私の恋人は幼馴染(♀)

竜田優乃

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31.味

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 時刻は1時を回っていた。

 絵梨香と話し始めたのが11時頃だから、2時間も話していたのか。

 途中ドアが開いた気がするけど、看護師さんが空気を読んでくれたのかな。

 「それでさ~ってもうこんな時間・・!ごめんね、はーちゃんお腹すいたでしょ。」

 「別に良いよ、絵梨香と話してるのすっごく楽しいし。」

 「そう・・?それなら良かった。」

 絵梨香は安心したのか、「ふぅ~」と息をきベッドから立ち上がった。

 「じゃあ、私もう帰るね。」

 「え~、もう行っちゃうの・・?」

 「早く家に帰って、宿題を終わらせないと夏休みはーちゃんといっぱい遊べないじゃん。」

 「そっか・・」

 「もう、落ち込まないでよ。私だってずっとはーちゃんと居たいんだからさ・・」

 絵梨香は私にハグをして、病室から出て行った。

 絵梨香と話すの楽しかったな。

 いろんな話が聞けた。

 中学の時の文化祭の話、毎日何をして過ごしていたか、楽しい話ばかりでは無かった。

 絵梨香がイジメられた後の話とか絵梨香が寂しさを埋めるために恋人を作った話とか。

 だけど、それ全部含めて絵梨香と話せて今日は楽しかった。

 久々に「楽しさ」を感じられた気がする。

 望海と話している時も楽しかった。

 だけど、まだ望海とは少ししか話したことが無い。

 だから、望海と話していても凄い楽しいわけじゃなかった。

 「お腹すいた・・・」

 私はベッドから立ち上がり、受付に向かった。

 受付に行くといつもの看護師さんが居た。

 「あ、こんにちは。お腹すいたの・・?」

 「あ、こんにちは。お腹がすきました・・」

 私はおどおどしながら看護師さんの元に行った。

 「さっき扉の前まで行ったんだけど、友達と楽しそうに話してたから邪魔しちゃ悪いと思って戻って来たの。」

 「そうなんですか、すみません・・・」

 「なんも、あなたが謝ることはないわ。今日はこれね。」

 看護師さんがメニュー表を取り出して見せてくれた。
 
 今日はメンチカツかサバの塩焼きという構成。

 前に魚は食べたしもしかしたら味があるかもしれないと思ったのでメンチカツを選んだ。

 「メンチカツでお願いします。」

 「了解しました。部屋に持って行くから待っててくれる・・?」

 「分かりました、ありがとうございます。」

 「いえいえ。」

 看護師さんが持ってきてくれるというので少し悪い気もするが病室で待つことにした。

 病室に戻り、ベッドに入る。

 少し時間が掛かると思うので、私は兄守護の3巻を取り出して読み始めた。

 10ページ程読んだところで看護師さんが来た。
 
 「はい、メンチカツです。」

 「ありがとうございます。前から気になってたんですけど何で味が薄いんですか・・?」

 「あぁ、それは全部統一されてるからね。」

 「統一・・?」

 「そう、私も難しくて分からないけど臓器とか悪い人はカロリーとか塩分とか調整しないといけないんだけど、全員に調整するのは難しいでしょ・・?」

 「まぁ、そうですね・・」

 「だから、調整がほとんど必要無い人は味が統一されてるってわけ、さすがに重度の人はちゃんとした栄養士さんが調整したご飯をたべているけどね。」

 「はぁ・・勉強になります・・」

 「ふふふ・・あんまり鵜呑みにしない方が良いわよ・・?」

 「へ・・・?」

 「大人はよく嘘をつくからね・・」

 「ええぇ・・」

 決め顔で言う看護師さんに私は若干引いてしまった。

 「じゃあ、お大事にね。」

 そう言い看護師さんは出て行った。

 私はメンチカツを口の中に頬張る。

 やっぱり、薄い。

 しかし、揚げ物だからか魚と比べて味はある。

 それに、薄味にも慣れてきた。

 私はバクバクと食い進め、メンチカツを食べ終えた。

 おぼんを返すために受付にベッドから立ち上がりおぼんを返しに行くため病室を出た。

 受付に着くといつもの看護師さんが居た。

 「あ、なんも持ってこなくても良いのに。」

 「いや・・これぐらいはしないといけないかなって・・」

 「ほんと、礼儀正しいね。」

 「ははは・・ありがとうございます。」

 看護師さんに会釈し私は病室に戻った。
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