偏愛-henai-

槊灼大地

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偏愛Ⅳ≪竜side≫

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※3頁~7頁は性的描写がいつも以上に激しく、モブレですので苦手な方は流し見をおすすめします







俺には何も無い。



愛していた母も兄もいない。



唯一、俺を大切にしてくれた人にも嫌われた。




ワガママな俺を温かく包んでくれた人を、俺は傷つけた。




あなたのいない、あなたの香りが染み着いた部屋。




ただ一人待っている。





ハルカさん、逢いたいよ―…












ハルカさんがいなくなってからもうすぐ1ヶ月が経とうとしている。




ロスで撮影があると言っていたけど、帰国の予定日から2週間は過ぎている。






どこにいるんだろう。





もし会ったら「ごめんなさい」って、それだけで許してくれる―…?




連絡も出来ず、そんな甘い考えを持つ自分に苛立つ。





俺には、ひー兄しかいなかった。



ひー兄が死んで、なにもなかった俺を救ってくれたのはハルカさん。



嬉しかったよ、俺を好きって言ってくれて。



俺はまだ子供だから、ハルカさんの気持ちに応えられなかった。



でも今は、応えられる気がする。



いなくなってから気付いた。



ハルカさんがいなきゃ、嫌だ。





「竜、どうした?」



教室でぼーっと考え事をしていると、嵐に声をかけられた。



「ん…何でもないよ」



俺は笑ってみせた。



「何かあるだろ?相談乗るけど」



嵐には何でも気付かれる。


俺も嵐の異変には気付くけど。



最近、嵐は恋が実ったみたいで明るい。



「もし、自分の好きな人に『嫌い』って言われたらどうする?」


だからこんな質問ムダかもしれないけど…





「…言われたよ、昔」



嵐は苦笑いしてた。



嵐は1つ年上の先輩が好きで、嵐と先輩は体だけの関係だった。



嵐が「好き」って言っても先輩には何度も「嫌い」って言われてたみたい。



「嫌いって言われて、傷つかなかったの?」


「まぁ傷ついた…けど、好きって気持ちのが大きかったからなぁ俺は」




もしかしたら俺の気持ちを分かってくれるような気がして、俺の状況を嵐に全て話した。





昔から、望むものはなるべく我慢してきた。



ひー兄さえいれば、それでよかったから。



俺がワガママを我慢すれば、父親はひー兄を傷つけなくなるかなとか勝手に思ったりして。




結局、離婚して離ればなれになったけど。




「竜さ…我慢してんの?自分の気持ち」


「え?」


「先輩も素直じゃないからさ、なんとなく分かる。俺だったら素直な気持ち言ってもらえたら嬉しい。ハルカさんもそうなんじゃん?」



我慢をしなくていいってことは、俺にとってはすごく勇気のいること。



自分が我慢すれば、周りの人には迷惑がかからないから。



いつも自分を制御してきたのに。





「素直になって…いいのかな」


「想いは言葉にするもんだと思うけど」




嵐に相談して、俺の心が軽くなった気がした。



「ありがとう嵐!」





ハルカさんに会ったら素直になろう。




そう、決めた。


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