魔竜の鍛冶師 ~封印されていた溶鉱の魔竜と契約したら鍛冶師でありながら世界最強になってしまったけど、実はあんまり戦いたくない~

紙風船

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冒険鍛冶師編

第30話 依頼達成

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 手渡された本の表紙を撫でた。日本で見たようなハードカバーの本でもなく、文房具屋に置いてあるようなノートでもない、紙を紐で纏めたメモ用紙の束のような本だった。表紙としてタイトルは書いてあるが、紙は中身と一緒の物だ。こうして見ると表紙というのは偉大だ。柔らかい無防備なページを守る役割もあるし、見た目からして分かりやすい。

 それが無いとやはり本というよりはメモの束を纏めた物、という認識になってしまう。しかしこのメモ束は世界中のどんな本よりも価値のあるものだった。魔王の側近、ベルハイムが駆使した鉄魔法を術式化させた、唯一無二の手記。これを読めば誰でも鉄魔法が使えてしまうのだ。

「その表情を見れば、これがどういう物かは分かってるみたいだね。安心したよ」
「こんな、はいどうぞって渡して良い物じゃないぞ」
「そうは言うけれど、じゃあ僕が死んでまで解明したかった自分の魔法は、誰の目にも留まらず消えてなくなってもいいって言うのかい?」

 そう言われると何も言えなくなる。僕もまだ新人も新人だが、製作者だ。自分が作った物が世に残ることを想像すると胸の奥が熱くなってくるのが分かる。

 それは自分の生き様だ。死に様はどうあれ、生きた証は残るのだ。

 そしてこの本は、ベルハイムの生き様そのものだった。

「僕が、貰っていいんだな?」
「君に、貰ってほしいんだ。君になら安心して渡せるって思えたんだ」

 受け取った本を大事に抱えた。これは僕の一番大事な物になった。ただ、貰ったから大事なんじゃない。これが世に広まればとんでもない大惨事に繋がる恐れもあるから、大事な物だった。

「重い物かもしれないけれど、君とあの魔竜が居れば安心だと思うんだ。いつか僕が誰かに討伐されてその本が流出するよりもずっといい」
「確かにそれもそうだな……分かった。しっかり補完させてもらうよ」
「うん、ありがとう。補完も大事だけれど、自由に使うと良い。使えるものは何でも使う方が、楽しいからね」

 確かに出来ることが増えるのは楽しい。著者がそう言うのであれば遠慮なく使わせてもらうとしよう。何、とんでもないことになってもこっちにはジレッタという心強い味方が居る。僕も無手ではない。そうなった時には鉄魔法で追い払えるだろうしね!

「じゃあ戻ろう。さっきからしてる良い香りに刺激されて久しぶりに食欲というのが湧いてきたよ」
「今日はいっぱい食べてくれ。気の良い人達だから、遠慮なんていらないぞ!」
「そんなこと言われたら、全部食べちゃうよ? これでも生前は大食漢で有名だったんだから。ニシムラ君もいつも言っていたよ。『そんな細い体の何処に入ってるのか調べさせてくれ』って」

 それってきっと解剖的な意味だよね……。これまでの話を聞く限り、相当な悪人という訳ではないのは何となく分かったが、ジレッタの件もあるし迂闊に信じることは出来ない。

 だがニシムラの人と為りが分かったように、ベルハイムの人と為りも分かった。実際に見てないから彼がこれまでに一度も悪事を働いたことがないとまでは言い切れないが、盗賊とかそういう悪人の類でないことは理解出来た。研究欲のあまり人体実験までしてないことを祈るばかりだが……。


 ベルハイムを交えた食事は、それはそれは楽しい食事だった。ずっと隠し部屋で過ごしていたイングリッダとベルハイムの大食い対決にはジレッタ城の食糧庫まで解放されるレベルの量になった。流石に手持ちだけじゃ足りなかった。寡黙なデンゼルさんも声に出してイングリッダを応援していたし、そんな2人を見て僕と菖蒲さんはゲラゲラ笑っていた。

 そうそう、菖蒲さんと転移の話もした。菖蒲さんもまた、仕事中に拉致られたようで、その事件を僕は数ヵ月前のニュースで見た記憶があった。しかし菖蒲さんが此処へやってきたのは数年も前ということで、やはり次元の中で時間軸がおかしなことになっているのはほぼほぼ確定だった。宗人の話では転移待ちの人が居るかもしれないとのことだったが、この待ちは、まったく順番通りということではなかった。

 この転移に対する怒りは当然、ニシムラの研究失敗に向けられるものなのだが、この場にはその最も近しかった人物であるベルハイムも居た。その彼は今、心からの食事を楽しんでいる。それに水を差すようなことは、僕達には出来なかった。

 食後は腹ごなしの運動と称して、本来やるはずだった僕とベルハイムの戦闘を行った。勿論、互いに殺す意志のない模擬戦である。

 ジレッタパワーを注入され、現在使える権能をフルで行使する。ベルハイムは鉄魔法での攻撃を行った。粒子から生み出される流動する鉄は、僕に触れる前に錆びて塵と化す。降り注ぐ鉄の雨は溶かして金槌で叩き、傘にしてやった。

「やるじゃない、侘助!」
「ベルハイムも中々だ。今度はこっちから行くぞ!」

 緋心を手に突っ込むが、地面から飛び出した幾重もの鉄板が行く手を阻む。僕はそれに向けて手を伸ばし、引き剥がす動作を行う。すると手の届く範囲外にあるにも関わらず、全ての鉄板は水風船のように弾けて溶け落ちた。

 更に槍のように突き出る鉄の先端は靴で踏めば丸く溶けて足場へと様変わりする。そうして飛び越え、最後の一本で一気に空中へと飛び上がる。

「はぁあああ!」

 掛け声と共に緋心を振り下ろす。ベルハイムの最後の抵抗は自身を覆うように重ねられた鉄板だったが、金属を切る緋心には全くの無意味だった。

 ベルハイムの首筋に、ピタリと朱い刃が添えられた。

「参ったよ、降参。君には敵わないよ!」
「ふ、ふふ……あはは……! あぁ、楽しかった……!」

 刀を鞘に仕舞うと観客になっていた【三叉の覇刃トライ・エッジ】から拍手と歓声が飛んできた。すっかり見世物になっていたが、そんなことも忘れるくらいに楽しい模擬戦だった。

 菖蒲さん達と一緒に座っていたジレッタも拍手をしてくれていた。それが妙に気恥ずかしくて、でもとても嬉しかった。

 模擬戦が終わった頃にはダンジョンの外も深夜に差し掛かる頃ということで、一晩明かすことになった。もっともっとベルハイムと話したいことは多かったが、先程の戦闘での疲れもあって、すぐに眠ってしまった。



 そして一夜明けた翌朝。【鐵の墓】を出る為に鍛冶工房裏までやってきた。

「お別れするのは寂しいよ、ベルハイム」
「一緒に行けたらいいんだが……こればっかりはそういう訳にもいかない」

 辺りがしんみりとした雰囲気に包まれる。最初は討伐する為と、【罪禍断命ジャッジメント・ジャッジメント】と一緒にやってきた菖蒲さん達も今ではベルハイムを対処すべきモンスターとは微塵も思っていない様子だった。追われて隠れていたイングリッダさんでさえ、目を潤ませていた。

「最初に君達3人と一緒に来たあのパーティー、少し注意した方が良いかもしれないね。あれはいざとなったら味方でも捨てるような連中だ。短い間の手合わせだったけれど、ああいう目をした人間は何人も見てきた」
「あぁ、実際に私達も見捨てられたからな。貴方は追撃してこなかったから助かったが……あの連中と関わることはもうないだろう。仇なすなら殺すだけだ」

 血生臭い会話になってきた。が、こうしてイングリッダさんが逃げ遅れることになった原因はそのパーティーだ。僕も気を付けないとな……きっとこうして【三叉の覇刃トライ・エッジ】に参加して此処へ来ていることもバレているだろう。

「あの連中になんてやられてくれるなよ?」
「大丈夫だよ。この世で僕を殺せるのは侘助とニシムラだけだよ」
「……えっ?」

 あっさりとした言葉の流れに一瞬気付けなかった。

 ベノハイムはこう言ったのだ。この世で自分を殺せるのは僕とニシムラと。

 まだ、この世界にニシムラが居ると、彼はそう言ったのだ。

「ニシムラは……生きてるのか?」
「そうだね。あの人は【無限の魔力】を持ってるから、実現できないような魔法でも使えてしまうんだ。所謂、不老不死の魔法とかね」

 曰く、魔法とは何でも出来る力だと王城の授業で習った。しかし何でも出来るかと言えばそれは嘘だ。何重にも構築された魔法や、大規模なものは魔力が足りないから発動することは出来ない。だが逆を言えば魔力さえあれば本当に何でも出来てしまうのだ。

 スキルという枠組みを超え、術式という方法からも逸脱した【本当の魔法】は、不老不死の力を得ることも出来るし、もしかしたら時空間すら移動してしまうのかもしれない。

「ニシムラは、今何処に?」
「うーん……あの人の放蕩癖は相当だからね。付き添っていた僕も、ついに死ぬまで村には帰れなかったし。あぁ、埋葬してくれたのはニシムラだって話だよ」

 誰から聞いたかは分からないが、何でも出来るなら死体を腐食させずに運ぶことも出来るだろう。何なら死んだ直後にナカツミ村にワープしたっておかしくない。

 だがそうか……ニシムラは生きているのか。

 そっとジレッタの顔を見る。彼女はニシムラに1000年もの間、幽閉されていた。その枷は今もまだ繋がったままだ。そんな彼女はニシムラに怒りを抱いていたが、今は何かを考えているような表情をしていた。怒っている様子はない。僕が話し合いで解決したいと言ったことを覚えていてくれているのかもしれないな。

「彼女に会えたら、よろしく伝えておいてくれ。気が向いたら僕に会いに来てくれともね。万に一つもないとは思うけれど、再び死ぬ前に会えると嬉しい」
「分かった、伝えるよ。……彼女? ニシムラは女性なのか?」

 ジレッタの方を見るとこくん、と頷いた。言えよ。男だと思ってたぞ。

「うん、女性だよ。僕のお嫁さんさ」
「えぇ……っと、そうだったんだな……知らなかったよ」

 色んな情報でまーた頭がパンクしそうになる。ニシムラの話をするといつもこうだ。これも無限の魔力が起こす何かの力なのか?

「ではそろそろ行くとしよう。死者であるベルハイムにこう言うのは少しおかしいかもしれないが……達者でな」
「うん、菖蒲さんもお元気で。また暇な時はおいでよ。呼んでくれたら入口まで行くから」
「あぁ、そうする。デンゼル、イングリッダ、侘助、ジレッタ。出発だ」

 菖蒲さんが踵を返すと、トライ・エッジの面々はそれに従ってナカツミ村を出ていく。僕もまた、それに付き従った。

 少し歩いて振り返ると、ベノハイムが小さく手を振っているのが見えた。それに手を振り返し、また歩く。そろそろ山に差し掛かる時、再び振り返った時にはもう誰も居なかった。

 こうして僕の初めての冒険は無事に終わった。メインの目的であるイングリッダは怪我なく救えたし、サブ目的だったニシムラの情報も得られた。おまけで鉄魔法を術式化させた本まで貰ってしまった。

 何だかとんでもないことになってきたが、一先ずはこのモヤモヤした気持ちとワクワクした気持ちとを日常にスライドさせよう。溜まった仕事を消化して、日常に溶け込もう。

 後の事は、それから考えるとしよう。
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