如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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18話 願い事はひとつじゃない?!

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 ーー金曜日 学校帰り


「良いものもらっちゃったぁ~~」


 校内の手入れをしているオジサンに、もう捨てるからと譲ってもらった。自分の身長より高くて、大きい。そして、持って歩くたびに、緑の葉がさらさらと動いた。


 そうだ、折り紙と短冊を買って帰ろう。きっと2人とも喜ぶはず!! 2人の喜ぶ顔を想像すると、口元が緩んでしまう。 


 100円ショップで、折り紙と短冊を購入する。周囲の客は私が持っているものが、迷惑なのか、白い目で見てくる。


 よしよし。必要なものは全て揃った。早く帰ろう。折り紙と短冊をスクールバッグに突っ込み、100円ショップを出た。


 大きな緑の荷物を両手で担ぎ、家に帰る。


 家の前まで来たは良いが、これ、部屋に入るかな? 緑の荷物を横向きして、家の中へ入る。如月が玄関まで迎えに来ると、目を見開いて驚いた。


「如月、ただいまぁ~~」
「おかえーーってなんですかそれ!」
「笹ですけど? 重たいから如月持って~~」
「え、これ家の中で飾るんですか?」


 如月に笹を渡し、リビングへ一緒に向かう。


「そうだけど? 短冊も買ったよ?」
「わお……まぁ、サマーバレンタインって言いますもんね。折角ですから楽しみましょう」


 そうこなくっちゃ!!!


「でもどこに飾ろう?」
「んーーやっぱりベランダ?」


 2DKのアパートにこのサイズの笹は大きい。如月が笹をリビングの壁に立てかけた。テーブルの上に、買ってきた短冊と折り紙を広げていく。


「とりあえずそれで良いんじゃない?」
「ですかね」
「七夕飾り作ろう!」


 ハサミを用意して、如月と作り始めた。


 う~~ん。簡単そうに見えて、意外と難しい。ハサミで切り込みを入れて、伸ばすだけの網飾り程度なら作れるが、糸に通す星飾りは上手に作れない。


 如月はスマホをみながら、吹き出し、提灯ちょうちん、網飾りなど器用に作っている。中々細かい作業は出来るタイプらしい。


「如月って手先は器用だよね」
「それはまぁ。指先が器用じゃないと楽しめないでしょう?」
「何を楽しむの?」
「さぁ? 出来ましたよ」


 如月の手には糸に小さな星が通った飾りが出来上がっていた。星飾り上手!!! 如月は立ち上がり、網飾りを笹にひとつ付けた。


「睦月さん帰ってきてから飾ります?」
「短冊以外はつけちゃおうよ」
「それもそうですね」


 折り紙で作った七夕飾りをひとつずつ付け、笹をデコレーションしていく。緑一色だった笹は、彩られ、七夕らしい華やかな見た目になった。


「ただいま~~疲れたよーーってなんだこれ!!」


 兄が笹を見て、顔を引きつらせる。私は腰に両手を付き、自慢した。


「七夕です!!」
「いやいやいや、これ、七夕終わったらどうすんの……」


 現実的だな。兄が大きな笹を見つめている。まぁでも、後始末は私の仕事じゃないし。


「え? 知らんし」
「睦月さん、お腹空きましたぁ」


 如月が兄を後ろから抱きしめた。帰ってきてから早々、いちゃいちゃですか。まぁいいけど。


「私、七夕っぽいものが食べたいです」
「七夕っぽいもの?? 作ったらどんな願いごとを叶えてくれるの?」


 兄は振り返るなり、如月を見つめている。


「あはは、七夕えっちとか~~?」
「それ、忘れんなよ」
「え?」
「よっしゃあ!! やる気出た!! 七夕良いね! 七夕!! 七夕料理作る!!」


 兄は如月の腕をすり抜けると、部屋着に着替え、キッチンへ向かった。


「……もう冗談を言うのはやめよう」
「どんまい」


 笹の前でしゃがみ、落ち込む如月の肩を軽く、とんとん叩き、励ます。


 それにしても、七夕料理ってなんだろう? 気になる。兄の後ろからキッチンを覗く。素麺を茹でている間に、オクラを切っていた。茹でた人参は星形にカットされていて可愛い。


 服はダサいのになんというセンス。


 兄がピーラーできゅうりをスライスし始めた。七夕料理への情熱を感じる。そんなに如月とえっちしたいのか。気を遣った方がいいのかな。


 茹で上がった素麺をざるに開け、水で洗い流し、滑りを落とす。素麺を大皿に移すと、錦糸卵、人参、きゅうり、オクラを天の川のように盛り付けた。


 ぉお!! まさに七夕料理!!!


「出来たよ、如月ぃ~~」
「あ、ありがとうございます」


 如月が少し複雑そうな顔をしながら、素麺を受け取り、テーブルに運んだ。


「約束楽しみにしてるね」
「え? う、うぅん……」
「ほら、食べよぉ!!! いただきま~~す!」


 席に着き、両手を合わせた。


「「「いただきます!!」」」
「ん~~美味しいです~~」
「だろ~~?」


 オクラもきゅうりもよく合っている。本当に美味しい。ずるずると、素麺が進み、あっという間に食べ終わった。


 後片付けを済ませ、テーブルの上は、いよいよ、短冊モード。テーブルの上に短冊を広げ、書く準備をする。


 真剣に願い事を書く如月を見つめた。


「何書こうかなぁ~~」
「どんな願い事書いてるの?」
「え? 今度新作発表するので、『新作が売れますように』ですけど……」
「現実的……」
「そこは『睦月さんと一生一緒に過ごせますように』とかじゃないの?! はい、書き直し!!!」


 兄が不服そうに、もう一枚、如月に短冊を渡した。


「えぇ! う~~ん」


 如月は渋々、もう一枚受け取り、悩みながらまた書き始めた。今度は如月が兄の短冊を覗いている。


「『金が欲しい』ってなんですか!! 私よりひどい! 愛のかけらもない願い事!!」


 如月は兄の短冊を両手で破り、床に捨てた。


「何するの!! せっかく書いたのに!!」
「そんな願い事認めませ~~ん。はい、書き直し」


 如月が新しい短冊を兄に渡している。


 如月と兄が短冊を書く様子をじーーっと見つめる。なんだか微笑ましい。いざ短冊に願い事を書こうと思うと、内容が決まらない。スラスラ書ける2人が羨ましい。


「出来た!!!」
「確認します」


 如月が睦月の短冊を取り上げた。


「『如月に挿れられますように』って!! なにこれ!! さっきよりひどい!!」


 如月が兄の短冊をビリビリに破き、また床に捨てている。お兄ちゃんって、短冊のセンスないんだな。


「ちょっとぉ~~やめてくれる? 自分何書いたのさ」


 兄は如月の書き直した短冊をみた。


「『睦月さんのご飯を一生食べたい』ね。俺のご飯そんなに好き?」
「好きですけど何か?」
「なら、一生作る」
「おい!! なに勝手にラブモード入ってんのさ! 私の目の前で普通にキスすんな!!!」


 最近、身体の中がモヤモヤするので、いちゃつきを反対運動中!!!


「もぉ何~~? いいじゃん別にぃ」
「私、ベランダに運んで来ますね」


 兄がもう一枚短冊を手に取り、また願い事を書き始めた。何枚書くの。如月が飾りが落ちないように笹をそっと持ち上げ、ベランダへ運んだ。


 書き終わった短冊を持ち、ベランダへ向かう。如月がベランダの隅に笹を立て掛けている。笹の背丈が大きくて外に、はみ出てしまうらしい。


 笹が風に揺られ、さらさらと動いた。


「飾ろっか」
「本当に叶うかな?」
「『さらさら』と笹の葉が立てる音は、神様を招くと言われていますよ。今日は風がありますし、願い事を運んでくれるかもしれませんね」


 如月が笹の葉にそっと触れ、短冊を引っ掛けた。兄もまた、笹に短冊を引っ掛ける。


「ま、七夕は明後日ですけど」


 如月が笹にかかる短冊を手に取り、願い事を見つめた。


「それ、俺の短冊」


 兄は後ろから如月の肩に顎を乗せ、一緒に短冊を見た。


「『如月といつまでも仲良く過ごせますように』ですか。そんなに好き? 私のこと」
「好きですけど何か?」
「やれやれ、いちゃつきが止まりませんなぁ~~退散退散」


 キスしようとする2人の邪魔をしないように笹に近づく。如月の短冊が目に入り、指先で掴み、読んだ。


 『3人笑顔で楽しく過ごせますように』


 いつもありがとう。自然に笑みが溢れる。


 自分の短冊を笹にかける。私の願い事? 『成績が上がりますように』だよ。だって、受験生だからね。私は家族の笑顔と健康を星に願い、リビングへ戻った。


 *


「……ん、睦月さん。そろそろ……あっ」


 ちゅ。


 如月の首筋に何度も唇を付ける。首は心を開いた人にしか触ることが出来ないセンシティブな場所。愛情表現にはもってこい!!!


「首筋じゃなくて、口にして。睦月さん」
「え? う、うん」


 なんだか急に恥ずかしくなり、頬が染まる。如月の頬に触れ、優しく唇を重ねる。如月の舌先が俺の口唇の隙間からゆっくりと入ってきた。口蓋がなぞられ、身体が熱くなる。


「んんっ……んっ……ん…ふ……んっ」


 それにしても、俺は紫陽花以降ずっと我慢している!! 如月はイタズラに俺の肌に触れたり、性的興奮を促してくるくせに、俺の反応だけ楽しんで放置!!


 俺は欲求不満だ!!!


「っん…はあっっ…もぉっ無理っ!!! むらむらする!!! シたい!!! えっちシたい!!!」
「へ?」
「卯月に許可取って、今日如月の家行こう?」
「ぇえ~~……」
「俺、七夕料理作ったよね??」
「うっ……ずるい。まぁいいけど」


 如月は笹を少しへし折ると、リビングに戻った。


 ずるくないもん。如月が勝手に自分で言ったことだし。約束はちゃんと守ってもらわないと!!! 嘘はダメだよ、如月。


 ベランダから星を眺める。七夕。一年に一度、織り姫星と彦星が天の川を渡って会うことが出来る特別な日。家から星を眺めるなんて久しぶり。


 時間が早く、夏の大三角はまだ見えない。如月と後で2人でゆっくり見よう。卯月に話を付けるためにリビングに向かった。


「卯月、今日、泊まってきてもいい?」
「好きにすれば。朝ごはんだけ作ってから行って~~」
「作らさせて頂きます!!」


 軽い足取りでキッチンに行く。リゾットとミネストローネにしよ。卯月のための贅沢朝ごはん。フライパン片手に料理を始めた。

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