如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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25話(4)反応しないドン?!まだ帰りたくない、でもその寝顔は大切にしたいーー。

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 ーーショッピングモール



 レストラン街で適当に昼食を済ませ、館内を彷徨く。お盆休みのせいか、人が物凄く多い。如月がフラッと消えないように、繋ぎ止めておかないと。


 さりげなく、手を握ると、如月の頬がほんのり赤く染まった。


「あ……ちょっと恥ずかしいっていうか……」
「嫌なら、やめる……」


 握った手を緩めると、ぎゅっと、握り返された。


「んーん。繋ぎたくないわけじゃないです。だから手、繋ぎましょ」


 指先を絡めながらブラブラと歩く。特にこれといって欲しいものがある訳ではない。こんなものが流行りなのか、と感心しつつ、店に並ぶものを見る。


 ふと、ゲームセンターへの案内が目に留まり、その方向を指差した。


「ねぇ、ゲーセン行ってみない?」
「ゲーセンですか。あんまり行ったことないですが。たまには良いのかもしれません」


 ゲームセンターへ一緒に向かう。メダルの音がガチャガチャと鳴り響き、とても賑やかしい。折角きたのだから、如月とゲームしたいな!!


「如月!! これやろ!!」


 太鼓が2つ並んだ『太鼓の覇者』と書かれたゲームへ如月を誘導する。


「『太鼓の覇者』ですか。なんかバチで天下取りそうですね」
「うん!! バチで戦う!! 音楽に合わせて赤をドンして青でカッやって、ダダダダダドンが燃えてきて超魂!!!!」
「睦月さん、何言ってるか全然分かりません。もっと客観的に説明してください」


 お金を入れ、如月と一緒にバチを手に取った。画面が音楽選択に変わり、音楽を選んでいく。


「夏祭り的な曲にしよ」


 曲を選び、太鼓を叩いた。


『始まるドン~~』
「え? 睦月さん、ドンカッダダダタン超魂の説明で始める気ですか?!?!」
「やれば出来る!!!(根性論)」


 目の前に流れてくる赤や青の丸に合わせて、太鼓を叩いていく。楽しい!!!


「流れるの早っ!!!! これ叩くの?!?! 乱雑過ぎます!!! どこどん早すぎません?!?! 合わない!!! 目が追えない!!!! これ初心者向けですか?!?!」


 如月全然打ててないな。


「難易度、難しいにしたぁ~~」
「最初くらい気を遣ってください!!!!」


 如月がクリア出来ないので、致し方なくふつうコースに変更する。


『始まるドン~~』


「あ、合わない!!! 何故?!?! 合わせて叩いているのにドンとカッが絶妙にズレる!!! まるで反応していないみたい!!! これは壊れているのでは?!?! そもそもこの曲知らないし!!!」


 如月全く合ってないし。


「え? これ今流行ってる曲だよ」
「私にも分かる曲にしてください!!!!」


 何度やっても同じだな。俺はクリア出来るけど。如月はリズム感覚がないらしい。知らなかった。それ以前に如月ってゲーム全般ダメなのかな? もっと簡単なゲームにしよう。


「クレーンゲームはどうかな??」
「クレーンゲームですか」


 ひとつひとつクレーンゲームの中身をみていく。


「なんか色んな種類がありますね」
「だね~~」


(あ……ねこのぬいぐるみ。如月っぽい。これ取って如月にあげよう)


「俺、これにする」
「取れるんですかぁ?」
「ばかにすんな!」


 30センチくらいある猫のぬいぐるみが並べられたクレーンゲームの前に立ち、お金を入れる。嘲笑って見てくる如月を無視して、狙いを定め、ボタンを押した。


 ガコン。


「取れたぁ~~」


 一発げっと。下から猫のぬいぐるみを取り出し、持ち上げる。おっとりした顔が如月に似ている。


「睦月さんって色々器用ですよね」
「そんなことないよ。如月が居るからよく見せようと頑張ってるだけ~~」
「よく見せる必要なんてないですよ」


 ぎゅ。


 ぬいぐるみごと抱きしめられた。こんなところで少し恥ずかしくて、頬が染まる。


「好きな人には良いところ見せようと思うのが男心じゃない~~?」
「そんなこと言ったら私、だめだめ過ぎません?」
「如月はだめだめなんかじゃないよ」

 
 片腕を如月の背中へ回し、少し抱きしめる。反対の手で持っている猫のぬいぐるみを、如月の顔の前に突き出した。


「俺が保証するにゃあっ!!」
「ぷ。良い雰囲気が台無し~~ありがとうございます、睦月さん」


 俺を抱きしめていた腕が離れ、俺の手から猫のぬいぐるみ抜かれると、如月が大事そうに胸に抱えた。


「この後どうする?」
「もうおかえりじゃありません? 日が暮れてきました」


 手を繋ぎ、車へ向かい歩き始める。まだ帰りたくなくて、手を繋ぐ指先に力を入れる。


「ほんとにおかえりでいいの?」
「ん~~? 何か私としたいことでも?」
「べ、べつにぃ~~~~っ!!」
「あ、食べさせ合わなきゃね。ふふ」


 駐車場に到着すると、車の中へ乗り込んだ。『食べさせ合わせ』が気になり、眉が中央に寄ってしまう。


「それは、その、そういうアレなんですか?」
「そういうアレですけど? まぁ? 今回は仕方ないので、私からのアレで許してあげないこともないけど?」


 え、してくれるの?! その舌使い堪能出来るの?!?!


「え、ほ、本当に良いの?!?!」
「まぁ? その代償として、睦月さんには絶対見せてもらうけどね。1人のアレを」
「それは無理だってばぁあぁあぁあ!!!!! 代償重いっっ!!!」
「ほら、早く行くとこ行きましょ~~」


 車にエンジンをかけ、出発した。


 今日、おうち帰れるのかな?!?! お泊まりコースじゃない?!?! まぁ2人で過ごせるならどこでもいっかぁ~~!!!


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 しばらく運転していると、助手席が静かになった。


 ……ぐぅ。


 ちら。隣を見る。猫のぬいぐるみとひまわりを抱きしめて寝ている。可愛い。口まで開けて幸せそう。寝ちゃったってことは、安心してるってことかな?


 信号が赤になり、助手席でふにゃけた顔で寝ている如月へ顔を近づけた。


 ちゅ。


「気持ち良さそうに寝ちゃってさぁ……」


 この寝顔が俺を穏やかな気持ちにさせる。幸せそうに寝ている如月を起こしたくはない。


 今日のところは帰るね、如月。


「…うぅん……むつきさぁ~ん……」


 自分の名前を呼ぶ寝言に愛しさを感じ、笑みが溢れる。車にかかっていた音楽のボリュームをなだらかに下げた。

 
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