私の恋人は幼馴染(♀)

竜田優乃

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25.答え

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  波瑠先輩はうつむいたまま、私の目の前で立ち止まる。

 心臓がドキドキしすぎて、破裂してしまいそう。

 「先輩・・その・・」

 先輩は私の手を取り、「ベッドで話そう・・」と私の顔を見ずに私を誘導した。

 ベッドに座り、気まずい沈黙が発生した。

 早く答えが知りたい、けど声が出ない。

 きっと、答えを聞いてしまうと何かが壊れてしまうかもしれないという恐怖。

 きっと私は今、怯えているのだろう。

 波瑠先輩の答えによって、今後私はどうなってしまうのか。

 壊れてしまうのか、それとも壊れかけの人形になってしまうのか、分からない。

 私は無理矢理声を出す。

 「先輩、あの・・!」

 無理矢理出したせいか、声が掠れる。

 好きな男の子に告白した時はこんな風にはならなかった。

 なんで。

 波瑠先輩は口を開かない。

 私の瞳には涙が込み上げてきた。

 「先輩・・」

 きっと、今の私は酷い顔をしている。

 それを隠すかのように私は先輩の服に顔を擦りつける。

 そんな私を先輩は、私をそっと優しい手で撫でてくれた。

 そして

 「ごめんね。」

 と一言、私の耳に聞こえた。

 分かっていた。

 「私と、浮気してください」なんて言って浮気してくれる人なんて早々いるはずない。

 なのに、さっきよりも涙が溢れて溢れて、止まらない。

 「うえへぇ~ん!」

 酷い声を荒げ、私は先輩に泣きついている。

 その間も、先輩は私の頭を撫で続けてくれた。

 少しして、私は落ち着いた。

 「すみません、先輩・・わかっていたのに、私・・」

 「うん・・何か、掛ける言葉が見つからないというかなんというか・・」

 先輩はこんな私に、今も気遣ってくれる。

 私はこうゆう先輩の優しさに惚れてしまったのかな。

 「だけど、私は望海ちゃんとは付き合えなくても、友達としては居たいな・・」

 先輩の言葉によって、私の心は壊れずに済んだ。

 「先輩は私の事、嫌いじゃないんですか・・?」

 私は、小声でボソボソと言う。

 先輩は私の声を聞き取ったのか「そんなことないよ。」と寂しそうに言った。

 私はあの時、身の流れに任せて告白してしまった。

 振られたら、気まずくなってしまう事も考えず。

 現に今、少し気まずくなっている。
 
 だけど、先輩はその気まずさを和らげてくれている。

 ずるい。

 さっきも泣いている間、ずっと頭撫でてくれていた。

 こんなに、優しくされたらもっと惚れちゃう。

 「先輩・・」

 「なに・・?」

 「まだ、好きでいて良いですか・・」

 先輩は優しい声で「うん。」と一言言ってくれた。

 もしかしたら、まだチャンスはあるかもしれない。

 そんな、淡い期待を胸の中に閉じ込めた。

 先輩が「じゃあ。」とベッドから立ち上がり、部屋を出ようとしたとき

 「ぐうぅ~」

 と大きな音が鳴った。

 私では無い。

 後ろを振り返ると、波瑠先輩が顔を真っ赤にしていた。

 私は耐えきれずに笑ってしまった。

 「ふふふ・・!やっぱり、先輩は面白いです・・。」

 「ちょっと、笑わないで!望海の事真剣に考えて、ご飯進まなかったの・・!」

 「真剣に」かぁ・・

 ははは、なんか心に釘が刺さったような気がするな・・

 そう言えば、昨日お母さんがおにぎりを買ってきてくれたはず。

 そう思い、私は備え付けの冷蔵庫を開けると、たらことしゃけ、昆布のおにぎりがあった。

 私はそれを取り出して、先輩に「食べますか・・?」と聞いた。

 先輩は余程お腹が空いていたのか目を輝かせて「頂きます!」と言いしゃけと昆布のおにぎりを取った。

 「先輩、たらこは食べないんですか・・?」

 「うぅ・・私、たらこは苦手で・・」

 嫌がっている先輩を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。

 私も朝はあまり食べれなかったので、たらこのおにぎりを頬張る。

 二人ともお腹が空いていたので、無言で食べ続けた。

 「ふぅ~、ありがとうね。」

 「いえいえ、先輩から答えを貰えて私は十分です!」

 「そう・・」

 私は明日で退院する。

 だから、先輩と病院で会えるのは今日で最後。

 「先輩、私今日で退院出来るみたいです。」

 「そうなの!?寂しくなっちゃうじゃん・・」

 「だから・・」

 私は、先輩の首に手を回して抱き着く。

 そして、先輩の唇を奪った。

 唇のガードを突破して、舌を口の中に入れる。

 先輩も諦めたのか、歯ではガードせずに舌を絡めてくれた。

 「ぷはぁ・・」

 先輩の顔をじっと見つめる。

 先輩の顔は少しは赤くなっているが、お腹が鳴った時と比べると全然赤くない。

 きっと、絵梨香さんとキスもしたんだろう。

 「ごめんなさい、強引にしてしまって。でも最後だから、奪いたくなっちゃいました。」

 私は笑みを浮かべて、先輩の方を見る。

 「ほんと、強引・・」

 先輩は顔をそらした。

 「えへへ・・やっぱり波瑠先輩は可愛いです・・!」

 「おちょくるなぁ・・!」

 「だから・・」

 私は、先輩の耳元に顔を近づけて

 「絶対に先輩の事、堕としますからね・・?」

 と甘い声で誘惑して、頬にキスをした。

 先輩は耐えられなくなったのか「うぅ・・もう・・!」と走って部屋から出て行ってしまった。

 これで、良かったのかな。

 心残りはある中、私は水を一杯飲んでから退院の準備を始めた。
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