内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園二年生編

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私はネイサンの顔を直視するのが怖くて、思わず視線を彷徨わせてしまう。

「…………言い訳は、しないのか?」

ネイサンのハスキーボイスは、私を責めているように聞こえて、私は何も答えられない。

今になって、あの時オルティアを突き飛ばせば良かったのかと後悔の念に駆られた。

「お前、好きでもないと、普通に抱き合うのか?」
「違う…………違うわっ…………!」


否定の言葉が口をついて出てくるけれど、何が違うのか、分からない。
事実だけを見れば、ネイサンの言うとおりだ。
友達だからといって、未婚の男女がみだりに抱き合うのは、前世でならともかく、この世界では後ろ指を指されても仕方のない、はしたない行為。

でも、オルティアは一応性別としては女性だし………。
…………そこまで考えて、私ははっとした。
オルティアの本心を聞いて、オルティアの理解者みたいな顔をしていたけど、いざ自分に都合が悪くなったらオルティアを女性だから、男性の姿をしていても女性だから抱き合っても問題ないって……言おうとと考えていた。

私はそんな自分自身に気がついて、愕然とする。
………最低だ、私。
オルティアがどれだけ苦しんで、どれだけ悩んでいるのか分かっていた筈なのに。
結局は、オルティアの事なんて何も分かっていないじゃない。
私はゆっくりと俯いた。

「アルフレッド殿下の事が、好きじゃなくなったのか?」

力なくふるふると首を横に振った。
それは、本当だ。
アルフレッド様が大好きなのは変わらない。
…………じゃあ、オルティアは…………?
どうしてあの時に、オルティアの抱擁を、拒絶しなかったんだろう。
どうしてあの時、オルティアに抱き締められて安心したんだろう。
そして、あの時アルフレッド様が来なかったら、私はどうしたんだろう。

正直、自分で自分の気持ちが、わからなくなってきていた。

「………もう少し、よく考えてから行動した方がいいよ、ジュリエットちゃん。君を………君の家の足を引っ張りたい奴なんて、山程いるんだ。そういう奴らに付け入れられれば、傷つくのは君だけじゃないっていう事を、よく考えておいた方がいい」

いつもの軽薄な雰囲気とはまるで違う、初めて聞くネイサンの真面目な声だった。
でも、全く以てネイサンの言うとおりだ。
この性格だけでもアルフレッド様に迷惑を掛けているのに、醜聞なんて流れれば、婚約が白紙になるというのも現実味を帯びてくる。

私は俄に震えだした体に力を込めてから、ゆっくりとネイサンに向かって頷いた。
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