81 / 371
17話(3)大雨の中びしょ濡れで帰宅?!ドアの向こうで何をしているの?!
しおりを挟む「雨降る前に学校から帰ってこれて良かったね~~」
「えぇ。急に崩れましたね」
少し遅れた梅雨入り。空が灰色の雲に覆われ、遠くの方で雷鳴が鳴り響くと、大粒の雨が降り注いできた。
睦月さんは多分、傘を持っていない。少し心配である。
でもこの雨の中、迎えに行くと、100%、全身が濡れる。それはちょっと嫌だ。卯月が鞄から勉強道具を出しながら私を見つめた。
「如月、傘届けなくていいの?」
「えぇ~~……う~~ん。今日は大丈夫……」
せめて、睦月さんが濡れて帰ってきても、すぐに温まれるよう、お風呂を沸かしておこう。浴室に向かい、風呂を洗う。
風呂掃除が終わり、リビングに戻る。窓から外を眺めた。完全に土砂降り。うーん、うーーん、うーーーーん。再び思い悩む。
傘ねぇ。雨、凄い。家から出たくない。ごめん、睦月さん。許せ!!! 睦月の帰りを待ちながら、リビングで気ままに本を読む。気づかぬうちに、時間が潰れていった。
がちゃ。
「ただいまぁ~~雨超やばいんですけど~~」
陽気な声が玄関から聞こえ、タオルを持ち、迎えに行く。
「大丈夫ですか?」
当たり前のように、全身びしょ濡れだ。水が髪の毛から滴り、ワイシャツは濡れ、肌に張り付き、透けている。
雨に濡れてえっちすぎる!!! もう、見ていられない!!! 赤面する顔を持ってきたタオルで隠す。
「何やってるの? タオルちょうだいよ」
「あっ、ちょっ」
睦月がジャケットを脱ぎながら、私のタオルを奪った。睦月から顔を背ける。
「変なの。あ~~拭いてもキリがない。もういいや、ここで脱いじゃお!!」
えっ?!?! ここで脱ぐの?!?! 退散しよ!!! 睦月に背を向けて、歩き始めると、肩を掴まれ、引き留められた。
「私、和室行きますんで……」
「えっ? 待ってよ! 何? 拭いてくれないの? 拭いてよ!!」
「なんで私が拭くんですか? 自分で拭けば!!」
肩を掴む手を剥がそうとするが、力が強くて、離れない。ぐぐぐ。
「ほら、早く拭いて」
奪われたタオルが返された。もうっ。睦月と一緒に廊下へ座り、フェイスタオルで睦月の頭をわしゃわしゃと拭く。
「保護者会どうだった?」
ワイシャツのボタンを外し始める睦月にドキっとする。目線は自然に胸元へ向く。ま、脱いでも肌着だから見えないけど。
「兄の嫁ですって先生に言ってきました」
「ぇえ?『結婚してる』みたいなこと言っちゃったってこと?」
「いや、ちゃんと恋人って言ったので大丈夫ですよ。あ、睦月さんがオール5で生徒会やるタイプって聞きました」
立ち上がり、洋室から睦月の着替えを持ってくると、いつの間にか、睦月が上半身全て、脱いでいた。目のやり場に困る。
「なるほど。成績は良かったよ、これでも。着替えありがとう」
「はぁ~~なんでこういうことするかな」
睦月の後ろから抱きしめ、肩に顎を乗せる。体が冷たい。今更どんな格好をしているのか気づいたのか、睦月の頬が赤く染まった。
「如月?」
「お風呂沸かしておきました。入ったら? 早く入らないと襲いますよ~~」
「ちょっ、入る! 入るから!!!」
悪戯な笑みを浮かべ、睦月を見ると、慌ただしく、着替えを手に取り、脱衣所へ行ってしまった。
やれやれ。結婚ねぇ。同性同士の結婚は、日本では出来ない。代わりにパートナーシップ制度というものがある。
自治体に宣誓するようなものだ。
法的効力は何もなく、結婚に相当する関係になり、同一生計者として認められたりはする。そのためだけに、根掘り葉掘り聞かれて、自治体に提出するのは少し億劫だ。
睦月さんもまだ若い。戸籍に変動はないが、あとで解消することになったりした時、面倒くさい。
結婚指輪をみたり、嫁とかなんとか言われ、自分の中で、少し結婚を意識したが、宣誓してまで何かを結ぶ必要はないだろう。
今のままで充分だ。
「脱ぎっぱなし!!」
濡れたジャケットをハンガーにかけ、廊下に落ちているタオルと肌着、半袖シャツを持ち脱衣所へ行く。自分の脱ぎ捨てたものは気にならないが、人のものは気になる。
ガラッ。
洗濯機に濡れた洋服を突っ込むと、睦月が浴室から出てきた。思いっきり、脱衣所の扉を閉められる。えっ? 何? 脱衣所に2人きりになり、鼓動が早くなる。
「何故今出る!!!!」
「え? 如月が来たから。いいじゃん。てかさ、もう何度も見てるんだから、いい加減、慣れろよ」
とん。
肩を軽く押され、引き戸に背が当たった。迫られている!!! 取手に手をかけ、逃げる準備をする。
「無理ーーーーっ」
睦月が扉に手を突き、私に唇を重ねた。髪から水滴が落ち、私の顔を伝う。お風呂上がりの体から出る湯気が熱い。
薄目を開けて睦月を見ると、顔が火照っており、色っぽく見えた。まぁいっか。少し開いた口唇の隙間から舌を差し込む。
どんどんどん。
扉の向こうから強めにノックされ、睦月が唇を離して舌打ちをした。
「うおーーーーい!! ドア閉めて何してるの!!」
「なにもしてないですよ~~」
扉を開けて、外に出ると、睦月が卯月を睨んだ。
「……空気読め」
「私はいちゃいちゃを邪魔することにした!!!」
「そういうのは良くないと思うよ?」
「ぇえ? 家の中でいちゃつきまくる方が良くないと思うけど~~じゃ、そういうことで」
睦月が左の口角が上げ、ひきつった笑みを浮かべている。兄妹ケンカかな。言いたいことを言ってスッキリしたのか、卯月はリビングに戻り、勉強の続きを始めた。
まぁ、私は邪魔されようがどっちでもいいけども。睦月さんの機嫌が悪くなるのは嫌だな。睦月と一緒にキッチンへ向かった。
11
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる