205 / 371
31話 譲れないことは譲れない! 検索履歴は秘密の扉?!
しおりを挟むごちそうさまでした。夕食後の食器洗いや風呂掃除など、本日の残った全ての家事を済ませる。如月は帰って来てからずっと、パソコンと睨めっこ。つまらん。もっと可愛がってほしい!!!
和室へ入り、襖を閉めた。如月が一瞬、こっちを見たけど、すぐに視線はパソコンへ。如月にとっては、これが仕事かもしれないけど、少し構って欲しい。
座ってる如月の後ろから抱きつく。そのまま腰を下ろし、背中に頬をつけた。こんなに密着しているのに、タイピングの音が止まらない。無視されている。むー。
「さびしいぃ~~構ってぇ~~」背中に頬を擦る。すりすり。
「はぁ? さびしくないですって。ほら、私、ここにいますから」
かたかたかた。まだ止まらない、指先の音。
そして俺へは塩対応。
「如月ぃ~~すき~~ちょっとだけ休憩! ねっ? ねっ?」如月の顔を覗き込むと、浅いため息と同時に、頭が撫でられた。
ようやく、キーボードを叩く手が止まる。
「も~~」
「ちょっ……わぁっ」
急に腕がグイッと引っ張られ、如月の胡座の上に身体が倒れた。背中を押され、上半身が起きる。胡座の上に横向きに座る姿は、もうお姫さま。恥ずかし。頬がほんのり赤く染まる。
「後ろに居たらキス出来ないでしょ」
顎が掴まれ、顔の向きを如月の方へ変えられる。艶やかな笑みを浮かべ、少し強引に唇が啄まれる。
「~~~~っ」強引な口付けに顔が熱くなる。
「あ、旅行どうします?」Tシャツの下から胸元へ手が這う。
「んっ……シルバーウィークとかどうかな……あっ……卯月は如月の実家にいってもらって……」胸の先端が親指の腹で擦られた。
「都合のいい預け先みたいに利用しないでくださいよ~~まぁいいけど……ん」ちゅ。不意に挟まれる、口付け。なんかだか照れる。
「秋だから…あっ……紅葉とか……京都いいかも…んっ…寺的な……ぁあっ……もう~~触りながら話さないで~~」如月の指先が胸の先端で遊ぶ度に体がビクッと反応する。
「ふふ。だって可愛いんだもん。大阪行った時も、京都推してましたよね。行きたいの?」突起が少し強めにつままれた。気持ちい。
「やぁっ…別にそういうわけじゃ……風情とかありそうだから如月好きかなって……」照れくさくて、如月から目線を逸らした。
Tシャツの下を這っていた手が戻っていき、優しく背中に添えられた。背中と肩が如月に引き寄せられ、軽く抱きしめられる。
「睦月さん、ありがとう。でも2人で行くところだから、私だけじゃなくて、睦月さんも行きたいところを選びましょ」
穏やかな笑みを浮かべ、近づく如月の顔に気持ちが溶かされそうになる。目を瞑り、唇が重なるのを待った。
「如月…………」
スパン!!!
襖が勢いよく開いた。
「……………」如月は遠い目になった。
「今良いところ!!! タイミング!!! あと少しでキスだったぁ!!!」
「知らんがな!! 好きあらば、いちゃいちゃ、ちゅっちゅっして!!! それよりもなんと!!! 重要なお知らせがあります!!!」卯月は紙を1枚、俺の目の前へ差し出した。
保護者各位『秋の稲刈り体験』
「稲刈りだぁあぁああ~~っ?!?!」やりたくなくて顔が引きつる。
「そういえば、田植えしましたもんね。ちゃんと収穫までするんですねー。すごいです」如月は差し出された紙を手に取り、眺めた。
「へー、田んぼに入って稲刈りね。長靴履くんですね。睦月さん頑張って」面倒くさそうに保護者便りを俺へ押し付けてくる。
「いやいやいや、前回植えた人が刈るのが主流でしょ!!!」紙を押し返す。やりたくない。
「如月はお父さんポジションをもうやり通すことが出来ないので、お兄ちゃんは私と収穫します」その言葉に固まる。
「え……やだ……暑そう……長靴とか履きたくない……ださい……」目が淀む。
「しつこいくらい(長靴)って書いてありますよ。履かないと~~似合うと思いますよ~~長靴」如月がクスクス笑っている。
(自分はやらないからってバカにして!!!)
「私も行こうかな、稲刈り。睦月さんの長靴姿見たいし」
嘲笑うように口元に手を当て、ぷっと笑う姿がまたむかつく。でも、来てくれるなら、一緒に行きたい。
「行こうかなって……何? 行かないつもりだったの? どんな時も俺のそばに居てよ」如月のシャツを掴み、見上げる。
「それはずるいですよ、睦月さん……」困ったように笑う如月の手が、優しく頬を撫でた。
「如月も植えたんだから、一緒にきて。それに、3人じゃないと落ち着かない。 じゃ、そういうことで! ごゆっくりぃ!!」
卯月は立ち上がり、和室を出た。
スパン!!!
襖が閉まる。静かに開け閉めは出来ないのか。押し付けられた保護者便りを畳の上に置き、如月の目を見る。さっきの続き、しよ? 言葉にはしないが、甘えた表情で訴える。
「で、旅行はどこ行きますか? 9月の三連休」
伝わらなかった。まぁいいけどさ。それも大切だもんね。
ノートパソコンを広げ『旅行 京都』で検索する如月の手元を見る。ブラインドタッチが早い。やっぱり京都行きたいのかな? 画面に流れ出てくるオススメプランを眺めた。
「睦月さんはどこに行きたいんですか?」
「う~~ん」横を向いていた体を正面へ向け、画面を見て真剣に考える。
「私、お茶持って来ますね」
俺をみて、ニコッと笑い、キッチンへ行ってしまった。行きたいところねぇ。如月と一緒ならどこでもいい。検索エンジンをクリックすると検索履歴が表示され、いつもとは違う如月の一面が垣間見える。
ふぅん、そんなこと調べるんだ。
アブノーマルプレイって……俺とナニしたいの? 普通のえっちじゃ物足りないの? 如月さぁああん!!! 俺、変なことはやだよぉ~~。
なんで生クリームと蜂蜜めっちゃ調べてるの? なんか作って食べるの? よく分かんないんだけど。
たくさんの検索履歴の中うちの『指輪』という文字が目に留まった。指輪? どうして? 内緒で指輪、買ったりとかしないよね? 少し気になり、検索履歴をクリックする。
マリッジリングの専門店のホームページを中心にクリックした痕跡がある。いやいやいや、一緒に見に行ったじゃん。どういうつもり? 割り勘はするつもりないけど、買ってもらうつもりもない!!!
これは言うべき? でも人の検索履歴を勝手に見ている自分もどうなのか……。なんだか言うのは気まずいな。
「睦月さん、良いところありました?」
後ろから如月の気配を感じ、慌てて開いていた画面を閉じた。見られたかな? 如月の方を見ると、きょとんとした顔で首を傾けている。机にコップが2つ置かれた。
「いや……まだ……」
先ほどのページが気になって、薬指の指輪に触れてしまう。うーーん。仮に言わなかったとして、お互いが同じタイミングで指輪を用意し、ダブっても困る。
「何かあるの?」何かを察したのか、不審そうに、じぃっと見つめてくる。
「うん……まぁ、あるような、ないような……」その視線に耐えられず、目線が泳ぐ。
やっぱり言おうか。このまま黙っていて、何かを疑われるよりは、自分の思っていることを伝えた方がいい。
「……なんで指輪調べてたの?」勝手に履歴を見た罪悪感もあり、如月を直視出来ず、俯く。
「あーー……それは……その……まぁ……」
曖昧な話し方が気になり、顔を上げると、如月は赤く染まった頬を人差し指で掻いていた。照れてる。かわいい。
「今の指輪……お互い元々、薬指用に買ってないですし……サイズが合ってないのが気になって……もうこの際買っちゃおうかなって……クリスマスプレゼントとかにして……」
やっぱり!!! 買おうとしてた!!! 危な!!! てかクリスマスプレゼントに指輪?!?! 何それ!!! ずる!!!
「だめっ!!! 指輪は俺が買います!!! 今の指輪はサイズ直す!!!」ぎゅっと如月の手を握った。
「ぇえ……でも高いし……」
如月は眉を八の字に下げ、心配するような表情を浮かべた。
そんなめちゃくちゃ良い給料ではないが、年齢の割にはそれなりに貰っている。買えないことはない。そして俺が如月へ贈りたい。これは譲れない。
「お願い、俺に買わせて?」
握った如月の手。細くて長い指をゆっくりと広げた。爪先は綺麗に切り揃えられており、長くは伸びていない。これは俺への配慮。手荒れもなく、筋が立つ手はとても綺麗。
少しばかり、如月の薬指に触れる。
「そうですか。私に何か伝えたいことでも?」
目を細め、意地悪く笑う如月を見ると、つい言ってしまいそうになる。でも今は言わない。あともう少し、もう少しだけ待って、如月。
俺の準備が整う、その日まで。
「…………」
ただ、ただ、如月を見つめる。そうだよ、と笑って言えばいいのに。
ここで同意したら、自分がしようとしていることが、全て伝わってしまいそうで、言えない。いや、もうバレているのかもしれないけれど。
「ふふ。いいよ、別に答えなくても。その代わり、旅行代は私に全額出させて?」
「ぇえ~~それとこれとはなんか違うような……」
如月の顔が近づく。
目を瞑ると、唇が触れ合い、さっきしそびれたキスの続きが始まったーー。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる