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51話 今日は一緒に柚子湯にお風呂に入ります?!目の前で立って洗わないで?!
しおりを挟むーー12月21日。土曜日。昼下がり。
「はぁ~~~~っ」
執筆の気分転換に散歩に行ってくる、と出かけたっきり、如月が帰ってこない。こういう時は1人の方が息抜きになるかと思って、1人で行かせたが、やっぱり一緒に行けば良かったと後悔。
「まだかな……如月……」
リビングの床で体育座りをして、膝に顔を埋める。出かけてから1時間半は経っている。さびしい。折角の休日なのに。
「お兄ちゃん、辛気くさい」
「だってぇ~~……はぁ」
こたつで勉強する卯月にじとりとした目で見られる。仕方ないじゃん、片時も離れたくないんだから。まさか、気分転換の散歩がこんなに長いとは思わなかったし。
「…………大好きなんだもん」
むぅ。
ガチャ。
玄関扉の開く音がして、急いで立ち上がり、玄関まで小走りで向かう。如月だ!!! 帰ってきたのが嬉しくて、喜びを頬に浮かべ、ぎゅっと抱きつく。
ぎゅうぅ。
「如月おかえり~~っ!!」
「わっ……ただいま、睦月さん」
優しく頭が撫でられ、顔を上げ如月を見つめる。俺を見て如月がクスッと笑う。優しく口唇が触れ合った。
なんだか如月から柚子の匂いがする。如月の両手には白いビニール袋が下がっていた。なんだろう?
「如月、柚子の匂いがする」
「流石、よく分かりますね。お散歩していたら、もらったんです」
「…………」
もらったって……。誰にだよ。誰だか分からない相手に嫉妬しながら、如月からビニール袋を受け取る。ビニール袋の中を覗くと鮮やかな黄色の柚子がいくつも詰められていた。
ひとつ手に取ってみる。柚子の爽やかな柑橘の香りがふわりと漂った。
「なんでこんなに柚子?」
「今日は冬至ですよ。今日は柚子湯に入れますね~~」
「柚子湯……」
ズイっと如月の顔が俺に近づく。艶かしい笑みを浮かべ如月が口を開いた。
「今日は一緒にお風呂入りましょうね」
「えっ……」
正月事始め以降、誘っても『2人で入ると寒い』『冷える』『ゆっくり出来ない』だのなんやかんや言われ、断られ続け、一緒に入ってくれなかっただけに、なんとなく気恥ずかしくて頬が染まる。
「何照れてるんですか」
「いや……だって……最近一緒にお風呂入ってくれなかったし……えっちも最近、服着たままだし……裸……恥ずかしい……」
「…………(にこ)」
無言で微笑むなよ。如月とリビングに戻り、袋の口を開け、こたつの上に柚子を並べる。柚子がころんと転がり、なんだか、冬の訪れを感じた。
「わぁ、柚子じゃん!!!」
「如月がもらってきた。誰かから」
如月を半目でじっとり見つめ、少し冷たく、棘のある言い方で言い放つ。信じてるけど、不信。
「なんですかぁ~~ちょっとおばあちゃんと世間話したら、お裾分けしてくれただけですよ」
おばあちゃん……。じゃあ、いっか!(※おばあちゃんは対象外)
「俺、お風呂洗ってくる!」
「お兄ちゃんのやきもちは半端ないね」
「そうですね。でもそこが可愛いから」
「なんの話?!」
「もう、お風呂洗ったのですか?」
「うん?」
俺を見て、如月がほんのり頬を染め、微笑む。なに? なんで照れてるの? こたつで暖まっている如月に近づく。
「睦月さん、狭いです」
「……キスしたい」
「はぁ? ちょっ……何っ?!」
どさ。
如月に覆い被さり、頬に触れる。ほんのり赤く染まっていた頬が更に紅く染まった。可愛い。
「卯月さん居ますって!!! あと明るいです!!! な、なに急に!!!」
「そういうの、最近気にしてなかったんじゃないの? ね? ちょっとだけだってぇ~~、ね? ね? キスしよ?」
「は?!?!」
きっと卯月は冷めた目で俺たちを見ているだろう。でも、もういいや。アレ(※こたつえっち)見られたし。頬にかかる如月の髪の毛を指先で退ける。
「いいよね? 弥生さぁん~~」
「こ、こういう時だけ名前で呼ぶな!!!」
腰を如月に何度も宛てがいながら、唇を重ねる。腰を少し押し付けると、如月の肩がビクッと上がった。真っ赤になってる如月も可愛いし、なんだか、楽しくて、こたつの中で脚をバタバタと動かした。
「~~~~っっ」
ちゅっ、ちゅっ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
ーー夕食後。
睦月さんがキッチンで何かをやっている。少し気になり、後ろから覗く。柚子ひとつひとつに、包丁で切り込みを入れている。
「全部に入れるのですか?」
「そうだよ~~お風呂に入れた時、香り出したいし」
「なるほど」
「はい、出来たぁ~~!!」
嬉しそうに切り込みの入った柚子を私に見せてくる。可愛い。そろそろお風呂に誘……。
「如月、今から一緒にお風呂入ろ?」
「え゛?!」
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最近は睦月さんの誘いを基本断りつつ、私からアプローチが、多かったこの頃。さっきのキスもそうだけど、積極的に来られると、恥ずかしい。
「入ろ? ね?」
「は、入りますけど……」かぁ。
睦月さんのペースに飲まれそう。
グイグイくる睦月を警戒しつつ、手を引かれるまま、脱衣所へ向かう。睦月の片手には沢山の柚子が抱えられている。これ、全部入れるのかな?
自分がもらってきたものではあるが、まさか全部入れるなんて、思いもしなかった。
脱衣所でお互い服を脱ぎ、浴室へ入る。冬の寒さが肌を刺してくる。早く湯船に入って暖まりたい。
「如月も半分持って?」
「え? えぇ」
睦月に柚子を渡され、両手で持つ。睦月が浴槽に柚子をたっぷりと浮かべ始めた。浴室には柚子の爽やかな香りが広がり、湯気と一緒に立ち上がる。柑橘の香りが1日の疲れを洗い流してくれる気がした。
「早く洗って、湯船入ろ!!!」
「そうですね……」
私が入ろう? って言った時は裸がどうのこうの言って、恥ずかしがってたくせに、そんなこと、すっかり忘れていらっしゃる。そんなに堂々とされると、逆に(?)私が恥ずかしい。
変に意識してしまい、睦月をまともに見ることが出来ない。見慣れているはずの睦月の裸が、いやらしく見え、顔を逸らす。
「如月、バスチェア使って良いよ~~、俺立って洗うからさ」
「え゛」
立って洗う?!?! 睦月が目の前に立ち、頭と身体を洗い始め、思わず手で押し退ける。無理無理無理!!!! 色んなモノ(?)が視界に入ってくる!!! やめて!!!
「ちょっとぉ~~なにぃ~~お尻触ったぁ!」
「なっ!!! 違っ!!! 立って洗わないで!!!」
「はぁ?! 失礼な!!! まだ立ってないっつーの!!! ほらぁ!!!」
身体の泡を流し、私に幹を見せつけてくる。思わず、まじまじと見てしまう。意外と大きい。(?)
「あぁ、確かに立ってないですね……って違ぁあぁあう!!! 目の前で立って洗うなって言ってるんですよ!!! もうっ!!! 見せないで!!!」
「何恥ずかしがってんの?」
睦月が私の目の前にしゃがみ込み、じぃっと見つめてくる。恥ずかしくて、手のひらで顔を隠し、俯いた。
「うるさいなぁ……」
「……可愛いよ、如月」
睦月の唇がそっと私の額に触れ、頭や身体に付いた泡がシャワーで流された。
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