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62話(2)如月と誕生日デート?!私を想ってやってくれたことは全てが愛しいーー。
しおりを挟むーー翌日。
ふぁあ……。
夜遅くまで執筆していた分、かなり眠たい。布団から起き上がり、リビングに行くと、睦月が既に朝ごはんを作って待っていた。
いつもより、睦月さんが気持ち、おしゃれな気がする。髪にワックスなんか付けちゃって、どこか気合いが入っている。
「今日平日ですよね? 睦月さん、お仕事、お休みなんですか?」
「休み取った!!!」
私が誕生日だからわざわざ休みを? そこまでしなくてもいいのに。もう37……いや、今日で38だし、誕生日のお祝いなんて、ぶっちゃけ、3人でケーキ食べてシャンパンを飲む程度でいい。
3人でテーブルを囲い、両手を合わせた。
「「「いただきます!」」」
並べられた朝食を黙々と口へ運ぶ。卯月さんは受験が終わり、肩の荷が下りたのか、毎日、推し活を楽しんでいる。卯月さんも残すは卒業式のみ。
出会った頃は中3になったばっかりだったのに、もう高校生かぁ。早い。正面に座る睦月とぱちりと目が合った。
「あ……今日行くランチはドレスコードとかありますか?」
「ないよー。でもちょっと冷えるかもしれないから、あったかい格好で」
「なるほど」
そんな寒いところに行くの? 少し疑問に思いながらも箸を進める。
朝食を食べ終わり、出かける支度を始める。睦月さんがお洒落しているなら、私も少しお洒落をしようじゃないか。
「んーー同じような服しか持ってないですね」
白いタートルネックのセーターに茶色のテーパードパンツでいっか。睦月さんも珍しくセーターを着ている。オーバーサイズの黒のセーターにグレーのパンツかぁ。やっぱりそのシルバーチェーンネックレス付けるのか。
睦月が新たなるシルバーチェーンを取り出したのを見て、手を掴む。
「ズボンに付けるのはやめよ?!?!」
「え?」
じゃら。今折角お洒落なのに、それを付けたら一気にダサくなる!!!
「えー…う~~ん……分かったぁ」
「よしよし」
不服そうな睦月の頭を撫でる。いいこいいこ。むぎゅ。私に抱きつく睦月を剥がし、玄関へ送り出す。
「最近、つめたい」
「そんなことないと思います。ほら、卯月さんを見送りますよ」
「お兄ちゃん、如月、行ってきます!!!」
「いってらっしゃい」
「気をつけてくださいね~~」
ばたん。
ドアが閉まると、くるっと睦月がこちらを向き、私の服を両手で掴んだ。
「ちゅー」
「今日は私がしてもらう側な気がするんですけどねぇ」
睦月の頬に片手を添え、唇を重ねる。ちゅ。おねだりしてるくせに照れちゃって可愛い。薄紅色に染まった頬をひと撫でして、出掛ける準備に戻る。
しばらくして、出掛ける準備も終わり、睦月と一緒に家を出た。一体、今日はどこへ行くのだろう? 期待でドキドキしながら歩く。
「如月」
「なんですか?」
「手」
「え? あぁ……」
差し出された手に頬が染まる。少し躊躇いながら、手を伸ばすと、獲物を捕まえるようにぎゅっと強く握られた。自分から繋ぐのはいいけど、睦月さんから手を繋がれるのは、気持ちがどこか擽ったい。
「手、繋ぐのやだ?」
「んーん。そんなことないですよ」
指の間に指先を差し込み絡め合う。
以前は人の目が気になったが、今は睦月さんが望むなら、その願いを叶えてあげたい。私のつまらない感情より、貴方の笑顔の方がとても大切だから。
「着いたよ、如月」
「……ブックカフェ?」
「ご飯も食べれて本も読める!!!」
「ん~~?(2人で楽しめなさそう)」
「新しく出来たところなんだよ!!!」
目をキラキラさせ、ごり押してくる。一生懸命、私のために調べたのだろう。まぁいっか。木製の扉を押し、中へ入った。
アンティーク調の店内は落ち着きがあり、私好みなものだ。ちらりと睦月をみる。赤ちゃんみたいに瞬きして、固まっている。大丈夫か。
「コミックもあるみたいですよ」
「~~~~!」にぱぁ。
お昼ご飯として食べられそうなメニューがない。私の喜ぶことしか考えていないこの場所に、ふっと笑みが溢れる。まぁいっか。
ケーキと紅茶をお供に添えて、ソファで読書する。
ぐぅ。
「…………」
肩に重みを感じて、横を見ると涎を垂らして、気持ち良さそうに寝ている睦月が居た。早い、早すぎる……。昨日、睦月さんがイッちゃったくらい早すぎる……!!!
こんなに早く寝られると、少しいじわるしたくなる。平日で人も少ない。オマケに角の席。誰も私たちのことなんて見ていないはず。
本をテーブルに置き、唾液で濡れた口唇に口付けした。
ちゅ。
「ん……ぁ……はぁ…きさらぎ……」
「早く起きないと下触るよ」
「それはだめっ!!!」
「痛っーー!!」
肩の重みがなくなり、睦月に本で頭を叩かれた。叩くことないじゃん。もう少しまったりしたいところだけど、睦月さんがつまらないなら、もう帰ろうかな?
テーブルの上に置かれたケーキへフォークを刺し、口元に運んだ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
「全然、滞在してなかったけど、本当に良かったの?」
「え? うん。その気持ちが嬉しいからいいんですよ」
睦月と手を繋ぎ、歩く。方向的に駅へ向かっているようだ。電車に乗ってどこか行くのかな? 今日のデート内容は何も知らされていない。
「電車に乗るんですか?」
「うん」
各駅停車の電車に乗り、一定のリズムに揺られながら、窓の外を眺める。鞄の中から本を取り出すと、睦月もまた鞄の中から何かを取り出した。
「はい、これ」
「あ…………」
新しいブックカバー。作ってくれたんだ。ブックカバーを受け取り、本に被せる。ぴったり。流石、としか言いようがない。ブックカバーの右端には『yayoi』と縫われていた。
「ありがとうございます。名前、入ってる」
「入れてみた」
「ふふ。いつ作ったんですか?」
「朝~~」
私のために早起きして作ったから、眠くなっちゃったんだね。愛おしくて、ブックカバーを被せた本を抱きしめた。
「あんな切り刻まれたブックカバー見せられて、俺もちょっと心折れたわぁ」
「あはは」
本を読みながら時間を潰す。寝てるわけでもないのに、睦月が私の肩にもたれかかる。外を眺めるその眼差しが緊張しているように見えた。優しく肩を抱き寄せる。
電車が駅に止まると、睦月が立ち上がり、私の手を引っ張った。慌てて、本を鞄に仕舞い、私も立ち上がる。
「如月降りる!!!」
「はいはい」
電車から降りて、改札を出ると、小さな貝殻や石の転がる音が風に乗って響いてきた。
あぁ、ここはーー。
ある記憶が蘇り、思わずクスッと笑みが溢れる。睦月の肩を軽く叩き、振り向いた笑顔の貴方に唇を重ねた。
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