな。どうすれば取れるのか研究中だ」

「ルシェ君に突かれた下方視界の弱点は、私も改善するように努力してますから、そう簡単には取らせません」


 朝の鍛錬では打ち合いを続けているのだが、エルの弱点が改善されつつあり、鉄壁の防御網が完成しつつある。その影響は霊機操縦にも生かされつつあり、低い姿勢で簡単に潜り込ませてくれなくなってきていた。


 今もう一度エルと決闘をしたら、負けはしないけれど、勝てない試合になるだろう。


「んんっ! 喋っていると訓練に使える時間が減るがいいのか? 早いところ、確認処理をしてくれ」


 窓口の担当者の咳払いで、ここに来た本来の目的を思い出す。


「そうだった。ルシェ・ドワイド、これより閉校時間まで射撃の自主訓練に入ります」

「エル・オージェンタムは、ルシェ・ドワイドの指導役として訓練に付き添います」

「承認する。事故のないようにな」


 情報端末に触れ、本人確認がされる。俺たちの本人確認を終えると、そのまま窓口担当者が承認ボタンを押した。これをしないと、保管庫から武器を取り出させてくれないし、格納庫内の霊機にも乗れない。


 情報端末による確認作業は、霊機の盗難防止と、叛乱防止措置だ。


 機士学校は、王都に近い場所であり、霊機は人に対しても戦闘力を持つ兵器であるため厳重に管理がされている。


 もちろん、訓練中に操練場から勝手に離脱すれば、即座に精霊融合反応炉エレメント・フュージョンリアクターが緊急停止する装置が取り付けられているそうだ。


 まぁ、王都には近衛機士たちが詰めてるし、叛乱防止策として使われることもないだろうが。


「ルシェ君、私は先に行って準備をしておきます。霊装着に着替えたら射撃訓練場まで来てください」

「ああ、分かった。そうさせてもらう」

「はい、はい。ルシェはお着替えねー」


 俺はエルと別れると、建物内にある更衣室にシアとともに向かう。建物内は作業つなぎを着た子たちが忙しそうに行き交っていた。


「相変わらず、ここはみんな忙しそうにしてるね」

「旧式機とはいえ、霊機の整備は時間がかかるんだろうさ」


 すれ違う整備科の生徒はシアの姿を見つけると、即座に姿勢を正し頭を下げて去っていく。霊機の整備士は、機士以上に精霊に対して尊敬の念を持っている者が多い。実体化している精霊王ともなれば、彼らには神様に見えるのだろう。


 密かにシアのファンクラブらしきものも存在していると、同期の機士から聞いているが、彼女のヤンデレ気質について行けるのは世界で俺しかいない。


 最近は、俺が鍛錬でいない時に、俺のベッドに潜り込んで匂いを嗅いでいるらしい。そう、ローマンがこっそりと教えてくれていた。


 まぁ、匂いくらい嗅がれても何かが減るわけでもないし、それでシアがご機嫌になるならどんどんと嗅いでもらいたい。とりあえず、ベッドが汗臭くならないよう、いい香りのする匂い袋とかをルカにおすそ分けしてもらうか。


 うちの相棒は、綺麗で可愛いしっかりとした変態であるため、相方としてちゃんと対応してあげなければならない。


 俺が匂い袋のことを考えていると、キョロキョロと周囲を見ていたシアが、おもむろに口を開いた。


「そう言えば、整備科って、機族出身者がとっても少ないよね」

「機族出身者が整備科に入れば、確実に機士になれずに『庶民落ち』だから、進んで選ぶ人はいないのさ」


 整備科の生徒は平民からの志願者が多い。彼らは霊機の整備技術を学びに来ており、卒業後は霊機開発者として製造工房への就職や、機士専属の整備担当者として採用される。この世界、霊機の整備士の需要は高く、給料も一般の仕事よりも高給のため人気が高い職種だ。


 整備士に平民が多いのは、機士とは違い、入学資格に『精霊との契約』が必須とされないためだ。霊機の基礎知識を問われる試験に合格すれば入学できる。それでもかなりの狭き門ではあるが。


「そっか、機士になれなきゃ、そう言われちゃうんだね。機族も大変だ」

「機族出身者は総じて精霊力が高い者が多いしね。どうしても機士を目指す者が多い。機士になれなくても整備士を選ばず、前線で戦う操縦者になるだろうし」

「だから整備士は、平民が多くなるってことね」

「そういうこと。さて、更衣室についた」


 シアがチラチラと視線で手伝いたいアピールをしてくる。相棒に着替えさせてもらうのは気恥ずかしいが、たまにはやらせてあげないと勝手に妄想を膨らませるので、今日は手伝ってもらうことにしよう。


「シア、手伝ってくれ」

「はーい、急がないとエルが待ってるからね! さぁ、さぁ、入って、入って」


 ニッコニコの笑みを浮かべたシアを伴い、俺は更衣室に入ると制服から霊装着に着替えることにした。

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