私の恋人は幼馴染(♀)

竜田優乃

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37.感謝

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 「兄守護」を3巻読んだ。

 窓から見える景色はオレンジ色に染まっていた。

 スマホを手に取り、時刻を確認する。

 今の時刻は6時になりかけていた。

 今日の昼ごはんは野菜の炊き込みご飯かサバの炊き込みご飯だったので、私はサバの炊き込みご飯を頼み食べた。

 昨日食べた筑前煮と違い、やっぱり味は薄かった。

 昼ご飯を食べた後も「兄守護」を読み、今にいたる。

 そろそろ、ご飯の時間かなと思い私はナースコールを押した。

 すぐに真面目そうな看護師さんが来た。

 「失礼します。ご飯ですか?」

 「あ、はい。お願いします。」

 「分かりました、少し待っててください。」と言い看護師さんは出て行った。

 いつものと変わらない会話。

 しかし、今の会話が最後になるのかと思うと少し寂しさを感じる。

 「失礼します。今日はこちらです。」と言いいつも通りメニュー表を見せてくれる。

 どうやら今日は、そうめんかイカのシーザーサラダとサバの味噌煮の二点セットのどちらからしい。

 なぜ、サラダとサバが二点セットなのか分からないが私はイカのサラダが好きなので二点セットの方にした。

 「イカの方でお願いします。」

 「分かりました。明日で退院するらしいですね、おめでとうございます。」

 照れ臭かったのか看護師さんは少し顔を隠しながらそう言った。

 「あ、ありがとうございます。看護師さんもこれからも仕事頑張ってください。」

 看護師さんは嬉しかったのか「ありがとうございます!」と大きく頭を下げて出て行った。

 少しして、いつもの看護師さんが料理を持ってきた。

 「うい、どうも~。持ってきたよ~。」

 「あ、どうもありがとうございます。」

 「いや~、さっきあの子ルンルンで帰って来たから何かと思って聞いたけど、「初めて感謝されました!」って喜んでたわ。ありがとう。」

 「いえいえ、あの看護師さんには色々やってもらったので感謝するのは当たり前ですよ。」

 いつも通り感謝の気持ちを伝えただけなのに、ここまで言われると少し照れてしまう。

 いつもの看護師さんは乾いた笑いをすると「いや~東京の人は皆とは言わないけど、感謝する人が少ないって言うか、あの子の性格上、感謝されること自体難しいって言うか。まぁ、ありがとうってことだよ。」とむずかに言った。

 まぁ、確かに怖い。

 東京の人が怖いって言うか人が怖い。
 
 流行りゅうこうに乗れなかっただけで「時代遅れ」だの言われたり、仲間外れにされたり散々な事ばかり。

 流行に乗れば良いじゃんとか思うかもしれないけど、根本的な流行に乗る方法がまず分からないし、今何が流行っているかなど常にリサーチしなければならない。

 そんなの面倒すぎる。

 「じゃあ、食べ終わったらまたナースコールお願いね。」と言い看護師さんは出て行った。

 箸を手に取り、私はイカとレタスを口の中に運んだ。

 イカ本来の味とほのかに香るドレッシングの味がマッチして普通においしい。

 これがもう少しドレッシングの味が濃かったら最高においしい。

 サバの味噌煮は、うんあんまり。

 なんで味噌煮なのに味噌の味が全くしないのか不思議で不思議で仕方ない。

 味噌でサバの身がコーティングされているのに味はサバの身の味とほんのり味噌の味。

 もう、逆に凄いと思う。

 サバとイカのサラダを食べ終えて。

 私はナースコールを押した。

 「失礼します。」と言い、来たのはいつもの看護師さんではなく真面目そうな看護師さんだった。

 「あの、先ほどはお礼を言っていただきありがとうございます。」と言い深々と頭を下げてきた。

 「なんも、私はなんだかんだ身の回りの事を色々やってもらったので、心の底から感謝を伝えたくて感謝を伝えただけです。」

 「いえ、それでも感謝されるのはここまで気持ちの良いものだと実感できました。なので、そのすっごく嬉しかったというか・・なんというか・・・その・・」と言い嬉し泣きだろうが看護師さんは泣き出してしまった。
 
 「あはは・・泣かれると困っちゃいますね・・」

 「すみません・・・でも・・」
 
 「分かりますよ、相手の力や助けになったりして感謝を伝えられると嬉しいのは凄く分かります。それに、人から信頼を得れたりもしますしね。なので、これからもいろんな人に感謝されるような看護師さんになってください。そしたら、毎日が楽しかったり、嬉しい気持ちでいっぱいになると思います。」

 「・・はい」

 やばい、なんか偉そうなこと言ってしまった。

 ラノベの主人公でもあるまいし、あぁやらかした。

 「その・・私、頑張ります。これからいろんな人に感謝されるような看護師さんになります。」

 「はい、頑張ってください。応援してます。」

 「その、本当にありがとうございました。」とまた頭を下げ、おぼんを持ち病室から看護師さんは出て行った。

 毎日あんな風に泣いていつもの看護師さんに慰めてもらっていたのだろうか。

 あの看護師さんも、自分なりに頑張っていたけど周りの人や患者さんから否定されたり酷いことを言われたていたのかな。

 だから、感謝されて嬉しくて泣き出してしまったのだろうか。

 まぁ、いずれにしてもあのラノベの主人公を気取った発言は気持ち悪いな。

 今後、気を付けよう。
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