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第三十一話
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「古代の言語で描かれた三枚の石碑の解読と四種類の封印の解除、更に三重の物理的施錠を突破した後に待っていたのは!!」
「「ま、待っていたのは!?」」
熱の籠もった口調の兄の言葉に、幼い頃の自分と弟の声が重なる。
春の日差しが差し込む中庭、その中心の大木のたもとで、赤毛を揺らす大演説に聞き入っていた。
「遺跡の最奥、祭礼の間とでも称する場所、その祭壇に祀られた女神像だったのさ!!」
その答えに、幼い頃のアーノルドは胸が躍った。
二月ほど前に、突然自分たちの系譜に加わった赤毛の少年……ゼノン・マクシミリアン。自分と弟にとっては、危ういところを救ってくれた命の恩人だ。
同時に、憧れていた存在に認められた、すごい人なのだ。
恩人が家族になると知らされたとき、流石に戸惑ったけれど、それよりも喜びの方が勝った。
弟の腕を掴んで、引き上げてくれたあの力強い腕……あの持ち主が、これからともに人生を歩んでくれる……こんなに頼もしいことはないと、本気でそう思っていた。
「その女神像をどうされたのですか?」
「もちろんいただいたさ!! 今は誰にも教えていない場所に隠してある」
胸を張った得意げな言葉に、アーノルドとレオナルドは顔を輝かせた。
「そ、それはどこですか!?」
「誰にも教えていない、って言ったろ?」
勢い込んだアーノルドの問いに、ゼノンは苦笑交じりのこたえた。それにほほを膨らませるのは、レオナルドだ。
「そんなぁ……私だけに教えてくれることはできませんか?」
「残念だがそれはできないよ」
「どうしてですか?」
同じく不満だったアーノルドも、後を追うように問う。
それに、ゼノンは何か複雑な影が差したほほえみを浮かべて、答えた。
「これは、俺の財産だからだ」
「財産……」
「資本、あるいは戦力と言い換えてもいい。自分のためだけに使える力……そう言うものだから、誰にも言えないんだ」
「自分のためだけに……」
「アーニー、レオ」
兄の言葉の意味を深く考える前に、声をかけられる。顔を向けると、いつになく真剣な顔のゼノンと目が合った。まるで、これから戦に赴く戦士がごとき迫力を伴ったその表情は、兄弟の心を真っ直ぐに撃ち抜いた。
自然、二人して背筋を伸ばしていた。
「お前たちも、そんな力を手に入れろ。自分だけの力、誰も知らない力を。それがきっと、将来お前たちの大きな助けになる」
「自分だけの力……」
「それは、父上にも教えてはいけないのでしょうか?」
反芻する自分の傍らで勢い込んで問うレオナルドに、ゼノンは頷く。
「アルはもちろん、テッサやフローラ、リスティにも教えてはいけない。お前たちだけの、秘密の力を持つんだ」
「それは……」
顔を上げ、ゼノンを真っ直ぐに見つめながら、アーノルドは問う。
「あなたにも、でしょうか?」
「当たり前だ」
ニヤリとゼノンは笑った。
「俺にも絶対に教えるな。自分の中に抱え込め。それが己の害になると分かったときだけ、誰かを頼るんだ」
俺を、とは言わなかった。それが、自分たちと目の前の兄の間にある、見えないけれど大きな壁を感じてしまって、アーノルドは寂しい気持ちになった。
その時、遠くからマクスウェルの声が聞こえてくる。
「やれやれ……楽しい時間はおしまいだ。授業の時間だぞ、二人とも」
そう言うゼノンは、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「そんなぁ……」
「もっとお話ししたいです」
兄弟そろって情けない声を上げる。
「課題を済ませたら、また話してやるよ。約束だ」
「約束ですよ!!」
「忘れないでください!!」
「大丈夫だ、俺は約束は守る男だ。安心して行ってこい」
「「はい!!」」
微笑むゼノンの言葉に立ち上がって、踵を返してマクスウェルの方に足を向けた。
『秘密の力』
それを思っていた以上に早く、アーノルドは手に入れることになっていた。そして、彼は兄の教えを忠実に守った。
誰にも、教えず、抱え込み、秘密の力としたのだ。
「んあ?」
間抜けな声を上げて、アーノルドは目を覚ました。見回すと、数日前に放り込まれた貴人牢のベッドの上だった。
「なーんか、夢を見てた気がすんなぁ……」
それも、自分ではない誰かの……おそらくは、本物のアーノルドの思い出らしきもの……だが、内容は思い出せない。
「王太子殿下ぁ」
そこに、舌足らずな甘え声。カレンだ。
「うむ、首尾はどうだ?」
「大成功にございます!! 二人とも発情した犬のように盛り合っておりました!!」
「ふふふ、大成功だな!! これでやつも自分の立場を弁えただろう!! さぁ、次の手を打つぞ!!」
「御意にございますぅ!!」
アーノルドは、自分の策略が成功した勝利の余韻にどっぷりと浸かっていた。
そんな調子だから、本物のアーノルドのものらしい過去を夢見たことも、綺麗さっぱり頭から抜け落ちていた。
「…………」
未だに甘い匂いが充満する書庫を、フローレンスは憮然とした表情で眺め渡した。
突入より十五分……先陣を切ったのが自分でよかったとつくづく思う。生まれたままの姿で繋がり合うふたりの姿……赤の他人に軽々しく見せられるものではなかった。
自分が先頭を切ったことで、目撃者は最小限に抑えられた。だが、この伏魔殿の腹の内で起こった以上、噂が広まるのは時間の問題だ。王家への責任追及とともに激化するであろう派閥争いを思うと、今から暗澹たる気分になるフローレンスだった。
「殿下」
そんなフローレンスの思惟を、部下の声が打ち切った。
「これを……」
そういって差し出してきたのは、一本の筒だった。部下から受け取り、三十センチほどのそれを鼻に近づける。スンと、一嗅ぎしてすぐに離した。
「……この匂いの元はこれか」
「はい。おそらく、この中に充填されていた成分の匂いでしょう」
「隔離機構はこれに反応して発動した……術式書き換えもこれが?」
「分析しなければ断定はできませんが、ほぼ間違いないかと」
「…………」
部下の言に、フローレンスは思考する。すればするほど、違和感しかない。
これだけの騒ぎを起こした以上、アーノルドの……その背後にいるであろう、精霊の目的は王家、ひいてはこの王国内政へのかく乱だろう。だが……
(腑に落ちない……)
フローレンスの思考は、見事に壁にぶつかった。
(……ゼノンとアンジェを狙う。それはわかる……だが……)
「なぜ、こんな手を使ったのだ?」
燃え上がるような、快楽。
下腹部……子宮を中心に全身に向かって弾ける熱と、かすかな痛みと、それをはるかに超える快感と……そして、喜び。
思い人と一つになれた……愛を交し合った喜びが、彼女の全身を余すことなく満たした。その衝撃で、くたりと力が抜けて、全身が温かい泥濘の中へと沈み始める。
わかる……これは、堕落の泥濘……沈み切ってしまえば、這い上がることはない。
それが、今の彼女にはとても素敵で、魅力的に思えた。
「さぁて、眠れる美女にいい夢見てもらいましょうか」
カレンは、王宮の貴人牢が設けられた塔の一角で自身の存在を忍ばせたまま、意識を飛ばして標的を絡めとる。
アーノルドが思いついたこの手に賛同したのは、偏に都合がよかったからだ。媚薬で快楽に溺れて疲弊した心など、彼女にとってはいいカモだ。その機能を停止に導くなど造作もない。
「王太子が起こした一大事……その被害者になっていただきますよぉー、アンジェリーナお・じょ・う・さ・ま♡」
ほくそ笑みながらも丁寧に、相手の心を泥濘の底へと沈めていく。これに沈んでしまえば、回復までには相応の時間が必要になる。王宮の混乱させるには十分だ。
「あら、悪い子ね」
戦中にも何度もやったことだ。今回も容易い……そう思えたのは、聞き覚えのある声が耳朶を……いや、脳裏を打った瞬間までだった。
「な……」
「こんないい子に悪戯しちゃうだなんて……ちょっとお仕置きが必要かな?」
瞬間、
「ぎゃ!!」
全身に鋭い痛みが炸裂して、カレンはもんどりうって倒れこんだ。
痛む体に鞭打って首を上げると、見覚えがある黒髪の美女と目が合った。
美女は右目の下瞼を指で引っ張りながら舌を出す。あっかんべー。稚拙な仕草に頭に血が上った。
「貴様ぁ!!」
叫びとともに炸裂した魔力が、美女のいる空間を、その先の石壁を陥没させた。
「死してなお、邪魔立てするかぁ!!」
カレンの激昂は、爆音に集まってきた衛兵の耳にも捉えられることはなかった。
ああ……このまま、どこまでもこの泥濘の底へと沈んでいたい……全身を包み心地よいぬくもりに、身も心も任せようとした、その時だった。
「そういうのはだめよ」
聞いたことのない……それなのに、なぜ懐かしさを感じる女性の声が、脳裏に響き渡った。
「あなたを待っている人がいる。さぁ、起きて。前を見るのよ」
その瞬間に、自分の体が急速に浮上していくのを感じる。その先に、泥濘を切り裂いて一筋の光が差し込んでいた。
そこから差し伸べられる、一本の手……ミルクのように白い肌のその手に向かって、彼女は反射的に自分の手を伸ばしていた。
ややあって、相手の手をがっちりと掴む。そのまま見上げて……美しい黒髪をなびかせる美女と目が合う。
「捕まえた」
パチリと、いたずらっぽいウィンク。その背後から、さあっと光が差し込んだ。
眩しさに思わず目を閉じて……次に開いた目に飛び込んできたのは、見知らぬ天蓋だった。
知らないベッドに寝かされている……そう気づいて、首を巡らせて……傍らに立っている、眼帯姿の侍女と目が合った。
「あなたは……」
「お気づきですか、ベルリエンデ公爵令嬢様」
いつから控えていたのだろう……王太后付きの侍女であるエリナが、こちらを見下ろしていた。
「すぐに主とご両親をお呼びします。そのままお待ちください」
そう言って一礼して、足音一つ立てず、まるで滑るように部屋を出て行った。
それから五分と経たない内に、車いすを押して戻ってくる。その横には、心配げな両親――デュラスとグウェンドリンの姿もあった。
「よかったわ、アンジェ。気が付いたのね」
「お父様、お母様……」
「心配したぞ……まさか、こんなことになるとは……」
「ここはいったい……あれから、どうなったのですか?」
「ここは『エメラス宮』よ。書庫での騒動の後、ここに搬送させたの」
アンジェリーナの疑問に答えたのは、車いすに座ったテレーゼだった。
倦怠感を振り切るように起き上がろうとしたアンジェリーナを、右手を挙げて静止した。
「そのままでいいわ。まだ、体もつらいでしょう?」
「それは……」
否定しようとした瞬間に、自分の体の不調を本当の意味で自覚する。
全身にまとわりつく倦怠感は、先ほどまでの夢ではないが、深い泥濘に肩まで浸かっているような感覚をアンジェリーナに与えていた。
初めて感じる体の重さに身じろぎした瞬間、下腹部にビリっと鈍痛が走った。
(……あ)
その時になって初めて……自分の胎内に残る異物感に……覚えのある感覚に気づいてしまう。
それは、自分が自ら胎内に迎え入れた、愛する人の一部……それに吊り上げられるように、体の一番奥を熱く満たした、その人の分身の感触を、鮮明に思い出す。
それで、否応なく実感する……自分は、純潔を失ったのだと。
「……お父様……御覧の通りです」
「アンジェ?」
「わたくしは、純潔を失いました」
「彼奴の策略だろう? お前に非はない」
「だとしても、わたくしはもう生娘ではありません……未婚の身でありながら、姦通したのです」
「その先はやめなさい」
訥々と言い募るアンジェリーナを、グウェンドリンの鋭い声が遮った。
「それを言ってしまったら、何もかもダメになるわよ」
「お母様……」
「グウェンの言うとおりだわ」
怒りをたたえた声音のグウェンドリンに、テレーゼが同意する。
「ここであなたが自ら非を認めては、何もかもが最悪の方向に進むわ。それがあなたの望みなの?」
「……だとしても、わたくしの弱さが、今の状況を招きました」
テレーゼの問いに、アンジェリーナはそう返答する。
「愛する人に……ゼノン様にも、ご迷惑をかけるわけにはまいりません」
力を振り絞って、言葉を紡ぐ。
「わたくしは、修道院に入ります」
それを最後に目を閉じた、周りの沈黙をあえて黙殺しながら、これでいいのだと胸中で反芻した。
「……畜生」
目を覚ましたゼノンは、開口一番悪態をついた。周りを見回して、知らぬ場所であることを確認して……
「!?」
いい笑顔を浮かべて、ベッドの傍らに仁王立ちするセレスティアラと目が合った。
「し……」
「言い残すことは?」
笑顔はそのままに有無を言わせぬ口調で問うてくる。よく見ると、両手で愛用の異空剣を杖のように立てていた。それが抜き放たれて自分の首を刎ねるのに、十秒とかかるまい。
「……一息にお願いします」
「わかったわ。たっぷり時間をかけてあげる」
そう言って、鯉口を切った。その音を聞いて、観念して目を閉じる。
「あら、抵抗しないの?」
「やらかしたのは事実です……弁解のしようもありません」
「つまんないわね」
溜息一つついて、剣を戻した。最初から冗談だとはわかっていた。殺気の一つもなかったのだから。
「んで? 私の愛するアンジェを傷物にしてくれた責任はどう償うつもりかしら?」
「……字義通りに責任を取りますよ」
「字義通り?」
「……アンジェを娶ります」
「あんたねぇ……それで済むと」
「それ以外に方法が? 傷物にした男の責任の取り方、ほかにあれば教えていただきたい。それとも……」
言葉を切って、セレスティアラを睨みつけた。
「帝国にとっては、都合が悪いですか?」
「…………」
それを聞いたセレスティアラから、怒りの念が立ち上るのが分かった。そのまま、つかつかとベッドに歩み寄ってきたセレスティアラは、そっとゼノンの肩口に右手を添える。と、
「……!!」
その親指が、根元まで食い込んで、すさまじい激痛をゼノンに与えた。
「……ここがリーズバルトじゃなければ、首を刎ねてやってるところよ」
「そいつは安心しました……皇太子妃になって、人並みの常識を学ばれたようだ」
苦しげに返したゼノンに、舌打ちする。
「昔から減らず口だけは一人前ね。性根を叩き直してやろうかしら?」
「好きになさるとよいでしょう。だが、それがあなたの図星と、帝国の意図を何よりも証明することを良しとするなら、でありますがね」
「…………」
ゼノンの言葉に、パッと手を離した。激痛が治まって、思わず息をつく。
「……しばらく見ないうちに、腹黒くなったわね。王族らしくなったじゃない」
「誉め言葉……それと、肯定と受け取っておきます」
皮肉気な笑みをセレスティアラに返して、ゼノンは言った。
「帝国はアンジェを欲しがっている……すでに確証を得ているのでしょう?」
「何の……とは、答えないでしょうね」
「当たり前です」
「……私のことが、信用できないの?」
「あなたの今の立場を聞いて、何を信用しろと? それとも、力づくで聞きだしますか?」
「…………」
「可愛い妹のために……未来の戦力のために、ここで外交問題を起こしますか? まぁ、国力を鑑みればそちらが優勢でしょうが、負けるとしても貴国を丸損させる程度のことはできますが?」
「いい加減になさい!!」
立て板に水とばかりにまくしたてるゼノンを、ついに叫んで遮った。
「私が……国のためにあの子を迎えに来たとでも思っているの!?」
「…………」
「私は……あの子に、心から幸せになってほしいからここに来た!! アルハザード陛下は身内にはとことん甘い男よ。王太子の所業も放置することは目に見えていたわ!! その苦難から大好きな妹を救いたいと思うのはおかしいことなの!? 臍を曲げるのも大概になさい!!」
「…………」
ふーふーと、息を荒げるセレスティアラ。その姿に、ゼノンは言葉が出なかった。
「私は、あの子に不幸になってほしくない……あなたとの婚姻でそれが実現するなら、私はそれでもいいわ」
気を取り直したように紡がれた言葉は、ある意味で予想外であった。
「一度、帝国に誘ったのよ。でも、フられたわ。血筋の責務とあの子は言っていたけれど、目を見たら一目瞭然、愛する人が……あなたがここにいるから、あの子はとどまろうとしているのよ」
「……!?」
「娶るのなら、責任なんて言わないで。心から愛して、あの子の夫になりなさい!! 私に言えるのはそれだけよ」
それを最後に荒々しく踵を返したセレスティアラは、大股で部屋を後にした。扉が閉められる音が室内に高らかに響く。
「……情けねぇ」
吐き捨てた言葉は、自分の胸をえぐった。
ぼんやりと、アンジェリーナは宙を見つめる。
あれから、寝かされている客間のベッドに横になったままだ。両親と王太后は口を閉ざしたアンジェリーナを一人にしたほうがいいと思ったのだろう、誰に言われるでもなく部屋を後にしていた。
「…………」
ゼノンと繋がりあって、純潔を失った……たとえそれが、王太子の策略であろうとも、未婚の姦通をしでかした事実に変わりはない。今後、王宮で巻き起こるであろう勢力争いを考えれば、自分に選択肢はなかった。
おとなしく修道院に入り、誰でもない一人の女として生きて、死んでいく……それが一番だと、自分に言い聞かせる。だけど……。
「う……うぅ……」
ぽろぽろと、涙が溢れ出してきた。まるで、自身の決断に後悔しているとでもいうように。
「泣き止みなさい、アンジェリーナ……あなたが、招いたことなのよ……」
なぜこんなことになったのか? 簡単だ。ゼノンを信じていなかったからだ。ハンター辺境伯爵令嬢に口づけを贈る光景……それを見た、それまではいい。
そこでなぜ……自分は確かめなかったのだ? ゼノンに一言聞けばよかったのだ。リリィナ・ハンターとの関係を。
理由は分かっている。怖かったのだ。自分の疑念を肯定されることが……本当に彼女がゼノンの婚約者だという答えが返ってくることが……
結局は、すべての原因は自分の弱さにある……それが、アンジェリーナの結論だった。
その時、部屋の扉がノックされる。誰が……いぶかしげに思いながらもどうぞと返事した。
「失礼します、ベルリエンデ公爵令嬢様」
扉の外から声をかけてきたのは、エリナだった。
「マクシミリアン卿がお見えです。話があると……」
マクシミリアン。その名を聞いて、心臓が跳ねる。
話? いったい何なのか、と疑問に思うと同時に、丁度いいとも思った。
自分の決意を伝えよう……自分の口から、自分の言葉で。
「お通しください」
そう思ったアンジェリーナは、室外のエリナにそう答えていた。
アンジェリーナの返答にしたがって、扉が開かれる。入ってきたのは、簡素な室内着をまとった赤毛の男……ゼノンだった。その面には、少し疲れたような色があった……というより、何やら落ち込んでいるような空気をまとっていた。
「……やぁ」
軽く手を挙げながら、そんな声を上げる。
「そばに座っても?」
ためらいがちな問いにうなずいた。
その反応を見たエレナが、ベッド脇に椅子を用意してくれる。それに腰掛けながら、ゼノンが口を開いた。
「ありがとう、エリナ。少し外してくれないか?」
眼帯姿の侍女を見上げながらの言葉は、アンジェリーナには予想外のものだった。一方のエリナは、予感はしていたのだろう、かしこまりましたと返事して、部屋を後にした。
室内には、ベッドに横たわったアンジェリーナと椅子に座ったゼノンが残される。
「…………」
「…………」
互いに沈黙。言葉に見つからないとでもいうように、二人、口を噤んでしまっていた。
そのまま、無情に五分ほど経つ。このままではいけない……ぎこちなく、アンジェリーナは口を開いた。
「あの……ゼノン様……此度は、大変ご迷惑をおかけしました」
「…………」
相手からの答えはない。構わず、言葉を続ける。
「落ち着き次第、修道院に入ることにいたします。あなた様を、煩わせることはありません」
「…………」
「あの……ゼノン様?」
「…………」
沈黙、やはり答えはない。難しそうな顔でこちらを見つめてくる相手に、さすがに少し不安になる。
それが伝わったのかはわからないが、ゼノンは難しそうな顔になって天井を見上げ、うーうーとうなり始める。まるで、自分の頭の中を整理しようとでもいうように。
激しくがりがりと頭をかいたゼノンは、アンジェリーナに向きなおって、口を開く。
「なぁ、アンジェ……行くとこないなら、俺の旅についてこねぇ?」
なんというか、飾り気がないどころか乱暴な、ある意味ゼノンらしい言葉に、アンジェリーナはポカンとなった。
「……本気で言っているのですか?」
「ふざけてこんなこと言わねぇよ。それにつまらない罠にかかって君の処女を奪ったのは俺だ。責任を取らせてくれ」
責任。その単語で理解した。
彼は、彼なりに仁義を通そうとしているだけだ。どこまでも優しく相手を気遣う彼の姿に、アンジェリーナは安堵する。
それは、一種の諦めだった。
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、国防を司るものの伴侶が不義密通の淫乱など、あってはならぬこと……お気持ちだけで」
「気遣いなんかじゃない!!」
粛々とお利口な答えを返すアンジェリーナを、ゼノンは叫んで遮った。それにおどろいて、彼を見て……それで、硬直する。
彼の顔には、今まで見せたことのない、追い詰められた子供のような苦渋が浮かんでいた。
それを見て悟る……自分が、とんでもない思い違いをしていたことを。
そんなアンジェリーナに向かって、ゼノンは口を開いた。
「アンジェ、俺はな……」
そこで、言葉に詰まる。何を言おうとしているのか。固唾をのんで言葉を待った。
「……近隣の娼館から軒並み出禁を食らってるんだ」
「……………………はい?」
予想もしていなかった……というか、ある種理解不能なその内容に、アンジェリーナはそう答えるのが精いっぱいだった。
「理由は単純でね。ことを終えて一眠りしてからな……」
「してから?」
「……寝ているところに、サービスしてきた娼婦を殺しかけた」
「……!?」
想像を超えた告白に、絶句する。
「原因も単純だ……敵と間違えたんだ。寝込みを襲われた……頭じゃなくて、体のほうが、そんな風に勘違いしたんだ」
「…………」
「ああいう業界は横のつながりが強くてね……俺の所業は一晩で知れ渡って、主だった娼館は軒並み出禁だ。それ以降、店も俺の顔を見ると客引きを引っ込ませるようになった」
疲れたように天井を見上げながら、ゼノンは述懐する。
「思い知ったよ……俺は、誰かと共に生きていくことは出来はしない……孤独に生きるのが似合いってな」
「そんなこと……」
「ところが、最近、ちょっと心境が変わってね」
反論しようとしたアンジェリーナを遮って、ゼノンは微笑んだ。
「何日か前な、作業が終わってから書庫で居眠りしてたんだよ。その時の夢見がまぁ、最悪だった」
その言葉を聞いて、思い至る。それは間違いなく、あの夜で……。
「一度話しただろ? カシュー、あいつを楽にしてやった時を夢に見てな……一時たりとも忘れたことはなかった、あいつの断末魔……それを鮮明に聞いて……」
そこで言葉に詰まる。
「……俺の頭は、グチャグチャになっていた……それで、どうもな……近くにいた人に、寝ぼけて迷惑をかけたらしい」
「…………」
「それからは、な……それまでの悪夢がうそみたいに、ぐっすりと眠れた……目覚めたら……」
そこで、笑みが深くなる。
「君が……そばにいてくれていた」
そう言われて、頬が熱くなるのを感じた。同時に、胸に優しい温もりが宿るのを感じる。
「その時に初めて、思ったんだ……一人はいやだって……」
そう言って、そっと手を握られる。
「君となら……多分それが出来る……いや」
ゼノンは笑みを消して、眦を決した。
「君じゃないと……ダメなんだ」
君じゃないと……その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。とくんとくんと、激しいけれど、優しく脈打つ心臓が、自分の本当の気持ちを自覚させてくれる。
「わたくしで……よろしいのでしょうか?」
「さっきも言ったが、君じゃなきゃダメだ」
弱々しく、不安から出た問いを、ゼノンは一蹴した。
「俺と一緒に……人生を歩んでほしい」
そう言われて、うれしくて……でも、すぐに答えを返すことは出来なかった。
「ありがとうございます、ゼノン様……ですが」
言葉を切ったアンジェリーナに、ゼノンは首をかしげる。
「少しだけ……お待ちいただきたいのです」
「なぜ?」
「……わたくしは、自分の家が抱える罪を知ったばかりです」
ゆっくりと、起き上がる。
「あなたの思いに、ちゃんと答えるために……一度、わたくしの家が何をしたのか、自分の目で確かめたく思います……」
ゼノンに、真っ直ぐ微笑みかけた。
「自分の中で、あの戦争で起こったこと、犯してしまったこと……それを整理した上で、お答えしたく思います」
「……分かった」
少し、残念そうだったが、微笑みながらそう返して、ゼノンは立ち上がった。
「俺も、今すぐに返事してもらおうとは思っちゃいない……納得できるまで、存分に悩んでくれ」
「……はい!!」
アンジェリーナは、ゼノンの言葉に真っ直ぐに答えた。
もう、逃げない……自分の血筋が抱えた罪、それを見極める。
いつの日にか、彼の隣に寄り添うために……アンジェリーナは、固く決意した。
客間を出たゼノンは、どこに行くでもなくエメラス宮の廊下を歩く。
「…………」
誰かに、心情を吐露するのは、もしかしたら初めてのことかも知れなかった。いつの間にか、それぐらいに彼女の……アンジェリーナの存在は自分の中で大きくなっていた。
「……年貢の納め時、か」
「少佐」
感慨深く呟いたとき、いつの間にかそばに来ていたエリナから声をかけられる。
「どうした?」
「教団より返答がございました。『この身に課せられし使命、全霊で果たします。ついては、聖騎士マクシミリアン卿にお迎えをお願いしたく思います』と……」
「……あいつらしいな」
ゼノンは伝えられた内容に苦笑を返した。
その裏で……これが大きな災いの前兆だという予感を、どうしても拭えなかった。
「「ま、待っていたのは!?」」
熱の籠もった口調の兄の言葉に、幼い頃の自分と弟の声が重なる。
春の日差しが差し込む中庭、その中心の大木のたもとで、赤毛を揺らす大演説に聞き入っていた。
「遺跡の最奥、祭礼の間とでも称する場所、その祭壇に祀られた女神像だったのさ!!」
その答えに、幼い頃のアーノルドは胸が躍った。
二月ほど前に、突然自分たちの系譜に加わった赤毛の少年……ゼノン・マクシミリアン。自分と弟にとっては、危ういところを救ってくれた命の恩人だ。
同時に、憧れていた存在に認められた、すごい人なのだ。
恩人が家族になると知らされたとき、流石に戸惑ったけれど、それよりも喜びの方が勝った。
弟の腕を掴んで、引き上げてくれたあの力強い腕……あの持ち主が、これからともに人生を歩んでくれる……こんなに頼もしいことはないと、本気でそう思っていた。
「その女神像をどうされたのですか?」
「もちろんいただいたさ!! 今は誰にも教えていない場所に隠してある」
胸を張った得意げな言葉に、アーノルドとレオナルドは顔を輝かせた。
「そ、それはどこですか!?」
「誰にも教えていない、って言ったろ?」
勢い込んだアーノルドの問いに、ゼノンは苦笑交じりのこたえた。それにほほを膨らませるのは、レオナルドだ。
「そんなぁ……私だけに教えてくれることはできませんか?」
「残念だがそれはできないよ」
「どうしてですか?」
同じく不満だったアーノルドも、後を追うように問う。
それに、ゼノンは何か複雑な影が差したほほえみを浮かべて、答えた。
「これは、俺の財産だからだ」
「財産……」
「資本、あるいは戦力と言い換えてもいい。自分のためだけに使える力……そう言うものだから、誰にも言えないんだ」
「自分のためだけに……」
「アーニー、レオ」
兄の言葉の意味を深く考える前に、声をかけられる。顔を向けると、いつになく真剣な顔のゼノンと目が合った。まるで、これから戦に赴く戦士がごとき迫力を伴ったその表情は、兄弟の心を真っ直ぐに撃ち抜いた。
自然、二人して背筋を伸ばしていた。
「お前たちも、そんな力を手に入れろ。自分だけの力、誰も知らない力を。それがきっと、将来お前たちの大きな助けになる」
「自分だけの力……」
「それは、父上にも教えてはいけないのでしょうか?」
反芻する自分の傍らで勢い込んで問うレオナルドに、ゼノンは頷く。
「アルはもちろん、テッサやフローラ、リスティにも教えてはいけない。お前たちだけの、秘密の力を持つんだ」
「それは……」
顔を上げ、ゼノンを真っ直ぐに見つめながら、アーノルドは問う。
「あなたにも、でしょうか?」
「当たり前だ」
ニヤリとゼノンは笑った。
「俺にも絶対に教えるな。自分の中に抱え込め。それが己の害になると分かったときだけ、誰かを頼るんだ」
俺を、とは言わなかった。それが、自分たちと目の前の兄の間にある、見えないけれど大きな壁を感じてしまって、アーノルドは寂しい気持ちになった。
その時、遠くからマクスウェルの声が聞こえてくる。
「やれやれ……楽しい時間はおしまいだ。授業の時間だぞ、二人とも」
そう言うゼノンは、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。
「そんなぁ……」
「もっとお話ししたいです」
兄弟そろって情けない声を上げる。
「課題を済ませたら、また話してやるよ。約束だ」
「約束ですよ!!」
「忘れないでください!!」
「大丈夫だ、俺は約束は守る男だ。安心して行ってこい」
「「はい!!」」
微笑むゼノンの言葉に立ち上がって、踵を返してマクスウェルの方に足を向けた。
『秘密の力』
それを思っていた以上に早く、アーノルドは手に入れることになっていた。そして、彼は兄の教えを忠実に守った。
誰にも、教えず、抱え込み、秘密の力としたのだ。
「んあ?」
間抜けな声を上げて、アーノルドは目を覚ました。見回すと、数日前に放り込まれた貴人牢のベッドの上だった。
「なーんか、夢を見てた気がすんなぁ……」
それも、自分ではない誰かの……おそらくは、本物のアーノルドの思い出らしきもの……だが、内容は思い出せない。
「王太子殿下ぁ」
そこに、舌足らずな甘え声。カレンだ。
「うむ、首尾はどうだ?」
「大成功にございます!! 二人とも発情した犬のように盛り合っておりました!!」
「ふふふ、大成功だな!! これでやつも自分の立場を弁えただろう!! さぁ、次の手を打つぞ!!」
「御意にございますぅ!!」
アーノルドは、自分の策略が成功した勝利の余韻にどっぷりと浸かっていた。
そんな調子だから、本物のアーノルドのものらしい過去を夢見たことも、綺麗さっぱり頭から抜け落ちていた。
「…………」
未だに甘い匂いが充満する書庫を、フローレンスは憮然とした表情で眺め渡した。
突入より十五分……先陣を切ったのが自分でよかったとつくづく思う。生まれたままの姿で繋がり合うふたりの姿……赤の他人に軽々しく見せられるものではなかった。
自分が先頭を切ったことで、目撃者は最小限に抑えられた。だが、この伏魔殿の腹の内で起こった以上、噂が広まるのは時間の問題だ。王家への責任追及とともに激化するであろう派閥争いを思うと、今から暗澹たる気分になるフローレンスだった。
「殿下」
そんなフローレンスの思惟を、部下の声が打ち切った。
「これを……」
そういって差し出してきたのは、一本の筒だった。部下から受け取り、三十センチほどのそれを鼻に近づける。スンと、一嗅ぎしてすぐに離した。
「……この匂いの元はこれか」
「はい。おそらく、この中に充填されていた成分の匂いでしょう」
「隔離機構はこれに反応して発動した……術式書き換えもこれが?」
「分析しなければ断定はできませんが、ほぼ間違いないかと」
「…………」
部下の言に、フローレンスは思考する。すればするほど、違和感しかない。
これだけの騒ぎを起こした以上、アーノルドの……その背後にいるであろう、精霊の目的は王家、ひいてはこの王国内政へのかく乱だろう。だが……
(腑に落ちない……)
フローレンスの思考は、見事に壁にぶつかった。
(……ゼノンとアンジェを狙う。それはわかる……だが……)
「なぜ、こんな手を使ったのだ?」
燃え上がるような、快楽。
下腹部……子宮を中心に全身に向かって弾ける熱と、かすかな痛みと、それをはるかに超える快感と……そして、喜び。
思い人と一つになれた……愛を交し合った喜びが、彼女の全身を余すことなく満たした。その衝撃で、くたりと力が抜けて、全身が温かい泥濘の中へと沈み始める。
わかる……これは、堕落の泥濘……沈み切ってしまえば、這い上がることはない。
それが、今の彼女にはとても素敵で、魅力的に思えた。
「さぁて、眠れる美女にいい夢見てもらいましょうか」
カレンは、王宮の貴人牢が設けられた塔の一角で自身の存在を忍ばせたまま、意識を飛ばして標的を絡めとる。
アーノルドが思いついたこの手に賛同したのは、偏に都合がよかったからだ。媚薬で快楽に溺れて疲弊した心など、彼女にとってはいいカモだ。その機能を停止に導くなど造作もない。
「王太子が起こした一大事……その被害者になっていただきますよぉー、アンジェリーナお・じょ・う・さ・ま♡」
ほくそ笑みながらも丁寧に、相手の心を泥濘の底へと沈めていく。これに沈んでしまえば、回復までには相応の時間が必要になる。王宮の混乱させるには十分だ。
「あら、悪い子ね」
戦中にも何度もやったことだ。今回も容易い……そう思えたのは、聞き覚えのある声が耳朶を……いや、脳裏を打った瞬間までだった。
「な……」
「こんないい子に悪戯しちゃうだなんて……ちょっとお仕置きが必要かな?」
瞬間、
「ぎゃ!!」
全身に鋭い痛みが炸裂して、カレンはもんどりうって倒れこんだ。
痛む体に鞭打って首を上げると、見覚えがある黒髪の美女と目が合った。
美女は右目の下瞼を指で引っ張りながら舌を出す。あっかんべー。稚拙な仕草に頭に血が上った。
「貴様ぁ!!」
叫びとともに炸裂した魔力が、美女のいる空間を、その先の石壁を陥没させた。
「死してなお、邪魔立てするかぁ!!」
カレンの激昂は、爆音に集まってきた衛兵の耳にも捉えられることはなかった。
ああ……このまま、どこまでもこの泥濘の底へと沈んでいたい……全身を包み心地よいぬくもりに、身も心も任せようとした、その時だった。
「そういうのはだめよ」
聞いたことのない……それなのに、なぜ懐かしさを感じる女性の声が、脳裏に響き渡った。
「あなたを待っている人がいる。さぁ、起きて。前を見るのよ」
その瞬間に、自分の体が急速に浮上していくのを感じる。その先に、泥濘を切り裂いて一筋の光が差し込んでいた。
そこから差し伸べられる、一本の手……ミルクのように白い肌のその手に向かって、彼女は反射的に自分の手を伸ばしていた。
ややあって、相手の手をがっちりと掴む。そのまま見上げて……美しい黒髪をなびかせる美女と目が合う。
「捕まえた」
パチリと、いたずらっぽいウィンク。その背後から、さあっと光が差し込んだ。
眩しさに思わず目を閉じて……次に開いた目に飛び込んできたのは、見知らぬ天蓋だった。
知らないベッドに寝かされている……そう気づいて、首を巡らせて……傍らに立っている、眼帯姿の侍女と目が合った。
「あなたは……」
「お気づきですか、ベルリエンデ公爵令嬢様」
いつから控えていたのだろう……王太后付きの侍女であるエリナが、こちらを見下ろしていた。
「すぐに主とご両親をお呼びします。そのままお待ちください」
そう言って一礼して、足音一つ立てず、まるで滑るように部屋を出て行った。
それから五分と経たない内に、車いすを押して戻ってくる。その横には、心配げな両親――デュラスとグウェンドリンの姿もあった。
「よかったわ、アンジェ。気が付いたのね」
「お父様、お母様……」
「心配したぞ……まさか、こんなことになるとは……」
「ここはいったい……あれから、どうなったのですか?」
「ここは『エメラス宮』よ。書庫での騒動の後、ここに搬送させたの」
アンジェリーナの疑問に答えたのは、車いすに座ったテレーゼだった。
倦怠感を振り切るように起き上がろうとしたアンジェリーナを、右手を挙げて静止した。
「そのままでいいわ。まだ、体もつらいでしょう?」
「それは……」
否定しようとした瞬間に、自分の体の不調を本当の意味で自覚する。
全身にまとわりつく倦怠感は、先ほどまでの夢ではないが、深い泥濘に肩まで浸かっているような感覚をアンジェリーナに与えていた。
初めて感じる体の重さに身じろぎした瞬間、下腹部にビリっと鈍痛が走った。
(……あ)
その時になって初めて……自分の胎内に残る異物感に……覚えのある感覚に気づいてしまう。
それは、自分が自ら胎内に迎え入れた、愛する人の一部……それに吊り上げられるように、体の一番奥を熱く満たした、その人の分身の感触を、鮮明に思い出す。
それで、否応なく実感する……自分は、純潔を失ったのだと。
「……お父様……御覧の通りです」
「アンジェ?」
「わたくしは、純潔を失いました」
「彼奴の策略だろう? お前に非はない」
「だとしても、わたくしはもう生娘ではありません……未婚の身でありながら、姦通したのです」
「その先はやめなさい」
訥々と言い募るアンジェリーナを、グウェンドリンの鋭い声が遮った。
「それを言ってしまったら、何もかもダメになるわよ」
「お母様……」
「グウェンの言うとおりだわ」
怒りをたたえた声音のグウェンドリンに、テレーゼが同意する。
「ここであなたが自ら非を認めては、何もかもが最悪の方向に進むわ。それがあなたの望みなの?」
「……だとしても、わたくしの弱さが、今の状況を招きました」
テレーゼの問いに、アンジェリーナはそう返答する。
「愛する人に……ゼノン様にも、ご迷惑をかけるわけにはまいりません」
力を振り絞って、言葉を紡ぐ。
「わたくしは、修道院に入ります」
それを最後に目を閉じた、周りの沈黙をあえて黙殺しながら、これでいいのだと胸中で反芻した。
「……畜生」
目を覚ましたゼノンは、開口一番悪態をついた。周りを見回して、知らぬ場所であることを確認して……
「!?」
いい笑顔を浮かべて、ベッドの傍らに仁王立ちするセレスティアラと目が合った。
「し……」
「言い残すことは?」
笑顔はそのままに有無を言わせぬ口調で問うてくる。よく見ると、両手で愛用の異空剣を杖のように立てていた。それが抜き放たれて自分の首を刎ねるのに、十秒とかかるまい。
「……一息にお願いします」
「わかったわ。たっぷり時間をかけてあげる」
そう言って、鯉口を切った。その音を聞いて、観念して目を閉じる。
「あら、抵抗しないの?」
「やらかしたのは事実です……弁解のしようもありません」
「つまんないわね」
溜息一つついて、剣を戻した。最初から冗談だとはわかっていた。殺気の一つもなかったのだから。
「んで? 私の愛するアンジェを傷物にしてくれた責任はどう償うつもりかしら?」
「……字義通りに責任を取りますよ」
「字義通り?」
「……アンジェを娶ります」
「あんたねぇ……それで済むと」
「それ以外に方法が? 傷物にした男の責任の取り方、ほかにあれば教えていただきたい。それとも……」
言葉を切って、セレスティアラを睨みつけた。
「帝国にとっては、都合が悪いですか?」
「…………」
それを聞いたセレスティアラから、怒りの念が立ち上るのが分かった。そのまま、つかつかとベッドに歩み寄ってきたセレスティアラは、そっとゼノンの肩口に右手を添える。と、
「……!!」
その親指が、根元まで食い込んで、すさまじい激痛をゼノンに与えた。
「……ここがリーズバルトじゃなければ、首を刎ねてやってるところよ」
「そいつは安心しました……皇太子妃になって、人並みの常識を学ばれたようだ」
苦しげに返したゼノンに、舌打ちする。
「昔から減らず口だけは一人前ね。性根を叩き直してやろうかしら?」
「好きになさるとよいでしょう。だが、それがあなたの図星と、帝国の意図を何よりも証明することを良しとするなら、でありますがね」
「…………」
ゼノンの言葉に、パッと手を離した。激痛が治まって、思わず息をつく。
「……しばらく見ないうちに、腹黒くなったわね。王族らしくなったじゃない」
「誉め言葉……それと、肯定と受け取っておきます」
皮肉気な笑みをセレスティアラに返して、ゼノンは言った。
「帝国はアンジェを欲しがっている……すでに確証を得ているのでしょう?」
「何の……とは、答えないでしょうね」
「当たり前です」
「……私のことが、信用できないの?」
「あなたの今の立場を聞いて、何を信用しろと? それとも、力づくで聞きだしますか?」
「…………」
「可愛い妹のために……未来の戦力のために、ここで外交問題を起こしますか? まぁ、国力を鑑みればそちらが優勢でしょうが、負けるとしても貴国を丸損させる程度のことはできますが?」
「いい加減になさい!!」
立て板に水とばかりにまくしたてるゼノンを、ついに叫んで遮った。
「私が……国のためにあの子を迎えに来たとでも思っているの!?」
「…………」
「私は……あの子に、心から幸せになってほしいからここに来た!! アルハザード陛下は身内にはとことん甘い男よ。王太子の所業も放置することは目に見えていたわ!! その苦難から大好きな妹を救いたいと思うのはおかしいことなの!? 臍を曲げるのも大概になさい!!」
「…………」
ふーふーと、息を荒げるセレスティアラ。その姿に、ゼノンは言葉が出なかった。
「私は、あの子に不幸になってほしくない……あなたとの婚姻でそれが実現するなら、私はそれでもいいわ」
気を取り直したように紡がれた言葉は、ある意味で予想外であった。
「一度、帝国に誘ったのよ。でも、フられたわ。血筋の責務とあの子は言っていたけれど、目を見たら一目瞭然、愛する人が……あなたがここにいるから、あの子はとどまろうとしているのよ」
「……!?」
「娶るのなら、責任なんて言わないで。心から愛して、あの子の夫になりなさい!! 私に言えるのはそれだけよ」
それを最後に荒々しく踵を返したセレスティアラは、大股で部屋を後にした。扉が閉められる音が室内に高らかに響く。
「……情けねぇ」
吐き捨てた言葉は、自分の胸をえぐった。
ぼんやりと、アンジェリーナは宙を見つめる。
あれから、寝かされている客間のベッドに横になったままだ。両親と王太后は口を閉ざしたアンジェリーナを一人にしたほうがいいと思ったのだろう、誰に言われるでもなく部屋を後にしていた。
「…………」
ゼノンと繋がりあって、純潔を失った……たとえそれが、王太子の策略であろうとも、未婚の姦通をしでかした事実に変わりはない。今後、王宮で巻き起こるであろう勢力争いを考えれば、自分に選択肢はなかった。
おとなしく修道院に入り、誰でもない一人の女として生きて、死んでいく……それが一番だと、自分に言い聞かせる。だけど……。
「う……うぅ……」
ぽろぽろと、涙が溢れ出してきた。まるで、自身の決断に後悔しているとでもいうように。
「泣き止みなさい、アンジェリーナ……あなたが、招いたことなのよ……」
なぜこんなことになったのか? 簡単だ。ゼノンを信じていなかったからだ。ハンター辺境伯爵令嬢に口づけを贈る光景……それを見た、それまではいい。
そこでなぜ……自分は確かめなかったのだ? ゼノンに一言聞けばよかったのだ。リリィナ・ハンターとの関係を。
理由は分かっている。怖かったのだ。自分の疑念を肯定されることが……本当に彼女がゼノンの婚約者だという答えが返ってくることが……
結局は、すべての原因は自分の弱さにある……それが、アンジェリーナの結論だった。
その時、部屋の扉がノックされる。誰が……いぶかしげに思いながらもどうぞと返事した。
「失礼します、ベルリエンデ公爵令嬢様」
扉の外から声をかけてきたのは、エリナだった。
「マクシミリアン卿がお見えです。話があると……」
マクシミリアン。その名を聞いて、心臓が跳ねる。
話? いったい何なのか、と疑問に思うと同時に、丁度いいとも思った。
自分の決意を伝えよう……自分の口から、自分の言葉で。
「お通しください」
そう思ったアンジェリーナは、室外のエリナにそう答えていた。
アンジェリーナの返答にしたがって、扉が開かれる。入ってきたのは、簡素な室内着をまとった赤毛の男……ゼノンだった。その面には、少し疲れたような色があった……というより、何やら落ち込んでいるような空気をまとっていた。
「……やぁ」
軽く手を挙げながら、そんな声を上げる。
「そばに座っても?」
ためらいがちな問いにうなずいた。
その反応を見たエレナが、ベッド脇に椅子を用意してくれる。それに腰掛けながら、ゼノンが口を開いた。
「ありがとう、エリナ。少し外してくれないか?」
眼帯姿の侍女を見上げながらの言葉は、アンジェリーナには予想外のものだった。一方のエリナは、予感はしていたのだろう、かしこまりましたと返事して、部屋を後にした。
室内には、ベッドに横たわったアンジェリーナと椅子に座ったゼノンが残される。
「…………」
「…………」
互いに沈黙。言葉に見つからないとでもいうように、二人、口を噤んでしまっていた。
そのまま、無情に五分ほど経つ。このままではいけない……ぎこちなく、アンジェリーナは口を開いた。
「あの……ゼノン様……此度は、大変ご迷惑をおかけしました」
「…………」
相手からの答えはない。構わず、言葉を続ける。
「落ち着き次第、修道院に入ることにいたします。あなた様を、煩わせることはありません」
「…………」
「あの……ゼノン様?」
「…………」
沈黙、やはり答えはない。難しそうな顔でこちらを見つめてくる相手に、さすがに少し不安になる。
それが伝わったのかはわからないが、ゼノンは難しそうな顔になって天井を見上げ、うーうーとうなり始める。まるで、自分の頭の中を整理しようとでもいうように。
激しくがりがりと頭をかいたゼノンは、アンジェリーナに向きなおって、口を開く。
「なぁ、アンジェ……行くとこないなら、俺の旅についてこねぇ?」
なんというか、飾り気がないどころか乱暴な、ある意味ゼノンらしい言葉に、アンジェリーナはポカンとなった。
「……本気で言っているのですか?」
「ふざけてこんなこと言わねぇよ。それにつまらない罠にかかって君の処女を奪ったのは俺だ。責任を取らせてくれ」
責任。その単語で理解した。
彼は、彼なりに仁義を通そうとしているだけだ。どこまでも優しく相手を気遣う彼の姿に、アンジェリーナは安堵する。
それは、一種の諦めだった。
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、国防を司るものの伴侶が不義密通の淫乱など、あってはならぬこと……お気持ちだけで」
「気遣いなんかじゃない!!」
粛々とお利口な答えを返すアンジェリーナを、ゼノンは叫んで遮った。それにおどろいて、彼を見て……それで、硬直する。
彼の顔には、今まで見せたことのない、追い詰められた子供のような苦渋が浮かんでいた。
それを見て悟る……自分が、とんでもない思い違いをしていたことを。
そんなアンジェリーナに向かって、ゼノンは口を開いた。
「アンジェ、俺はな……」
そこで、言葉に詰まる。何を言おうとしているのか。固唾をのんで言葉を待った。
「……近隣の娼館から軒並み出禁を食らってるんだ」
「……………………はい?」
予想もしていなかった……というか、ある種理解不能なその内容に、アンジェリーナはそう答えるのが精いっぱいだった。
「理由は単純でね。ことを終えて一眠りしてからな……」
「してから?」
「……寝ているところに、サービスしてきた娼婦を殺しかけた」
「……!?」
想像を超えた告白に、絶句する。
「原因も単純だ……敵と間違えたんだ。寝込みを襲われた……頭じゃなくて、体のほうが、そんな風に勘違いしたんだ」
「…………」
「ああいう業界は横のつながりが強くてね……俺の所業は一晩で知れ渡って、主だった娼館は軒並み出禁だ。それ以降、店も俺の顔を見ると客引きを引っ込ませるようになった」
疲れたように天井を見上げながら、ゼノンは述懐する。
「思い知ったよ……俺は、誰かと共に生きていくことは出来はしない……孤独に生きるのが似合いってな」
「そんなこと……」
「ところが、最近、ちょっと心境が変わってね」
反論しようとしたアンジェリーナを遮って、ゼノンは微笑んだ。
「何日か前な、作業が終わってから書庫で居眠りしてたんだよ。その時の夢見がまぁ、最悪だった」
その言葉を聞いて、思い至る。それは間違いなく、あの夜で……。
「一度話しただろ? カシュー、あいつを楽にしてやった時を夢に見てな……一時たりとも忘れたことはなかった、あいつの断末魔……それを鮮明に聞いて……」
そこで言葉に詰まる。
「……俺の頭は、グチャグチャになっていた……それで、どうもな……近くにいた人に、寝ぼけて迷惑をかけたらしい」
「…………」
「それからは、な……それまでの悪夢がうそみたいに、ぐっすりと眠れた……目覚めたら……」
そこで、笑みが深くなる。
「君が……そばにいてくれていた」
そう言われて、頬が熱くなるのを感じた。同時に、胸に優しい温もりが宿るのを感じる。
「その時に初めて、思ったんだ……一人はいやだって……」
そう言って、そっと手を握られる。
「君となら……多分それが出来る……いや」
ゼノンは笑みを消して、眦を決した。
「君じゃないと……ダメなんだ」
君じゃないと……その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。とくんとくんと、激しいけれど、優しく脈打つ心臓が、自分の本当の気持ちを自覚させてくれる。
「わたくしで……よろしいのでしょうか?」
「さっきも言ったが、君じゃなきゃダメだ」
弱々しく、不安から出た問いを、ゼノンは一蹴した。
「俺と一緒に……人生を歩んでほしい」
そう言われて、うれしくて……でも、すぐに答えを返すことは出来なかった。
「ありがとうございます、ゼノン様……ですが」
言葉を切ったアンジェリーナに、ゼノンは首をかしげる。
「少しだけ……お待ちいただきたいのです」
「なぜ?」
「……わたくしは、自分の家が抱える罪を知ったばかりです」
ゆっくりと、起き上がる。
「あなたの思いに、ちゃんと答えるために……一度、わたくしの家が何をしたのか、自分の目で確かめたく思います……」
ゼノンに、真っ直ぐ微笑みかけた。
「自分の中で、あの戦争で起こったこと、犯してしまったこと……それを整理した上で、お答えしたく思います」
「……分かった」
少し、残念そうだったが、微笑みながらそう返して、ゼノンは立ち上がった。
「俺も、今すぐに返事してもらおうとは思っちゃいない……納得できるまで、存分に悩んでくれ」
「……はい!!」
アンジェリーナは、ゼノンの言葉に真っ直ぐに答えた。
もう、逃げない……自分の血筋が抱えた罪、それを見極める。
いつの日にか、彼の隣に寄り添うために……アンジェリーナは、固く決意した。
客間を出たゼノンは、どこに行くでもなくエメラス宮の廊下を歩く。
「…………」
誰かに、心情を吐露するのは、もしかしたら初めてのことかも知れなかった。いつの間にか、それぐらいに彼女の……アンジェリーナの存在は自分の中で大きくなっていた。
「……年貢の納め時、か」
「少佐」
感慨深く呟いたとき、いつの間にかそばに来ていたエリナから声をかけられる。
「どうした?」
「教団より返答がございました。『この身に課せられし使命、全霊で果たします。ついては、聖騎士マクシミリアン卿にお迎えをお願いしたく思います』と……」
「……あいつらしいな」
ゼノンは伝えられた内容に苦笑を返した。
その裏で……これが大きな災いの前兆だという予感を、どうしても拭えなかった。
10
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