如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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15話(4)舐めプのタコパは人類皆、たこ焼きです?!お兄ちゃんはお父さんではない!

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「生地ってどれくらい入れるの?」
「穴から生地が溢れて、境目が見えなくなるまでじゃないですか。知らんけど」
「なるほど」


 境目という境目が、完全に見えなくなるまで生地を注ぎ込む。


「あ、油塗り忘れました」


 如月が思い出したように、キッチンから油を持ってきた。今更?!?!


「ぇえーー!! もう入れちゃったよ!!」
「どうしましょ」
「上から油入れとく?」
「まぁ……ないよりいいですかねぇ?」


 如月から油を受け取り、生地の上から回しかける。油の浮くたこ焼きを見て、如月の顔が渋くなった。


 ぐつぐつと沸騰するプレートを見つめる。生地にどろっと感がないのは、お好み焼き粉だからだろうか?


「生地の量、入れすぎでは?」
「今頃言う? くるくるすれば人類皆、たこ焼きさ!!」


 竹串を如月へ一本渡す。


「あ、イカ入れてないです」
「え! しっかりしてよね~~」


 もはや、穴がどこにあるか分からない。なんとなくでいっか。適当に、穴と思われるところにイカを振り撒く。


 たこ焼きは時間の経過共に、大きく膨らんだ。たこ焼きって、こんな風に膨らむものだったっけ?


「なんていうか……膨らんでね?」
「くるくるしろっていう訴えでは?」
「なるほど」


 穴……どこ?? 竹串で適当に8等分の切れ目を入れる。


「いや、そんなに穴少なくなかったでしょ。こんな感じでは」


 如月が横にもう一本線を入れた。


「あんまり変わってなくない?」


 ピザのように、斜めに区切る。よし!!! いい感じ!!!


「いやいやいや!!! 横に区切りましょうよ!!! たこ焼きですよ!!!」
「穴みっけ」


 如月が修正するかのように、横線を増やしている間に、溢れた生地を穴に集めた。んーー。なんか上手く集まらない。


 というか、穴に収まりきらない。生地が膨張し、容量オーバーである。それに加え、注いだ生地が多すぎる。如月が慌ててくるくるしているが、回りきっていない。


「焦げてきました!!! どうしましょ!!」
「え!! あ!! とりあえず一旦、穴から全部ほじくりだして、フライ返しで一気にまとめてひっくり返そう!!!!」


 キッチンの引き出しからフライ返しを取り出し、リビングに戻る。


「え? 待って!!! その理論よく分からないんですけど!!!」
「如月早く!!!」


 如月がたこ焼きを竹串で掘り起こす様子を見つめる。ダメだ、そんな速度でやってたら本気で焦げる!!! テーブルの上に置かれたスプーンを如月に渡した。


「如月、焦げちゃうよ!! スプーンでやって!! 中央に全部集めて!」
「え? 中央? こう?!」


 もう、ぐちゃぐちゃだ。如月によって掘り起こされた生地が中央に集まる。たこ焼き大集合!!!


「大丈夫ですか!! これ!! 掘り返したのなら、反転くるくるすればよかったのでは?!」


 如月が一生懸命スプーンで救出したたこ焼きたちを、フライ返しで叩き潰した。


 ぱんぱんぱん。


「ちょっと!!! 何してるの?!?! 生地足す?!」
「足す!!!!」


 集めて潰した生地の上から、如月がお玉で液状の生地を少しかける。たこ焼き同士、接着だ。ふむ。これはひっくり返すしかないな!!!


「えいっ」


 フライ返しで、全てのたこ焼きをまとめてひっくり返した。


 じゅうぅ~~。


 如月が首を傾け、口を開いた。


「……たこ焼きとは?」
「たこ焼き器でやれば全てがたこ焼きです」
「なるほど」


 いやぁ、お好み焼きにしか見えない。これをお好み焼きといったら、お好み焼きにも失礼かもしれない。


 それ以前にお好み焼き粉だし。そして、たこ焼きの穴の意味、無し。


「これ、たこ焼きとして睦月さんに出すんですか?」
「大丈夫、たこ焼きだ」


 たこ焼きが焼けたかどうかを確認して、フライ返しでお皿に移す。たこ焼きにソースを垂らし、マヨネーズを斜線状にかけた。鰹節もついでにかけちゃお。


「ほら、たこ焼きっぽいよ?」
「これお好み焼「たこ焼きです」
「いや、どう見てもお好「たこ焼きです」
「ていうか、お好み焼き粉を買ってきたのは如月なんだから、如月がお好み焼きとか言うのはナシだよ~~」


 もう一度さっきと同じ手筈で、たこ焼きを作っていく。


「ほら! さっきより固まるの早い! 中央にたこ焼き集めて!!」
「いや、くるくるすれば良くないですか?! 何故あえてまた中央に?!」


 如月がたこ焼きを掘り起こして、中央に集める。集めたたこ焼きをフライ返しで、叩き潰した。


 ぱんぱんぱん。


「まとめて、ひっくり返して、焼いて、また穴に分散させる!! そうしたらたこ焼き!!」
「集める意味!! ひっくり返したいだけでしょ!!」


 集めた生地に液状の生地を足し、固める。んふ~~!! タコパ楽しい!!! 背後から人の気配を感じ、振り返ると、兄が白い目をして、私たちを見ていた。


「……何やってんの?」
「お兄ちゃん……おかえりぃ~~えいっ!!!」


 生地で接着したたこ焼きたちを、フライ返しでひっくり返す。


「睦月さぁあん!! たこ焼きの概念が分かりません!!」


 如月が涙を浮かべながら兄にしがみついた。兄が呆れたように、如月の頭を撫でている。


「それ、お好み「「たこ焼きです」」


 私と如月は目を濁らせ、声を合わせて兄の言葉を遮った。


「まぁいいけどぉ……」


 兄は頭を掻き、鞄を下ろすと、私を見つめ、微笑んだ。


「夕飯、作ってくれたんだ……?」
「だって、今週末は父の日兄の日だからね。如月のせいで失敗しちゃったけど」
「私のせい?!」
「てか、このたこ焼き、油やばいね」


 兄が半袖シャツから部屋着に着替え、たこ焼き器を覗いた。如月が睨んでくるので、私も如月を睨み返す。油は如月が塗り忘れたくせに!!


「卯月さんが油を入れましたぁ~~」
「油よりタコの罪の方が重い!!!」
「いぃ~~~~助けて睦月さぁあぁん!!」


 如月の頬を引っ張ると、如月が兄に助けを求めて、手を伸ばした。


「ぇえ~~イカでたこ焼きとか舐めてるでしょ」


 兄が如月の反対側の頬を引っ張った。流石お兄ちゃん!!! 分かってる!!!


「ぃいぃいい痛い!!! やめて!!! ケチってすみませんでした!! 許して!!」


 私と兄は顔を見合わせて笑い、如月の頬から同時に手を離した。


「しかし、罪は償わなくてはならん」
「え?」


 じんじんする頬を両手で押さえる如月に、兄は顔を傾け、近づけた。ちゅ。妹の前でキスするか? フツー。


「んっ…んん…睦っ……あっ……メガネ」


 メガネが当たったのか、兄と如月の顔が離れた。見つめ合い、もう一度、キスしそうなムードである。


「おぉ~~い!! 2人の世界入るなしぃ! 卯月、卯月ここにいる!!!」


 バンバンバン。テーブルを手で叩き、アピールする。如月がハッとしたように私の方を見て、笑った。


「卯月さん、あれ、作ったやつ」
「おけ!!! はい、これ、 ファザーズデイブラザーズデイ。お兄ちゃん、いつもありがとう!!」


 如月と一緒に、お好み焼きのようなたこ焼きが乗った皿を手に持ち、兄へ渡す。兄は頬を緩ませ、口元に笑みを浮かべた。


「……2人ともありがとう」


 兄はたこ焼きを受け取ると、箸で少し切り分け、口の中に運んだ。私と如月に、ニカっと笑顔を見せた。


「フツーにお好み焼きだね」
「そうとも言う!!!」
「俺はお好み焼きなら豚バラの方がいいなぁ。牛肉って焼くと固くなるじゃん?」


 如月が目を白くして、ショックを受けている。なぜ牛買ってきたし。


「つーかこれ、お好み焼き粉じゃん!! 誰買ったの!!」
「如月でーーす」
「ちょっとぉ~~密告しないでくださいよ」
「如月はほんとダメダメだね」


 頬を膨らませ、拗ねている如月の頬に、兄が口付けする。たこ焼き器とホットプレートと入れ替えた。


「っっ!!!」
「少しは妹の前で自粛してよね~~」


 不意打ちの口付けに驚いたのか、如月が頬を赤く染め、キスされた頬を手で押さえた。こんな2人をドキドキしながら、いつも私は見ている。


「よし、じゃあ、お好み焼きパで!!」
「結局……」


 ホットプレートに余っている生地を丸く流し込む兄の姿を、如月が遠い目で眺めた。


「美味しければなんでもいいじゃん!!!」
「今日、改めて2人が兄妹だと感じました」


 如月が立ち上がり、キッチンから紙袋を持ってくると、私と兄に包装紙でラッピングされた箱を手渡した。


「今回の兄の日は私からプレゼントがありま~~す」
「え!!」
「え!!」


 兄妹揃って同じ反応で恥ずかしい。


「如月、開けていい?」
「どうぞ」


 包装紙を広げていく。箱の中には、透明の取手の付いた、ガラス製のマグカップが入っていた。桜とうさぎが描かれており、すごく可愛い。おしゃれ。


「かわいい~~ありがとう!!」
「ちなみに私とお揃いです」
「えっ? なんで俺だけ雪うさぎ?!?! 仲間はずれやだぁ!」
「え? だって睦月さん1月でしょ? 私と卯月さんは春なので」


 如月が私の手からマグカップを取り、3人分のマグカップを流し台へ持って行く。兄がフライ返しをお好み焼きの下に差し込み、ひっくり返した。


「何それぇ~~でも、ありがとう」
「お好み焼き、美味しいね!!」
「美味しいです~~」
「めっちゃうまい!!」


 なんだか、幸せで、居ても立っても居られず、立ち上がり、兄の後ろから抱きついた。


 ぎゅう。


「お兄ちゃん、だぁい好き~~」
「睦月さん、だぁい好き~~」


 如月が私の上から更に抱きしめる。兄の腕が後ろに回り、私と如月の頭を撫でた。


「なんかこのパターン前もあったぁ~~ありがとう。俺も、大好きだよ」



 知ってる? お兄ちゃん。


 2人の関係性に変化はあったけど、私はお兄ちゃんのことも、如月のことも、今も変わらず大好きなんだよ。


「ま、俺はお父さんじゃないけどね」


 兄が目を細め、優しく笑った。


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