如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

文字の大きさ
56 / 371

14話 社内に振り撒かれた自分の情報。俺はよくても如月は駄目ーー。

しおりを挟む
 

 ーー次の日、朝


 はぁ~~。結局キス程度しかできなかった。もっといちゃいちゃしたいのに。我慢させられていたせいなのか、今まで以上に、如月を見るとムラムラする。


 会社に到着し、セキュリティゲートにカードをかざして中へ入る。ゲートを入った先に、神谷が紙ごみを沢山抱え、待っていた。


「おはよ。何してんの?」
「遅ぇ!! 大変なことになってるのに!! 早く来い!!」


 神谷に腕を引っ張られ、そのままついていく。大変なことって?? 何かあったのだろうか?


「如月のお昼ご飯作ってたら遅くなっちゃって」
「いい大人なんだから自分で作らせろ!! それどころじゃないって!」


 神谷に焦りの色が見える。相当、何かまずいことが起こっているらしい。社内を足早に歩く神谷に、歩幅を合わせる。


 社内掲示板の近くまで来ると、神谷は止まった。掲示板の前は人だかりが出来ている。神谷は「すみません」と前へ割り込んだ。その後ろを着いていく。


「なんだ…これ……」


 掲示板を見て青ざめ、言葉を失う。社内掲示板には、自分と如月が手を繋いだ写真や、ホテルから出てきた写真で埋め尽くされていた。


 ところどころ剥がした跡がある。神谷がやったのだろう。


 1文字ずつプリントして貼られた『人気小説家如月弥生の恋人』という文字。なんでこんなことを?


 社内に変な噂が広がろうが、自分のセクシュアルマイノリティが人為的に公開されようが、俺はどうなってもいい。


 でも、如月は執筆活動で顔を出していなければ、自分のプロフィールも当たり障りないことしか書いていない。


 今後の活動に影響が出るかもしれない。自分のせいで、如月が苦しむことになるのは嫌だ。


「…………っ」


 如月に関係するものから、一枚一枚剥がしていく。いくら俺が鈍感でも、犯人は誰だか分かる。手に入らないと分かり、如月を潰しに来たということも。許せない。本当に許せない。


「……ふざけんな……」


 怒りが沸き、次第に紙や写真を荒々しく掲示板から剥がす。人だかりは散る気配がない。それどころか、人の不幸を喜ぶように、楽しんでいる。


 カメラのシャッター音すら聞こえる。俺の怒りを煽るようなシャッター音に、はらわたが煮えくり返った。


「何? 俺が誰と付き合おうと勝手でしょ? 文句あるの?」


 振り返り、集まっている人に言い放つ。


「マジで、こんなことして許されると思ってんの?」


 手に力が入り、持っている紙を握り潰す。


「ねぇ、写真撮ったよね? SNSにあげるの? 人が傷つくの見て楽しいの? そんなことして何になるの? 他人の共感を得て気持ち良くなってストレス発散ですか?!」


 胸の中から、怒りが突き抜け、止まらない。


「おい、やめろ! 伝える相手を間違えるな!!」


 神谷に肩を掴まれた。間違える? 間違えてない!!!


「はぁ? SNSにあげられたら、こんなのデジタルタトゥーになるだろ!! 俺は良くても、如月にとっては足枷にしかならないんだよ!! さっき撮ったやつ誰? 今すぐ削除しろ!!」


 この場にいる人、全員を睨んだ。ざわざわしていた雰囲気は、一気に静まり返った。


「冷静になれ。感情的になっても、上手くいかない。全部一緒に考えるから」
「神谷ぁ……どうしよう、俺のせいで如月が世の中に好奇の目で晒されたら……」


 神谷が残っている写真や紙を、全て剥がし始めた。ありがとう、神谷。手の中にある、一枚の写真を見る。手を繋いで幸せそうに笑っている如月。絶対に、この笑顔を壊したくない。


「とりあえず、証拠として、これ家に持って帰る?」
「う~~ん。犯人わかってるし要らない……」


 掲示板から剥がした紙や写真を胸に抱え、経理課に向かう。掲示板の前から移動したというのに、気まずい空気は経理課でも流れた。


 2人でシュレッダーに紙や写真を入れていく。如月の笑顔も一緒に切り刻まれるような気がして、少し気分が悪くなった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...