如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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17話(2)保護者が学校に来るのは面倒くさい?!

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 ーー7月 保護者会


「如月遅いなぁ」


 教室の前で如月を待つ。そもそもだけど、まだお父さんで通っているのか、謎だ。あんな、バレバレの嘘、未だにバレていないのか?


 考え事をしていると、主任の先生に声をかけられた。


「佐野さん、こんにちわ」
「宮田先生、こんにちわ~~」
「今日の保護者会だけど、同席しても良いかな?」


 は? え? えっ、ぇえええぇえ!!! ななななななんかしたっけ?? 学校をサボりまくった?? でも如月がうちへ来てから学校をサボることはなくなった!!!


 成績が悪いとか?! 友達は少ないけど、いじめとか受けてないし!! え? なっ、何?! なんで?! こわい!!!


「あ~~いたいた、卯月さぁん! 遅くなりました。広くて迷ってしまって」


 相変わらずのオーバーサイズシャツと、テーパードパンツスタイルで来たか。今日は丸メガネ装備だな。如月と呼ぶのはダメだ。お父さんと呼ばなくては!!!


「遅いよ、お、お父さん~~」


 違和感しかない!!!


「へ? あ、は、はははいっ! 遅れてご、ごごめん、う、卯月」


 キョドるな! 怪しまれる!!!


「…………」


 宮田が私と如月をじとりと見た。やばい! 宮田が不審に思ってる!!! 大丈夫か?!?! 廊下に置かれた椅子に、如月を案内した。


「今面談してる人終わったら私の番だから」
「ど、どうも……」
「佐野さんはご両親、亡くなってますよね」


 いきなり核心突いてきたーー!!!


 如月の顔を見る。もう無理です、みたいな顔すんな!! どうする?! 流石にお父さんゴリ押しはキツいか?!?! 下手な言い訳は状況が悪化するか?!


「不純異性交遊になるようなことは学校側としては」


 違う違う違う!! なんか彼氏的な感じに思われてる!! 如月もなんか言え!! 2話あの時の堂々した感じはどうした!!


「あ、えっと……そういう関係ではないです」


 如月が手をもじもじさせながら答える。その仕草、逆に怪しいから!!!


「では、どういう関係ですか?」


 やばいやばいやばい!!!! フォローしないと!!!


「兄の嫁です」


 どうだ。これこそ真実。隣に座る如月を見ると、手のひらで顔を隠していた。無言で、あちゃーみたいな反応するな。


「男性ですよ。違いますよね。どういった関係で」
「兄の嫁です」


 如月が無表情で言葉を被せた。それでゴリ押す気か?!?!


「ふざけないでくだ」
「兄の嫁です」
「男性同士は結」
「兄の嫁です」


 そんな兄の嫁推しは、頭の硬そうな主任に通じるはずもなく。


「貴方ねぇ、いい加減に」
「はぁ。別に嘘は言ってませんよ、先生。卯月さんのお兄さんの恋人……所謂、兄の嫁です」


 言ってること、さっきと一緒だろ。


「お話は中でゆっくり聞きますから」
「佐野さん、次どうぞ~~」


 教室の扉が開き、担任の竹内が私を呼んだ。助かった!! 如月と一緒に教室へ入ると、後ろから宮田もついてきた。来るんかい!


「あ、お父さん! 来てくださったんですね!」


 如月を見るなり、竹内がパッと笑顔になった。イケメンって最強だね。如月が調子に乗って、前髪を掻き上げ、竹内に微笑みかけた。


「兄の嫁です」
「えっ? それってどういう意味ですか?」
「そういう意味だけど? センセ」


 如月が机に手を付け、先生に近づく。竹内に顔を近づけ、薄く笑いかけた。お前何やっとん!!! お兄ちゃんに言いつけるぞ!!! いや、もしかしてこれは落として味方につける作戦?!?! なるほど!!


「あっ…生徒の前で……ダメっ」
「えと、先生……?」


 如月が先生の反応に困惑しながら離れ、用意された席に着いた。私も如月の隣の席に着席する。


「やはり、異性不純交遊があるのでは?」
「先生!!! それは断じてないです!!!」


 この年の差で何かあるように見える先生にも、問題があるように私は思えるけど。そんなに仲良さそうに見えるかな?


「睦月さんからしたら私は嫁で、私から見た睦月さんって旦那になるんですか?」


 今、それ訊く?? と、思いつつ、如月の質問に答える。


「旦那は違和感ある。だから嫁じゃね?」
「なるほど。お互い嫁なんですね」
「それでは面談を始めます」


 保護者会が始まり、少しだけ緊張する。学校の様子を話されるのは、やっぱり恥ずかしい。如月は興味がなさそうに、先生の話に相槌を打った。


「進路のことなのですが、行きたい高校はありますか?」
「ないです……」


 特に行きたいところはない。何かになりたいとか、そういうのも、まだ私は分からない。如月が机に頬杖をつき、口を開いた。その態度どうなの?


「成績に見合っていればどこでも良くないですか?」
「そうですね。光峰ひかりみね高校はどうですか?」


 光峰高校。私の成績では微妙にハードルが高い。だけど、星奈の第一希望の高校だ。


「家から近くていいけど~~」
「佐野さんは最近成績が上がっているので、頑張れば行けるかもしれません!」
「じゃ、光峰高校で」


 如月が面倒くさそうに話を進める。いやお前が進路決めるなよ。


「では光峰高校を目指して頑張ってみましょう」
「いやぁ、出来るかなぁ? あは……」


 話がまとまり、終わろうとしているところに、宮田が水を差した。


「ちょっといいですか、やっぱり、兄の嫁というのは納得できません。一体どういう関係性で、一緒に住んでるんですか? それはどうなんですか?」


 食い気味な宮田に対し、如月が横髪をくるくる指先に巻きつけながら、淡々と話し始めた。重たい雰囲気に、如月のことが心配になる。


「……卯月さんのお兄さんの恋人ですが何か? 同性同士のカップルですよ。理解できないなら、それで結構ですから。これ以上、土足でプライベートに入ってこないでください」
「……なら今日はお兄さんが来るべきでは? 何故恋人がくるのですか」
「えーー? 義理の妹だからぁ?」


 なるほど!! 確かに!! この空気感に耐えきれず、手を挙げて、竹内先生に助けを求めた。


「先生~~もう終わりたいでーーす」
「センセ~~私もそろそろ帰りたいでーーす」


 如月が脚を組み、膝の上で指を組んだ。本当に、態度わるいな!!! 急に廊下の外が騒がしくなり、廊下に目を向ける。人が集まり、野次馬状態になっていた。


「如月先生が今来てるってホント?!」
「ここ? この教室?」
「みたいみたいみたい!」
「もう終わる? 出てくる? 会える??」


 アッーーーー!!


 最近なにも言われなかったから、すっかり忘れていた!! 教室出づら!! これ大丈夫?!?!


「騒がしくなってきたので、保護者会を終わります」
「ありがとうございました」


 如月が軽く頭を下げ、席を立った。外が騒がしいのは自分のせいだとは微塵も思っていないのか、廊下に出ようとしている。絶対ダメ!!! 如月の服を掴んで引き留めた。


「如月、今出てはダメだ」
「え?」
「囲いに合う」


 窓の隙間から廊下の様子を伺う。うん、保護者も込みで結構、人が集まっている。危険!!!


「どうしろと?」
「走って切り抜ける!!!」
「何そのパワー系の発想!!」


 如月の手を握ると、ぎゅっと握り返された。親指を立て、如月に笑って見せる。


「追いかけられても走り去ればなんとかなる!!」
「根性論~~~~」
「竹内先生、宮田先生、あざましたぁ~~」


 先生たちに軽く手を振り、ドアを思いっきり開けた。如月の手を引っ張り、廊下を駆け抜ける。後ろから竹内が大きな声で叫んだ。


「廊下は走るなーー!!」


 あはは、し~~らない!! こけそうになりながら、走る如月の手を引き、追っかけを振り切る。


 後ろを振り返ると、追いかけて来る人はもう誰も居なくなっていた。呼吸を整えながら、階段に腰掛け、如月と休む。


「はぁ…はぁ……無理……はぁ……」
「大丈夫? でも撒けたよ? 一緒に帰ろ?」
「そうですね……帰りましょう。まぁ、楽しかったですよ、保護者会。学校もすごく久しぶりに来ましたし、新鮮でした」


 如月が立ち上がり、懐かしそうに校内を見つめる様子を見て、声をかける。


「少し見ていく?」
「また追いかけられたらどうするんですか?」
「走って全員振り切る!!!」
「頭悪そうな作戦~~」


 あはは、と仕方なさそうに笑う如月に釣られて、私も笑顔になる。


 学校のこと、勉強のこと、他愛の話をしながら、通い慣れた校内を如月と巡る。如月は時々、壁に触れたりして、懐かしんでいるようだった。


「睦月さんは中学生の頃どんな感じだったんですか?」
「お兄ちゃん? んーー今と変わらない気がする。成績はあんな見た目のくせに、オール5だったよ」
「オール5ですか……」


 何気に出来る兄である。意外だったのか、如月が顔を引き攣らせた。


「乗せられて生徒会とか入るタイプだよ。如月は?」
「私なんて、教室の隅で読書するインキャタイプですよ」


 誰もいない教室を覗き、如月が何かを思い出したかのように、クスッと笑みを浮かべた。


「何それ~~」
「そんなもんですよ。さ、帰りましょ。あれ? どこから来ましたっけ?」
「こっちだよ」


 如月と手を繋ぎ、下駄箱に向かって歩く。如月と歩く校内は少し不思議で、変な感じがする。


 それにしても、嘘はいけないな。色々ややこしくなる。次はお兄ちゃんにちゃんと来てもらおう。


 それでも如月と校内を見て過ごした時間は、穏やかで、満たされるものだった。

 
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