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18話(12)もう二度と無理強いはしない。これで昨日のことは全て清算ーー。
しおりを挟むーー翌日 日曜日、七夕
朝10時。家事が一段楽して、リビングで休む。如月はリビングでノートパソコンと睨めっこをして、執筆をしている。向かい側へ座り、邪魔しないよう、静かにスマホをいじる。
ピンポーン。
「誰? 約束なんてしてないけど」
立ち上がり、玄関まで行き、覗き穴から相手を確認する。旭だ。えっ。来てくれたの? 昨日色々あったけど! ドアを開け、旭を部屋に招き入れた。
「旭! どうしたの?!」
「謝ろうと思って。来ちゃったー、入って良い?」
「入って入って!!」
明るく振る舞ってはいるけれど、どこか申し訳なさそうな表情をしている。俺が背中を押すと、旭はスニーカーを脱ぎ、部屋に上がった。
「むっちゃん、ごめんね。あんなことするべきじゃなかった。本当にごめん。反省してる」
リビングに向かう足を止め、旭は俺に頭を下げた。旭を真っ直ぐ見つめ、口を開く。
「もう二度としないって約束してくれる?」
「うん、二度と無理強いはしない」
無理強いは、ね。まぁいいけどさ。
「これで清算ね」
「ありがとう、むっちゃん……」
「テキトーに座って」
「おう」
キッチンへ向かい、コップを3つ取り出す。少し、心配で振り返って、如月を見る。なんで旭が如月の隣に座ってるの?? そこ、俺の場所!!!
「は? なんでここに座るんですか?」
如月がパソコンを閉じて、旭をじとりと見ている。ケンカしないといいけど。そんな如月の態度なんてお構いなしに、旭は机に片肘を突き、如月を見つめ返した。
「えー? なんとなく。如月サンて何歳なの?」
「37ですが何か?」
「見た目からはそこまで年上に見えないなー。ね~~下の名前はなんて言うの?」
ちょっ!!! 如月に近づき過ぎじゃない?!?! 如月と距離を詰める旭にイラッとする。近づいた分だけ、如月が横にずれた。
「弥生……。なんで近づくんですか?」
「へえ! 和風! 元々距離は近い方だし? スキンシップも好き~~」
如月が横にずれた分、旭がまた近づき、如月の背中を手で触った。な…なぁぁあぁあ!!! 俺の如月に触るな!!!
「お兄ちゃん、お茶溢れてるよ」
「今日は昨日のお詫びにお出かけの誘いをしに来た。3人でどうかな?」
旭は如月の肩に腕を回し、抱き寄せた。如月が顔を傾け、旭を見つめている。はぁあぁああぁあ!!! 近い!!! 近すぎる!!! やだあ!!!!
「お兄ちゃん、お茶溢れてるよ」
「ちょ、何?!」
「人との距離近い方なんで。弥生さんって、近くで見ると本当に綺麗」
如月の顔にかかっている髪の毛を、旭が指先で拾うと、如月の耳にかけた。如月の頬がほんのり赤くなっている。ぉおおぉおお……!!! これ以上は!!!!
「お兄ちゃん、お茶溢れてるよ」
「ちょっと……やめてくださいよ」
「ぁあぁあぁあ!! やめてぇえぇえ!! 何してんの?!?!」
如月と旭の顔、近!! 旭が横向いたらキスじゃん!! コップの縁いっぱいに入ったお茶を、両手で持ち、如月と旭の元へ行く。
「むっちゃん、お茶持ってきてくれたの? すごい量だね? ありがとー」
「如月から離れて!!」
机に勢いよく、コップを置く。どん!!! がうがう。離れろ!!!
「元々距離が近いんで、普通なことだよ? 離れませーん。仲良くなるためにスキンシップも兼ねてるからね~~」
「何それ!!!」
「むっちゃん、この後、弥生さんも含めて3人で出掛けようよ」
なんで下の名前で如月のこと呼んでるの?! 恋愛対象(?)は俺じゃなかったの?!
「いいけどぉ……」
「離して? 旭さん。睦月さんが妬いてるから」
「やだー。キスする? 弥生さん」
は? 何言ってるの?!?! 見つめ合う2人に(如月は睨んでるのかもしれないけど)イヤな汗が流れる。
「なんで、貴方と。する訳ないじゃないですか。早く腕離しーーっん…」
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「はぁあぁあぁああ?!?!」
「え…………」
「旭!!!」
如月と旭の間に割り込み、2人を引き裂く。
「ごめーん、我慢出来なくなっちゃった。もう、何? 雰囲気がさぁ、色っぽくて」
ぁああぁあぁあ!! 如月の色香フェロモン!!! 分かるけど!!! ぎゅう。旭に如月を取られたくなくて、如月に抱きつく。
「旭ぃ~~!! 如月とらないでぇ!!」
「俺、2番目でいいし」
「……すみません、ちょっとお手洗い……」
如月が立ち上がると、旭も一緒に立ち上がり、にっこり笑って、旭が口を開いた。
「お手洗い行くの? 手伝おうか?」
「何を?」
「色々?」
「だめぇええぇええ!! 旭!! ほら、良い子だから俺と遊ぼう!!」
旭の後ろから抱きつき、押さえる。もぉ、何この状況~~。
「もう、何むっちゃん~~やめて~~」
「如月早く行ってぇ~~」
「す、すみません……」
如月が早歩きでこの場を離れたのを見て、安心する。俺たちの状況を面白そうに、卯月が見てきた。
「なんか大変なことになってんね」
「もぉ、どうしよ~~卯月~~」
「3人で出かけるに一票。如月×旭かぁ。最近お兄ちゃんとのいちゃいちゃは見飽きたからなぁ」
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「卯月……?」
「良いかも! 如月×旭! 強引な旭と甘え如月! ぉお!! 旭さん、頑張って!!」
「道を間違えるな、妹よ!!! あとそれは違うと思う!!!」
「がんばるぅ」
「ぇえ、やだぁ~~行きたくないぃ~~」
「ほら、出掛けようよ、むっちゃーん」
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